<どうなる?放送作家>芸能界のフリー人材はなぜ、ギャラの文句が言えないのか

エンタメ・芸能

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

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2月15日、NHKが芸能界でフリーで働く人々に関する注目すべきニュースを報じた。

(以下、引用)「芸能人や個人で仕事を請け負う『フリーランス』で働く人などの6割以上が、発注した企業から事前に報酬額が示されなかったり、支払いが大幅に遅れたりするなど不当な扱いを受けた経験があることが、公正取引委員会の調査でわかりました。公正取引委員会は独占禁止法上、問題がある可能性が高いとして企業側に改善を働きかけていくことにしています。公正取引委員会は、芸能人やスポーツ選手、それにフリーランスなど個人で働く人たちの契約や働き方の実態を調べるため去年、業界団体を通じてアンケートやヒアリングの調査を行いました。(中略)芸能関係者から芸能人が所属事務所の移籍を希望しているのに、事務所の判断だけで契約を更新させられたとか、移籍を制限するために報酬の支払いを遅らせたり芸名を使用させなかったりする妨害が行われているという声が複数寄せられました。」(以上、NHKニュースより引用)

芸能界でフリーランスで働く人の職種は数多い。音楽効果マン、カメラマン、スタイリスト、大道具小道具、舞台監督、演出家。そして筆者の仕事、放送作家もまた、まさしくこれに当たる。

【参考】<奴隷契約?>芸能人の独立・移籍の制限問題に公正取引委員会乗り出す

40年にわたって放送作家の仕事をしているが事前にギャラ交渉があったことは、実に数えるほどしかない。

大抵終わった後でギャラを提示される。それでも、この提示されたギャラの額に対して「少ない」と文句を言った経験も実に少ない。提示額をそのまま受け入れる。その理由はいくつかある。

(1) 仕事に対して充分な額のギャラであると納得できる。
(2)金額は少ないが、番組全体の予算を考えたらその程度しか払う余裕がないだろうと納得できる。
(3)プロデューサーとの人間関係を壊したくない。
(4)ギャラは少なくても、どうしてもやりたい仕事がある。

こう見ると、金額に関してはあまり固執していないようにも見える。しかし、その理由は簡単で、テレビを主戦場としてやって来た筆者は、まだ、テレビにお金がある時代を生きてきたというだけだ。つまり、「ギャラが少ない」と言っても、少ないなりにある程度の額は担保されてきたことが、筆者がこのようにう感じる理由でもあるだろう。

テレビに金がなくなってきた現在は、ギャラ交渉なしではじめた仕事にはどんな悲惨な結末が待っているとも限らない。だからといって、報酬額などを事前に取り決めて行えばすべてが解決するとも考えにくい。

放送作家の場合、大概、仕事の発注は人間関係によって行われる。大脚本家先生や有名脚本家様の場合は「この人に書いて欲しい」という思いから仕事が発注されることはもちろんあるだろうし、この場合は事前契約さえ結ぶのであろうから、何の問題も起きないだろう。

ところが放送作家の場合は、作家性を求められて仕事が発注されることは少ない。知り合いだから、これまで一緒に仕事をしてきたから・・・という感覚で仕事が来る場合がほとんどだ。そのため、発注側としては、やれ契約だの、金額など・・・とめんどくさいことが発生するようなら「むしろ他の人を使おう」という意識が働いてしまうことは容易に想像できる。

放送作家としては実に悔しいことなのだが、これまで忙しいディレクターの代わりに台本を書くなどの仕事をあまりにやり過ぎてきた。ようはディレクターのアシスタントみたいな仕事でお金をもらってきたわけだ。

今後はそれらの仕事しか出来ない人はドンドン淘汰されていくだろうし、これからの放送作家はディレクターに従属しない独自性を持たねばならないと言うことでもあるのだろう。

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