<もと食品検査官が語る>11回も検査しなければ売れない?!安全性が危惧される中国産ウナギ

社会・メディア

清水綾一[メディアゴン編集部]

 
平成26年6月12日、国際自然保護連合がニホンウナギを絶滅危惧種に指定した。
鰻といえば、わが国には「土用の丑の日」という文化がある。2014年は、7月29日がその日である。近年、大手牛丼チェーンが比較的安価で中国産鰻を使ったうな丼を提供している。このうな丼で使っているものとは言えないが、ある企業のホームページを閲覧すると、「ウナギの検査は精度を高めて年に11回実施している」と記載している。
逆に言えば、それだけの検査を実施しなければ「中国産鰻」は信用できないということ。さらに言えば、それだけの検査をしないと、消費者が安心してくれないのだ。中国産鰻を日本に輸入する際、使ってはならない薬剤の成分が含まれていないか検査しなければならない。
さて、どういった項目があるのか。
一部条件の付いた鰻には、オキソリニック酸及びスルファジミジン。そして鰻全般に係る項目が、マラカイトグリーンである。このマラカイトグリーンは発がん性が指摘されている抗菌剤である。これが残留しているおそれがあるため、検査項目としているのだ。以前はこれに加え、エンロフロキサシンという項目も対象であった。
いずれも、抗菌剤である。エンロフロキサシンの同系統のものには、消化器系及び中枢神経系に影響が出るとされている。しかし、平成25年12月16日付で中国産養殖鰻加工品におけるエンロフロキサシンの項目が、輸入食品監視指導計画の検査命令の解除要件を満たすとされたため解除された
なお、解除はされたものの、「モニタリング検査」として引き続き検査は実施されている。ちなみに、わが国では2005年に中国産鰻からマラカイトグリーンが検出され、その2年後の2007年には、アメリカで中国産鰻を一時輸入禁止とした。
とはいえ、自給率の低い日本で中国産鰻を輸入禁止にしたら、「土用の丑の日」の食卓に鰻を出すことは容易ではないだろう。
 
日本のある研究所では、2010年に鰻の「完全養殖」に成功している。
本来、シラスウナギを輸入して国内で養殖されてきたが、そのシラスウナギの養殖にも成功し「完全養殖」となったのだ。シラスウナギの漁獲量が減少し価格が高騰しているこんにちにおいて、商業的に安全で安定な供給ができれば、今よりも安価で且つ中国産鰻よりも信用できるものとなるだろう。そうなる日を、待ち望んでいる。
 
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