<2014FIFAワールドカップ>ブラジルの惨劇を納得させてくれたサッカージャーナリスト豊福晋氏の記事に感謝
氏家夏彦[TBSトライメディア、TBSディグネット社長・「あやぶろ」編集長]
早起きが苦手なのに根性で起きだして半分寝たままのボーッとした頭で見ていたワールドカップ準決勝、ブラジルvsドイツ。
試合開始後まもなくドイツの得点で「これでブラジルも燃えて逆転かな」と思っていたら、あれよあれよ言う間のブラジルの失点、23分から29分のわずか6分間に4連続失点。眠気が吹き飛んだ。結局ブラジルは7点をとられ、歴史的な敗退を喫した。
実況アナウンサーの「完全に、完膚なきまでブラジルを叩き潰す6点目」とか、「悲劇を通り越して惨劇ともいえるここまでの動き」という言葉が耳に残った。ブラジル選手の虚ろな眼差しと、ドイツ選手の戸惑ったような困ったような表情が印象的だった。
いったい何が起きたんだ?
見ているこちらもブラジル選手同様、茫然としてしまった。私はサッカーのファンではないが、何かとんでもないことが起きたのはわかる。しかし、なぜこうなったのかまるでわからない。その日、Facebookにこう書き込んだ。
「ドイツ7:ブラジル1、誰かしっかり分析記事を書いて、納得させてほしい。」
そう、とにかく納得させてほしかった。王者ブラジルが、攻撃の中心と守備の中心を欠いたとはいえ、あそこまで崩壊してしまうとは。組織というものをいつも意識せざるを得ない立場の人間としては恐ろしさを感じたし、誰かにちゃんと説明してもらって何が起きたのか、どうしてこうなったのかを少しでも理解したかった。
ところがネットに流れるどの記事を読んでも、全くわからない。わかったようなことを書いている記事はあるものの、無理矢理ステレオタイプに落とし込んで、ために書いたような記事ばかりだった。
しかし翌日になってこんな記事が書かれているのをFacebookで発見した。
『歴史的敗戦をセレソンはどう語ったか。茫然、無言、饒舌…それぞれの傷。』 というタイトルだ。
『何かすごいものを見てしまった、誰もがそんな表情を浮かべている。あたりはどよめきに包まれていた。』という書き出し、そして『ブラジル人はなかなか現れない。待ち続ける記者は、なぜこんなことになったのか理解できないと、様々な論を交わしていた。』という一文で、私のような素人だけでなく、専門の記者たちも同じような唖然とした感覚でいることがわかった。
その後は、試合後のミックスゾーンで各選手が語った言葉が並んでいる。
- 『人生でこんなことは経験したことがない……。うん、初めてだ。言葉すらない。いったい何が悪かったのか、それすら分からないんだ。試合前の雰囲気はいつもと同じだったんだけど……。信じられないことって、本当に起こるものなんだな』
- 『人生で最悪の試合をしてしまった。この敗戦は、僕らの生涯にずっとついてまわるだろう』
- 『失点のあと、なぜかチームはバランスを失って……。あの8分間。あれがすべてだ。7失点で負けるってのは、普通じゃない』
- 『キャリアの中でこんなことは経験したことがない。説明できないんだ。なぜこうなったのか、できれば説明したいんだけれど……。』
何が起きたのか、選手も記者もわからないくらいの、とんでもないことが起きた、だから私のような素人がわかろうとしたってそれは無理だ、わからないままただ受け止めるしかない、それを一番わからせてくれた記事だった。誰かに納得させてほしいと思っていた気持ちが、「誰もわからないんだ」ということが理解できて、ようやく納得できた。
この記事はNumber Webに掲載されている。さすがNumberだ。
書いたのは豊福晋さん。もしかするとサッカー界では著名な記者さんかもしれないが、申し訳ないことに今まで私は存じ上げなかった。
今回のブラジルの惨劇に関する記事の中では、私にとってはナンバー1の記事だ。どう受け止めればいいのかわからないもやもやを、釈然とさせてくれたすばらしい記事だと思う。豊福さん、ありがとうございます。
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