<森友問題>「会計検査院の報告書」は素人でも分かっていた当然の結論

政治経済

両角敏明[テレビディレクター/プロデューサー]
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森友学園への国有地払下げにおける8億円値引き問題について、安倍総理はある時期から「会計検査院が調査中だから」という答弁に終始してきました。
その結果がようやく出ました。その報告書の内容は、
*ゴミがあるとした「面積」も、「深さ」も、「混入率」も、「単価」も、すべて「十分な根拠が確認出来ない」。
*1億3千万円分の事前ゴミ処理費用である有益費との重複積算や瑕疵担保責任免責のための金額についても「十分な根拠が確認出来ない」。
これまで安倍政府が説明してきた積算根拠はすべてきっぱりと否定されました。
しかし、これは会計検査院の手を煩わせるまでもなく誰にでもわかったはずのことです。筆者は5月に『<深い部分にゴミがあるというデータはない>あらためて、8億円値引き算定に根拠がないという根拠』というタイトルでメディアゴンに寄稿し、「面積」「深さ」「混入率」「単価」および「重複積算の正当性」についていずれも合理的な「根拠がないという根拠」を書きました。
筆者は単なるテレビのヘビーウォッチャーで、政治評論家でもジャーナリストを標榜してもいませんから、筆者が自力で取材して書いた原稿ではありません。単に5月以前の国会審議から見えた事実をまとめただけのものです。
いわば一般人でも分かることを、わざわざ国の機関である会計検査院が半年以上かけて調査し、結果として安倍政府が「瑕疵なく適法な手続きで処理された」と言い続けてきた答弁根拠を100%否定する結論を出したわけです。政府は、野党やジャーナリズムの合理的な指摘を無視し、わかりきったことのために、会計検査院の貴重な時間とエネルギー、ひいては国費を使ってきたことになります。
そして意図的かどうかはともかく、結果として安倍総理にとっては時間稼ぎのような効果を生み、選挙に大勝することへつながっています。
【参考】国会審議再開は民進党による森友加計疑惑封じだ
安倍総理がその調査にまかせると何度も繰り返した会計検査院によって明確に政府側主張が否定された以上、安倍総理、麻生財務大臣、佐川前理財局長、佐藤前大阪航空局長、また西田昌司議員をはじめとする政府擁護の論陣を張った自民党の方々は、公文書等の明確な証拠を持って「瑕疵なく適法な手続きで処理された」という事実を証明する責任があります。
11月19日夜のBS-TBS「週刊報道LIFE」がびっくりするような事実を伝えていました。詐欺容疑で逮捕された籠池夫妻が未だに黙秘を続けていること。そのためか、すでに起訴されたにもかかわらず証拠隠滅のおそれありとして3ヶ月半以上も長期拘束されたままであること。
老朽化した冷暖房もしくは窓のない部屋で、家族を含め弁護士以外の接見は許されていないこと。長男の佳茂氏は裁判費用に備える意味もあって現在木樵の見習いをしていること、などなど。
安倍総理はテレビに出て森友問題を問われると、籠池泰典氏の名前を挙げて、「詐欺で逮捕された人」と何度も何度も繰り返しました。しかし籠池氏の逮捕容疑と8億円の値引き問題は別です。申し上げるまでもなく籠池氏は逮捕され、起訴されていても未決であり推定無罪という状況です。
法に基づいて行政を司る最高権力者が一般の個人名を挙げてことさら犯罪者であるとテレビで語るのは人権侵害ではないのかと疑いますが、その結果として安倍総理は選挙で勝利し、安倍一強を維持するという幸運に恵まれています。
かつて安倍夫妻と籠池夫妻は親密でした。問題が発覚しなければ、いまごろは安倍昭恵氏を名誉校長として極右教育を実践する「瑞穂の國記念小學院」が開校し、安倍・籠池両夫妻はウインウインの関係を謳歌していたことでしょう。
ところが問題が発覚するや、安倍総理は籠池氏をしつこいヤツだ、犯罪者だと誹謗して手のひらを返し、最高権力者の座に君臨しています。昭恵夫人も自分こそが当事者であったことなどおくびにも出さず、説明責任を無視したまま、あちこちでファーストレディとして振る舞っています。
他方、安倍夫妻を尊敬していたという籠池夫妻は長期間拘束され、保釈請求も拒否されました。そして家族を含めて壊滅的な窮地に立っています。
森友学園問題は会計検査院の調査結果を受けて今後どういう経過をたどるのでしょうか。この問題は今国会での議論で終わるようなストーリーではなく、まだまだ展開が続く長編小説のような気がします。もしも池井戸潤原作ドラマなら、理不尽な強い者がギャフンとなる痛快きわまる大逆転が絶対にあるはずなのですが。
 
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