<SMAP解散インタビュー>ジャニー喜多川社長の素敵すぎる伝え方
安達元一[放送作家]
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2016年12月31日、SMAPが解散しました。筆者は「SMAP×SMAP」(フジテレビ)の番組立ち上げ当初に、構成を担当し、SMAPならびに関係者の皆様には大変お世話になりました。SMAPの解散の報は、なんだか他人事には思えません。
筆者とSMAPとの出会いは1992年。筆者が作家として参加した「夢がMORIMORI」(フジテレビ)という番組でした。森口博子さん、森脇健児さん、そして当時SMAPに森且行さんがいたのも縁(もちろんそれだけの理由ではありませんが)で、結成されて間もなかったSMAPがキャスティングされたのでした。
「ジャニーズの若者なんて生意気で扱いづらかったやだな」
などと思って番組に望んだのですが、会ってみたらびっくり。とても真面目で礼儀正しく、情熱的なメンバーで驚いたことを覚えています。
筆者は放送作家として、TOKIO、V6、嵐、タッキー、様々なジャニーズタレントさんのレギュラー番組を担当させていただきましたが、1度たりとも嫌な思いをしたことはありません。いつも楽しく、そして質の高い仕事ができた思い出しかありません。
こういった人作り、環境作りはリーダーや経営者の手腕に関わることですから、これもひとえにジャニー喜多川社長の人徳と努力の賜物なのかもしれません。
そのジャニー喜多川社長が、1月14日にSMAP解散に関して答えたインタビューを見て、その「伝え方の魔法」には感心させられました。さすがはジャニーさんだな、と。(拙著「人もお金も引き寄せる伝え方の魔法」では他にも、様々な「伝え方の魔法」の事例を紹介しているので、ご参照ください。http://amzn.to/2i58hQo)
「SMAPもああいうふうになりました。元気づいてやってくると思います。僕は(解散の詳細は)何も知らないですから、正直なところ。SMAPは頭文字を取るとさ、『(S)素晴らしい、(M)メモリー、(A)ありがとう、(P)パワー』でSMAPなんだよね。SMAPはそれで終わり。でも、個々がすごくやっているじゃないですか、活動を。絶対、期待出来ると思います。僕も今、子供たち(ジャニーズJr.ら)で新しい(作品)をやっていますから、それもご注目いただいて。これからの芸能界はますますよくなっていくということ」
この一言から始まったインタビューですが、以下のくだりで、筆者が思わず感心してしまいました。
「事務所から出ていくかも知れないという話はどう思う?」
というインタビュアからの質問に、ジャニー喜多川社長は以下のように答えます。
「みんな、それぞれの気持ちがある。だけど、みんな、そんな出て行くって言うことを前提に話はしてないと思いますよ。そんな野暮(やぼ)っちい人間、タレントじゃないと思う。僕は絶対永遠に後押し、バックアップ、応援をしていくつもり。誰に対しても。それは間違いない」
どうですか? 何か感じませんか?
「そんな野暮っちい人間、タレントじゃないと思う」
ここです!これは「相手の価値を上げることによって、相手にその気にさせる」という素晴らしい伝え方のテクニックなのです。
【参考】<箱根駅伝>青山学院大学・原晋監督にみる「若い人をその気にさせる伝え方」
本当に自分の思いを相手に伝えようとするためには、「出て行かないと思う」「出て行くはずがない」「出て行って欲しくない」・・・などといったありふれた言い方はダメなのです。これは自分の気持ちばかりを言っていて、相手の気持ちを考えていません。「常に相手の気持ちを考える」ことで、コミュニケーションはうまくいくのです。
「出て行くなんて、そんなヤボなことをする人間じゃない、立派なタレントなんだから、人格者としての行動をするはずだ」というニュアンスが、強く感じられますよね。万が一、仮に出て行くことが頭をよぎっていたとしても、こんな言い方をされたのでは、出て行くわけにはいきませんよね。
これは私たちの日常生活でも応用できる伝え方です。誰かにものを頼むときも「やって欲しい」ではなく、「君なら凄く上手く出来ると思うんだよね、だからやって欲しい」なんて伝えることができたらどうでしょうか?
筆者が気持ち良く仕事ができた思い出しかないジャニーズタレントさんたちを作ったジャニー喜多川社長。その素敵すぎる伝え方に脱帽です。
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