今やテレビ局はIT知識のないニコニコ動画か?

社会・メディア

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

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筆者には今のニコニコ動画に勢いがないように感じている。ニコ動は日本のサイトとしてどれくらい見られているのか。紹介するのは、世界で一番大規模だと謳うAlexaの5月11日現在のデータである。

  • 1位:google
  • 2位:YouTube
  • 3位:Yahoo! JAPAN
  • 4位:Amazon.co.jp
  • 5位:Twitter
  • 6位:Facebook
  • 7位:Wikipedia
  • 8位:ニコニコ動画
  • 9位:楽天市場
  • 10位:FC2
  • 11位:価格.com
  • 12位 :Ameba
  • 13位:livedoor
  • 14位:Windows Live
  • 15位:goo

日本でニコニコ動画が8位だという事実をどう分析するか? 筆者にはこれが「下り坂の8位」に見える。若者はニコニコ動画離れを起こしている。プレミアム会員の数も2016年の256万人を頂点に頭打ちというデータもある。ネット党首討論会などで、話題を振りまいたニコ動の噂や話題もこのところとんと耳にはいってこない。

こうしたデータより何より、筆者にとって、ニコニコ動画の勢いがないと感じられる理由は、経営者ドワンゴ代表取締役の川上量生氏の興味がニコ動の運営から離れている様子だからである。
川上氏の興味はニコ動から離れ、新しい事業、通信制の私立高等学校N高等学校の方に移っていると思われる。変わり身の早さもITっぽいと言えるかも知れない。今や、川上氏にとってニコ動の位置づけは通信制高校の道具に過ぎないのではないか。

ということは、今のニコニコ動画は、あまり見られなくなった地上波テレビと同じような悩みを抱えているのではないかと考えることも出来る。

「番組はあまり見られなくなってしまった、だが、ニコ動のノウハウはテレビで言うところの放送大学の講座をつくるようにすれば生き残れる」

一方、ニコ動が放送大学として、メディアでの生き残りを賭けているのに比して、まったく、生き残りの意欲が見えてこないのが旧来のテレビだ。巨象は動きが鈍く、ニコ動が発足からわずか15年足らずで学んだ、映像メディアの繁栄から衰退への道のりをちっとも学んでいないように思える。変えなければ生き残れないのである。

【参考】<テレビが活気づくチャンス?>放送法「政治的公平」規制撤廃の検討が始まった

そういった意味では、今テレビ局は「IT知識をもっていないニコニコ動画」になってしまったのかもしれない。ニコニコ動画はIT知識を持っているから変わる先を模索できるが、テレビ局は動画づくりのノウハウしか持っていないからITを活用した変わり身の方法も考えつかない、ということだ。

テレビを変える方法をこれまで、筆者はいくつか提案してきた。まずは、どこの局よりも早くCNNのようなニュース専業局になることである。きちんとテレビニュースをつくるノウハウは今のところテレビ局しか持っていないから、これは得がたい財産である。

そんなことを思っていたら、東証TDnetにTBSから次のようなリリースが成された。TBSは子会社を再編し、

(1)報道、ドラマ、バラエテイ他、コンテンツ制作を想定する「番組制作」新会社
(2)興行、催事、配信関連を想定する「映像・文化」新会社

を設立するという。よって、TBSは、持ち株会社のTBSホールディングス傘下に放送免許を国から与えられたTBSテレビがあり、それと並立した位置に(1)報道制作と(2)事業に特化した子会社が出来ることになる。これは、その先が期待できるのではないか。

ただし、それには、親会社の位置づけになるTBSホールディングスと、先輩会社であるTBSテレビが、子会社に対して封建的な縦の序列をつくらないことが条件となる。

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