<「アメトーーク」の「猫メロメロ芸人」に見る無駄>「芸人にコスプレさせればおもしろいだろう」という発想こそおもしろくない

テレビ

高橋維新[弁護士]
***
2015年8月20日放映のテレビ朝日「アメトーーク」テーマは、「猫メロメロ芸人」であった。猫を飼っている芸人たちをゲストに、猫との生活の模様を語ってもらうというのがメインの内容である。
猫の魅力を伝えるのに終始すれば、「何かを褒める回」になってしまい、笑いが起きない(https://mediagong.jp/?p=8317)ことが多い。しかし、今回の放送は良い意味で期待を裏切られ、しっかり「笑い」が生み出されていた。
番組内でバカにされていたのは、主に「猫のおかしな部分」と「猫好きの人間のおかしな部分」である。前者であれば、飼い主にも攻撃をしてくるとか、セミやコガネムシを捕まえるであるとか、肛門を舐めた舌で 飼い主の顔を舐めてくるとか、そういう話から笑いを生んでいた。
後者の場合は、猫にそんなようなおかしな行動をとられても愛してやまない親バカっぷりが笑いの対象となっていた。
猫や猫好きのおかしな点を指摘するのは、猫好きということで出てきている芸人にはやりにくいので、MCかつ猫嫌いである宮迫博之(雨上がり決死隊)と、同じ猫嫌いの立場で宮迫の隣に座っていたサバンナ高橋の役目である。高橋の人選は、明らかに上記のおかしな点をツッコむという働きを期待したものである。
宮迫や高橋のツッコミに対してもオネエのようにのろける猫好き芸人たちの対応がまた「猫好きはおかしい」というズレを強調し、笑いを生んでいた。もちろん、単純に「猫のカワイさ」がエンターテインメントになっていた部分もある。
筆者としては、もう少し笑いに特化してほしいところだったが、幸い、筆者自身も猫は好きなので、個人的にはあまり文句がない回だった。しかし、ひとつだけ言うとすれば、猫好き芸人たちが身に着けていたネコ耳は、不要である。意図が、よく分からない。
オッサンがネコ耳をつけているギャップから笑いをとろうとしたのかもしれないが、巷間に溢れるもっと派手なコスプレと比較すればインパクトは全くもって不足しており、何一つおもしろくない。
宮迫や高橋も、「何でオッサンが雁首揃えてネコ耳をつけとんねん」というツッコミはおろか、本稿で指摘しているような「スベっているよ」というツッコミさえ入れていなかった。入れたけどカットされたということかもしれないが、カットされたのであれば、現場でツッコミがあまり受けなかったということであり、結局おもしろくなかったということになる。
「アメトーーク」では、今回のネコ耳のように、表現作品をテーマにした回で芸人たちによくコスプレをさせているが、一部の例外を除いて軒並みスベっているので、笑いを生み出す意図であればやめた方が良い。単純に「コスプレをすればおもしろいだろう」という程度の中学生の悪ふざけにしかなっていない。
さて、総論ばかりだとだんだんと書くことがなくなっていくので、本稿では、出演した芸人たちに点数をつけてみたいと思う。5点満点である。
【徳井義美(チュートリアル)】3.8点
猫好きメンバーの中では、「猫好きのおかしな点」を最も自虐できていたため、笑いへの貢献が大きかった。肛門を舐めた後の舌で舐められても許せるだとか、猫に殺されても死に顔は笑っていると思うだとかのおもしろい話を出せていた。
彼の飼っている2匹猫は、広島の助っ人外国人からとって「ミコライオ」と「エルドレッド」という名前になっているが、猫のことを聞かれているのに実際の選手の話をし始めるなど、猫好き芸人というテーマ以外の点でボケられていたのもポイントが高い。ちなみに、ボケにおけるこの強引さを突き詰めるとザキヤマになる。
【原西孝幸(FUJIWARA)】3.2点
猫好きメンバーの中では徳井の次に働いていた。ただ原西の強みの「動き」が活かしにくい回だったので、インパクトの点で負けていた。
【竹若元博(バッファロー吾郎)】2.4点
一番おもしろかったのは飼い猫の尻に顔を密着させて寝ている様子だったが、それですら若干視聴者を引かせてしまうレベルにいっていたのが問題。あとは特に印象に残っていない。
【菅良太郎(パンサー)】1.5点
竹若の印象に残っていない部分だけを集めた感じ。猫好き芸人の中で唯一猫をスタジオに連れてきていたのだが、可愛さを喧伝するだけで全く笑いにつながっていなかった。もっと「バカにされて笑いをとる」ことを意識した方がいいと思う。
【川原克己(天竺鼠)】2.2点
3匹の猫の名前が「春」「夏」「大久保」であるという出落ち一本だった。このネーミングセンスすら、すでに今の小中学生が思いつくような古臭さである。ネタで付けた名前なら、もっとおもしろいものを収録直前に考えてやった方がいいと感じた。ただ、そもそも、命名のみで笑いをとるというのは非常に難しいことなので、発想自体があまりよろしくない。「なぜ大久保なのか」と聞いてきっちりとこのボケに付き合っていた宮迫や高橋が不憫だった。
「狂気じみた言動を数々行っているが、普通の人が狂人を演じようとしているだけなのがバレバレで、ナチュラルな狂人とは全く勝負できていない」というのが筆者の感想である。漫画だと『カッコカワイイ宣言』が近い。そうなると、そのスベっている感じを指摘して笑いを生み出すよりないが、周りがそういう活かし方を分かっているのが救いである。宮迫の「大阪から出てくるな」というツッコミはまさにそういう活かし方の一つである。
【岩井勇気(ハライチ)】1.5点
菅に同じ。人気投票で自分の猫に11票も入ったことを普通に喜んではダメである。もっと笑いにつなげていかないと。
【高橋茂雄(サバンナ)】3.8点
前述の通り猫嫌いという立場からネコ好きたちにツッコミを入れる立場。ネコ好き芸人より数が少ないのに十分に対応できており、たとえツッコミも冴えていた。無名芸人なら次の仕事につながるレベルの働きはできていた。
ただ、徳井の最初のトークにツッコミが集中しすぎていた印象がある。実際には他のところでもツッコミを入れていて、番組が編集で切っただけかもしれないが、そうなると徳井以外があまりおもしろくなかったということなので、高橋の責任ではない。
【宮迫博之(雨上がり決死隊)】3.8点
仕事は高橋と同じで、クオリティも同程度に発揮できていた。ツッコミが最初の徳井のトークに集中しすぎていた印象があるというのも高橋と同じだが、やはり宮迫の責任ではない可能性がある。
【蛍原徹(雨上がり決死隊)】0.5点
いつものように単純な進行以上の仕事をしておらず、雑用に終始していた。これしかやらないのであれば芸人を配置する必要はない。ちなみに、これより点数が低くなるのは、オンエアで全く喋っていない場合である。
 
【あわせて読みたい】