「キングオブコント2016」で見せた「タイムマシーン3号」の可能性

テレビ

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
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10月2日の「キングオブコント2016」(TBS)を見た。栄冠を獲得したのは初出場の「ライス」であった。
こういうコンテストの1位は、基本的に審査員の好みで選ばれるものであるから、どういう結果が出ても不思議なことはない。もちろん、会場にいる審査員としては客の笑い声の多寡に左右されることもあろう。それを超越して、コントとしての品質を採点に反映させるというようなことは、なかなかできないものだ。
同番組の場合、審査員は松本人志、さまぁ~ず、バナナマンという5人の芸人であることから、客との乖離した採点はやりづらいのであろうと思う。
よって、多くのお笑い批評がそうであるように、本稿で述べる「キングオブコント評論」も、筆者の立ち位置や趣味嗜好に基づいた私的な栄冠選びに過ぎないことは言うまもでない。
【参考】<キングオブコント2015>面白くないネタを競争で煽るだけでは演出の力不足
「ライス」のファイナルコントは「オシッコを漏らしてズボンを濡らした客が店員に無理難題を迫る」というコントであった。筆者は放送作家・コント作家として、こういった下ネタは感心しない。 なぜ下ネタが嫌いなのか、と言えば、下ネタは素人でも簡単に作ることができるネタであるからだ。
このコンビのコントは設定を説明するまでが長い。そしてその間は笑いがないのが難点だ。セリフで言えば、3言目ぐらいでは「笑い」になっていて欲しい。
「かまいたち」のファイナルコントは「給食費が盗まれて、目をつむっているからその犯人は手を上げなさい」というコントであった。彼ら自身は知らないかもしれないが、使い古されてカビの生えている設定である。その後の展開も今まであったものと変わりが無い(もちろん、本人たちはそれを知らずに再利用する結果になっているだけなのかもしれないが)。
「タイムマシーン3号」のファイナルコント。「劇団員が上手に出来ないからと嫌がる友人にセリフあわせの稽古を頼む。すると言に反して友人はすごくうまい」というコントである。これは設定が良く出来ているので、あとは演じられさえすればいつまでもやっていられるコントである。しかし、笑いを奇異のほうに逃げてしまったきらいがあるのは、ちょっと残念に感じた。
コントは基本的には芝居である。「タイムマシーン3号」は一度、笑いをやっている劇団の芝居に参加してみるのはどうか。きっと自分たちのコントの幅が大きく広がるだろう。
以上が、極私的な感想になるが、筆者としては「キングオブコント」栄冠は「タイムマシーン3号」に贈りたい、と感じた。
 
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