<映画「サバービコン」>不思議なタイトルから読み解く良作

映画・舞台・音楽

メディアゴン編集部

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本年3月に東京ミッドタウン日比谷の中に出来たシネコン、TOHOシネマズ日比谷で映画『サバービコン 仮面を被った街』(監督ジョージ・クルーニー、脚本コーエン兄弟)を見た。東京ミッドタウン日比谷は日曜ともあって、すごい混雑だ。映画館への直行エレベーターが3基しかないので、長々と、エスカレーターで回らされるのはちょっと困りモノだ。

さて、映画『サバービコン』の方はといえば、実におもしろかった。どんなストーリーかといえば・・・こみいった、よく練られた仕組みのサスペンスなので少しでも語ってしまうとネタバレで興ざめになるかも知れないので、書かないでおく。

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なぜ、こんなタイトルなのか。それをヒントにしておく程度に止めよう。パンフレットを買ってタイトルの成り立ちが分かった。

『サバービコン(Suburbicon)』は、フェデリコ・フェリーニ監督の名作『サテリコン(Fellini Satyricon)』とsuburb(郊外)を合成した造語だという。Suburbにある、Satyricon、『Suburbicon』は、郊外に開発されたニュータウンの名前なのである。サテリコンは堕落した古代ローマの人々を描く映画である。クルーニー監督はそこを本歌取りしてsuburb(郊外)に家を求めた1959 年のアメリカ人たちの心象を映画に写し取っているのである。

「人の心には誰にもどす黒い利己主義が住み着いており、それは自己充足と隣り合わせにある」というのがこの映画のテーマだ。

おそらく、この映画は日本ではあまり受け入られることがないだろうが、見ておいて損のない映画でもある。映画のポスターにもなっているが、マット・デイモンのワイシャツの右の襟をよく見てから鑑賞なさると良いだろう。

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