<介護士はホステス?>介護士に指名料の導入を検討する東京都

社会・メディア

山口道宏[ジャーナリスト]

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ちょっと待った、である。

小池都知事が「混合介護」になぜか積極的賛意を示している。

「それって混合医療の介護版かしら」といえたら、その方の感性は素晴らしい。医療と同様の保険内と保険外の乗り入れ(策)で、介護での保険とは公的介護保険下のサービスを指している。

歯医者で人工歯をいれる時に「ところで、保険でしますか、それとも自費でしますか」と、医師に問われるのとそっくり。「混合介護は富裕層向け」と早くも懸念が拡がる。

さて、今度の介護版 では有料サービスの「指名料」を 導入するという。介護士をはじめ懸案の専門職の賃金向上もそのことで可能になると推進を目指す東京都は臆面もなくいうから、介護業界も随分となめられたものだ。

【参考】<議員に年金はいらない>汚職なきデンマークの地方議員はボランティア(https://mediagong.jp/?p=22117)

そうでなくても介護福祉の担い手不足は深刻だ。

介護士養成の専門学校は多くがつぶれ、今年の介護福祉士国家試験も受験性が半数になった(例年は14-16万人が受験、16年度は7万9千人)という驚きの報道もあったばかり。2025年度で介護職員が38万人不足(全国・厚労省)にますます拍車をかける事態だ。

医者に指名料があるか? 看護師に指名料があるか? 介護士はホステスとは違うのだ。

そもそもは保険対象の適応範囲の拡大と緩和があれば解決すること。同時に専門職に相応しい身分保障と介護報酬こそ急務と考えるのが、行政本来の責任である。

かつて東京都は、国が決めた低額報酬をカバーすべく、都独自の加算で報酬をフォローしてきた歴史がある。いまさらながら「都民ファースト」に、「混合介護」で介護面の新たな格差創出は似合わない。

 

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