<CNN記者も無視される>トランプ氏にバカにされる米メディア
保科省吾[コラムニスト]
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1月11日、米大統領選後、初の記者会見に臨んだドナルド・トランプ次期大統領。
米メディアのCNNを「偽ニュース(fake news)を流す」と糾弾し、「お前の会社はろくでもない。質問には答えない」とケンカ腰で、CNNの記者も粘ったものの一切質問を受付けなかった。
トランプ氏のTwitterによる『指先介入』も止まらない。
この『指先介入』によって、
- 米自動車大手フォード・モーター、メキシコに新工場を建設する計画を撤回。
- トヨタ自動車の豊田章男社長は、デトロイトで開幕した北米国際自動車ショーでの記者会見で、今後5年間で米国に100億ドル(1兆1600億円)を投資すると発表。
- 米ネット通販大手Amazonはアマゾンは12日、今後1年半で米国内で10万人超の雇用を創出すると発表。
企業は怖がっているように見える。しかし、正確に言えば企業は合わせに行っているだけである。どのような政治体制になろうとも企業の最も大切な目標は利潤を上げることである。利潤のためなら政治体勢などどうでも良いというのが、企業の論理である。
【参考】<失望から絶望へ >アメリカは既に「ポスト安倍づくり」を始めている?!
さて企業が発表するトランプ寄りの戦略は、トランプ氏を支持したとされる白人貧困層の失業率を下げ、格差を解消するのか。
「そうではない」と分析しているのがノーベル経済学賞受賞者でニューヨーク市立大学教授のポール・クルーグマン氏(Paul Krugman)である。
「(企業を脅して実行される)雇用創出の効果は限定的で実効性のある政策ではなく、まやかしの政策である。本物の政策は、米国のような裕福な大国では多額のお金が絡み、経済に幅広く影響を及ぼす。医療保険改革法(オバマケア)の廃止はまさに本物の政策だ。約3000万人が無保険になる結果を招くだろう(筆者要約・ニューヨークタイムス1月6日付)」
と、強烈な皮肉である。トランプ氏に完全にバカにされているアメリカのメディアは、間違った情報だらけのトランプ発言をたたきのめし、正々堂々とバトルを繰り広げて欲しい。
日本では時折、情けない日本メディアの代わりに『外国人特派員協会』の記者達がずばり切り込んでくれるときがあるが、今度はアメリカで日本人記者が恩返しをして差しあげたらどうだろう。
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