NHK特番「ココがズレてる健常者」の爆笑ギャグ

テレビ

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
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2016年12月21日に放送されたNHK「ココがズレてる健常者 障害者100人がモノ申す!」を見た。
「この番組は非常に批評しづらい番組である」という感想が、この番組の企画者としては最も聞きたくない感想だろうから、批評する。
まずは、お笑いの放送作家としての筆者のネタ評である。
脊髄性筋萎縮症・自称寝たきり芸人あそどっぐのネタ。ストレッチャーの上に寝たきりのあそどっぐ、レインコートをかぶせて貰い、

「雨の日にレインコートを着ると、遺体みたいになる」

筆者は思わず吹き出してしまった。映像で見た方がもっと笑えるので是非再放送で見て欲しい。それからもうひとつネタをやる。花束を持たせて貰い、

「レインコートは花束に代えると、やっぱり死んでるように見える」

これは笑えない。花束の方が笑えない理由は色々あるが、ほとんどの人が指摘するものは避けて、あまり人が言わないであろう点を指摘をしておく。

「ネタを置きに行っているからである」

置きに行くとは、そこに(時間的、空間的に)配置されるべきネタとして演者が予定していることが、見る方にバレていると言うことである。小島よしおのネタが笑えないのは面白くないからである。
番組は健常者が障害者に対してやってしまう、余計な気遣いを指摘する形で始まる。それぞれ納得できる意見だ。
【参考】<感動ポルノ?>障害者を笑い飛ばせる社会を目指す過ち
障害者による健常者に対するドッキリ企画が2つあった。ひとつは脚痩せエステに義足の女性が尋ね、一本しか脚かないので料金を半額にしてくれと頼むという企画である。
筆者はドッキリ企画自体が嫌いだが、こういった健常者でも障害者でも、人なら誰でも持っているどす黒いところ曝きだそうという企画には賛成できない。エスティシャンの若い女性がどうしてよいか分からずが困っているところを隠し撮りで音声を取って何が分かるのか、何が面白いのか。
筆者は放送作家をしつつ、自閉症スペクトラムの研究も大学院で取り組んでいるが、番組全体を見て、見た目で分かる障害と、見た目では分からない障害とではその困り感や生きづらさが全く違うということを再認識させられた。

「(障害者にどう接するかの)正解はひとりひとり違う」

これは、番組の企画者であり本番組の本家Eテレ「バリバラ」のレギュラー脳性麻痺の玉木幸則の至言だ。
 
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