<自民党が参院選候補公募で「オープンエントリー」>ファイナリスト選びと一般投票者の参加条件が成否を分ける

政治経済

藤本貴之[東洋大学 准教授・博士(学術)/メディア学者]
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自由民主党が、来年2016年7月の「第24回参議院議員選挙」に向けた公認候補者の一般公募として「オープンエントリー」プロジェクト2016を発表した。候補者の選考過程をできるだけオープンにすることを前提とし、インターネットによる投票で選抜する。
公募は2015年11月1日8時からスタート、2016年1月31日まで。応募資格は「2016年参院選において被選挙権があり、自由民主党の基本理念に賛同する人」であれば誰でもが応募可能。
応募者には、「日本の将来と私」「自分のまわりの1億総活躍社会」をテーマにした400字以内の小論文の提出が課せられているが、いづれにせよ、非常に低い敷居だ。
本年は、五輪エンブレム問題で「不透明」「内輪感」「非公開」が話題となっただけに、透明性と公開性を強く意識した公募設計が心がけられていることがわかる。もちろん、それによるクリーンでオープンな話題性のアピールも狙ってのことだろう。
仕切り直しとなった「五輪エンブレム選考」で、本来すべきだったけど「五輪ルール的に不可能だったオープンな選考」を、ここで改めてやっているように見えなくもない。
公募では、書類審査と面接を経て、最大10人のファイナリストを選抜し、一般公開。そこから、自民党員だけでなく事前に認められた一般参加者も加えたネット投票を経て、得票数の最も高かった候補者を公認候補者に決定するという。いわゆる「人気投票」だ。
これまでも政党公認候補の一般公募はされてきたが、ここまでオープンな形で実施するのは初めてのこと。本当に機能させることができれば非常に興味深い試みになる。自民党がこれを上手に運用することができれば、ネット民意/ネット世論や若者層のニーズを色濃く反映した、(良い意味でも、悪い意味でも)これまでにない候補者の登場の可能性も十分に期待できる。
そのためには、ファイナリスト10名の選抜が重要だ。この段階で「ありふれた候補者」ばかりになってしまえば、その後の一般投票などはほとんど意味がなくなる。もちろん「事前にめぼしい人材に応募を依頼」などはできればして欲しくない。
もちろん、このシステムを効果的に運用するためには、ファイナリスト10名を審査・選考する審査員/審査組織に、新しい感性、新しい感覚をもった人材を起用することが不可欠だ。
このエントリーはあくまでも「自民党の公認候補」であって、必ずしも国民全てに無条件に開かれている必要はないことも事実。しかし、今後の候補者選びの新しい可能性として、「事前登録で認められた自民党員以外の一般投票者」の認定手法には注目したい。
ここで、どの程度の「余裕」を見せることができるのか、それとも厳しい制約があるのか、によって、その結果も評価も大きく異なる。少なくとも、「投票者として認められる条件」が厳しいものであれば、「自民党員以外からの投票も可能」とした謳い文句がかえってブーメランとなって、マイナス印象になるだろう。
五輪エンブレム公募で疑惑と批判を生んだ「厳しい条件」や「事前にめぼしい人材に応募を依頼」などがダブって見えてしまうようでは元も子もない。(もちろん、五輪エンブレムと政党公認候補の選抜では、その位置づけは全く異なるが)
「単なる人気投票になるのでわ?」という批判も想定できるが、それ以上に、若い有権者の政治や選挙への関心と注目を集めるための方法としては非常に魅力的であるように思う。
現在の若者層は想像を絶するほど政治に主体的ではない。選挙権が引き下げられる18歳ともなればなおさらだろう。
今回の「実験」を成功させることで、これからの政党公認候補者の選出手法のひとつとしてだけでなく、若者層への政治への関心を引き出す新しい提案になって欲しいものだ。
 
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