再エネの国民負担が大きすぎる!「木くず発電」をどうするか

政治経済

石川和男[社会保障経済研究所・代表]
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家庭から出る生ゴミ、森林伐採に伴って出る木くず、家畜の排泄物などは、捨てずにうまく使えば「再生可能エネルギー(以下、再エネ)」になる。巷では「バイオマス」と呼ばれる。燃焼させたり、ガス化させたりすれば、発電用の燃料になる。日本では、木くずの利用が最も多い。
これが最近、大問題になっている。
再エネには、バイオマスのほかに太陽光や風力、地熱、水力がある。再エネで作られた電気は、2012年夏から始まった固定価格買取制度(FIT)により、大手電力会社が高値で買い取る。この価格は毎年、経済産業省が見直すことになっている。先月、2018年度の再エネ価格に関する検討が始まった。
今年度の再エネ買取りにかかる国民負担は総額2〜3兆円。この負担額は今後も上がり続け、2030年度では4兆円になる見込み。消費税1%で2.5兆円。再エネの買取り費用は、それに匹敵し、やがてそれを超えるほどの規模になる。
FITによる買取り対象となる再エネの内訳は、今年3月現在で、多い順に次の通り。

(1)太陽光(非住宅用):7,900万kW
(2)バイオマス:1,240万kW
(3)風力:700万kW
(4)太陽光(住宅用):550万kW
(5)中小水力:110万kW
(6)地熱:9万kW

太陽光はFIT開始直後から急増した。想定を超える異常な勢いで増えたせいか、「太陽光バブル」と言われる。
太陽光の買取りに伴う国民負担を抑えるため、経産省は、太陽光の買取価格を当初から大幅に引き下げたり(非住宅用:2012年度40円/kWh → 今年度21円/kWh)、大規模設備である「メガソーラー」には今年度から入札制を導入したりと、あの手この手で太陽光バブルの後処理をしている。
【参考】<太陽光発電のムダ>累計買取費用32兆円でも電源割合わずか7%
それでも、既にFIT認定を受けた太陽光にかかる買取り費用が高いこともあって、太陽光だけで2030年度に2.3兆円の国民負担。FIT開始から2030年までの累計だと32兆円にもなる。
バイオマスの買取価格は、今までほとんど下げられてきていない。一昨年まであまり増えてこなかったからだ。しかし、昨年から今年にかけて「木質バイオマス」(木くず)のFIT認定が激増し、2030年のバイオマス導入目標の2〜3倍にまで膨れ上がった。さながら、「バイオマスバブル」である。
バイオマスについても、国民負担増を抑えていく必要がある。今の見通しでは、バイオマスだけで2030年度に6300〜8300億円の国民負担で、FIT開始から2030年までの累計だと8兆円になる。
バイオマスバブルが続けば、この負担規模は更に膨れ上がる。これほどの費用を注ぎ込んだとしても、2030年時点の電源構成に占める太陽光、バイオマスの割合はそれぞれ7%、3.7〜4.6%程度でしかない。
2030年時点の電源構成で76~78%を占める目標である原子力・火力関連の燃料費が年間5.3兆円であることと比べても、FITによる高値買取りはあまりにも費用対効果が低い。バイオマスに関しても、太陽光と同様に、大規模設備(メガバイオマス)への入札制の導入や、小規模設備の買取価格の大幅引下げを行うべきだ。日本の木質バイオマス(5000kW)の買取価格は、ドイツの2倍、フランスの5倍と、世界的にも非常に高い。
もう一つ大きな問題がある。
日本で使われる木質バイオマス発電用の燃料は、その大半が輸入材で占められている。これでは、エネルギー自給率の向上にはならない。再エネ発電燃料を輸入するなどというのは、よくよく考えると奇妙な話ではないか?
輸入バイオマス燃料は、FITの対象から外すべきだ。外国の森林破壊によって発生した木質バイオマスを日本に輸出して儲ける企業を、これ以上儲けさせる必要はない。
 
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