<こんにちは、ガースーです>ニコ生でボケてスベる菅総理

エンタメ・芸能

両角敏明[元テレビプロデューサー]

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「みなさんこんにちは、ガースーです」

番組冒頭、いきなりこんなボケをぶっ込んできたのは菅義偉内閣総理大臣。ビートたけしさんじゃあるまいに。12月11日午後3時、菅総理はインターネットの動画配信サイト「ニコニコ生放送」に出演しました。そこでこのボケです。総理大臣が不様にボケをぶっ込んだちょうどその時、テレビ各局は「東京新規感染者595人!過去2番目!」と特大テロップで伝えていました。

前日が東京初の600人越え、さし迫った医療崩壊が重大関心事となり、多くの人が毎日この時間に発表される数字を注目するその時に、笑いながらボケをかますという気の毒なほどのセンスのなさ。誰が考えてもボケてる場合じゃないでしょう。菅総理が、もしボケ時もわからぬほどボケているなら、これはホンマモンのボケ総理です。

それにしても、メディアを避けているように見える菅総理がなぜネット番組に出演したのでしょうか。就任早々に出演したNHKのツッコミがきつくひどくお怒りだったようですし、かつては「総理と語る」という番組を持ち回りで制作していた民放各局も総理の出演を望んでいるでしょうが、現状で出れば、コロナ、桜、学術会議、河井夫妻、元農相賄賂疑惑と、やはりキビシイ質問や評価が待っています。もはや菅総理が安心して出演できる場は地上波、BSにはなく、一国の総理が思いを語れる場はネット番組だけという状況のようです。では、このネット番組に出てコロナについて何を語ったのか・・・。

司会「GoToトラベルについてどうお考えか?」

菅総理「一時停止については、まだ考えていません。ステージ3の場所についてはしっかりした対応をとらなければいけない!時短などをお願いしている場所を継続していくのかを2~3日中に検証結果をもとに検討する。」

どこから生まれた自信なのか、GoTo を停止することはまったく考えていないようです。しっかり対応するのは「ステージ3の場所」だけのようですが、政府は今のところステージ3地方の存在を認めていません。少し前にステージ3指定を神奈川県の黒岩知事が西村担当相に申し出たところ、承服しがたい、と突っぱねられたと伝えられています。しかも菅総理の言葉どおりなら、対応するとしても「時短などをお願いしている場所を継続していくのか検討」するだけと受け取れます。

菅内閣はGoToだけはきわめて積極的ですが、GoToはコロナ禍の経済対策であっても感染症対策ではありません。GoToをやれば感染が減るなんて事はありませんから。

[参考]矛盾だらけ菅義偉内閣の終焉は近い

菅総理は逆に「GoToが感染を拡大するというエビデンスはない」と言ってGoTo 継続の根拠としています。「エビデンスがない」ということは、GoTo が感染拡大を助長しないというエビデンスもないということです。ようは「わからない」というのが合理的事実です。危険だというエビデンスがないけど、安全だというエビデンスもない飛行機にあなたは乗りますか?

常識的には開始以来5ヶ月も経って政府サイドがGoTo と感染の相関関係を示すデータを持っていないわけがないのですが、未だに「エビデンスがない」にすがっているのを見ると、菅総理にとっては不都合なデータなのかもしれないと疑ってしまいます。そう言えば菅総理はこんなことも言っています。

「以前、移動では感染は増えないと助言をいただいているんです。」

このコメントは現分科会長の尾身茂氏がどこかでおっしゃったと記憶しますが、言葉は続いていて「旅行先はしっかり感染対策をし、その上で旅行される方は感染しない、感染させないように充分に気をつけて欲しい。」といった趣旨のコメントだったと記憶します。

それにしても、一国の政策の安全根拠が、「エビデンスがない」、「以前に移動そのものでは感染は増えないと助言があった」、というだけでは科学的合理性がまったくありません。逆に、現在の分科会のメンバーが断言しています。

「県境をまたぐ移動と感染との関連は明らかに有為性がある。これははっきりと分科会に報告されている。」

菅総理の言葉で少々引っかかる言葉があります。「感染拡大を防ぐ」とは言うものの「感染を減らし無くす」とは言わないのです。屁理屈のようですが、単に「拡大を防ぐ」だけでは感染は増えないだけで減りません。GoToは日常の社会活動レベルに国が大金をぶち込んで膨らませた強制拡大活動です。これをやめたからと言って、世の中は元の社会活動レベルに戻るだけです。GoTo中止ではGoTo膨張分の感染拡大は防げるでしょうが、感染全体がどこまでも減少して行くわけではありません。

今は感染拡大防止策では足りません。根本的な感染防止策が必要なのです。経済対策は知恵を絞り、感染拡大を防ぎつつ必要で有効な手を打つべきです。一方で菅総理にはいま何ひとつない、根本的で具体的で、科学的合理性に基づいた感染撲滅政策こそが必要と考えます。

この非常時に、上記のような素人筆者の思いなどでこの稿を終えるわけにはゆきません。テレビで聴いたある医学者の言葉でこの稿を閉じることとします。

「コロナ対策の要諦は感染者を減らすこと、これに尽きます。感染者が増えても構わない、だけど医療は崩壊させない、経済は活発化させるという、そういうアクロバティックな方法は存在しないと思います。まずは感染者を減らすこと、これが経済を回す条件でもあるし、医療をひっ迫させない条件でもあります。その方法を我々はすでに知っているわけですから、あとはやるか、やらないかです。」

やるか、やらないか、ですよ菅総理。つまらぬボケですべっている場合じゃありません。今日12月12日、東京都の新規感染者発表数は過去最大を更新し、621人です。

 

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