映画『ジーサンズ はじめての強盗』邦題と日本側スタッフがひどすぎる
高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
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映画『ジーサンズ はじめての強盗』(原題Going in Style、監督ザック・ブラフ)を見た。佳品というのが筆者の感想で、見て損はない作品だ。典型的なギャグが適切に使ってあるのは手練れの監督が取ったことを感じさせる。
キャストも豪華である。年金をくいものにする銀行に一泡吹かせて、自分たちの老後を守ろうとする3人の高齢者を演じるのは、ウィリー・デイビス役にモーガン・フリーマン、ジョー・ハーディング 役にマイケル・ケイン、アルバート・ガードナー役がアラン・アーキンだ。
皆アカデミー賞俳優である。もちろん、その芝居は安定感があってうまい。ことさらコメディとして演じていないのも好感がもてる。
しかしながら、残念なのは日本側の宣伝スタッフの映画の取り上げ方だ。
まず、『ジーサンズ はじめての強盗』という邦題は絶対ダメと言って良いくらいの酷さだ。「はじめてのお使い」をもじったつもりだろうが、そんなものは映画の主題ではない。
原題は「Going in Style」(意味は「かっこよく行こう」または「その形で行こう」ということか)であるから、翻訳しづらいのは分かる。それでも、この安っぽいコントのような邦題はないだろう。
【参考】<原題は『Sully』>映画『ハドソン川の奇跡』は間違った邦題だ(https://mediagong.jp/?p=19535)
またパンフレットや宣伝のビデオも酷い。ことさら「笑いの映画」であることを強調して作ってあるのは間違いだ。ハートフルな映画を笑いにまぶして作ったと言うことの方がどれだけ世の中に訴求することか。
特に日本人は「笑いの映画」だと、みくびって見ないことが多い。笑いの中に感動があった、というより泣けたし笑えたの方が好きなのである。
この高齢者たちがトランプを支持するアメリカの人々と言う見方も出来るが、こんな愛情あふれる人々がそのはずはない(と、思いたい)。彼らは銀行強盗で得た金をどう扱うだろう、彼らの未来はどうだろう、日本だとこのあたりでコンプライアンスが頭をもたげてくるだろうなあ、と思いながら見終わった。
本作は1979年に公開された映画『お達者コメディ/シルバー・ギャング』(原題はおなじくGoing in Style)のリメイクである。日本版のDVDはないのでインポート版を取り寄せているが、アメリカでの評価は一作目のほうが高いようである。
比較して見てみたいと思えるほどの佳品なのに、日本側のスタッフは酷すぎる。
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