「桜を見る会」は無駄な利権支出氷山の一角 -植草一秀
植草一秀[経済評論家]
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「桜を見る会」は公費の不正利用である。日本財政の最大の問題は、公費が適切に使われていないという問題である。財政赤字の問題でもない。社会保障支出の増加でもない。まったく必要のない無駄な支出が膨大に存在していることが問題なのだ。そのすべてが誰かの利権である。
この「巨大な利権支出」こそ、日本財政の最大の問題だ。
毎年4月に開催される「桜を見る会」の支出額が年々増加しており、安倍晋三首相や閣僚の後援会関係者が多数招待されていることが11月8日の参議院予算委員会で日本共産党の田村智子議員によって指摘された。
この問題をハーバー・ビジネス・オンライン(https://bit.ly/2K8oogJ)が詳しく伝えている。
記事は、「桜を見る会」が、各界で功績を上げた人や著名人を招待するものであること、飲食費を含めた開催費用が財政支出として支出されていることを指摘する。主権者が負担する税金で費用が賄われているのだ。公金、つまり血税から支出されている。
その費用は2019年が5520万円であり、田村議員は「桜を見る会」の参加者数と費用が年々拡大していることを指摘した。2014年は参加者が1万3700人、費用が3005万円だったが、2019年には1万82000人、5520万人に拡大している。
「桜を見る会」の開催要領では、招待者は、皇族や各国大公使、最高裁判所長官、都道府県の知事および議会の議長等の一部となっているという。この対象者は約2000人であるが、「その他各界の代表者等」との記述があって、この名目で招待される者が急増しているとのことだ。
この「その他各界の代表者等」の名目で、議員の後援会関係者が多数招かれているのだという。上記記事は、稲田朋美衆院議員が、「日々の活動報告」(2014年4月12日)のなかで「地元福井の後援会の皆様も多数お越し下さり、たいへん思い出深い会となりました」と書いていること、
松本純衆院議員が「国会奮戦記」(2015年4月18日)のなかで「選挙のうぐいす嬢の皆様をはじめ、後援会の皆様と参加いたしました」と書いていること、長尾たかし議員がツイッターで「地元大阪支援者の皆さまをご招待、お招きしました」と発信したことを伝えている。
安倍首相は国会での田村議員の追及に対して、
「桜を見る会は、各界において功績・功労のあった方々をですね、各省庁からの意見を踏まえ、幅広く招待をしております」
と釈明した。問題は安倍首相自身が後援会関係者を招待していた事実があることだ。
記事は田村議員の国会での発言、
「総理が後援会や支援者、山口県の関係者のご苦労を慰労し、親睦を深める。そういう行事になっているんじゃないですか」
「会場内でも無料で樽酒、その他のアルコール、オードブルやお菓子、お土産を振舞うんですよ。これを政治家が自分のお金でやったら明らかに公職選挙法違反。そういうことをあなたは公的行事で税金を利用して行なっているんですよ」
を紹介している。各国大使を招待して会を催し、首相がこれに参加するというのなら税金での支出も正当化される面はあるだろう。しかし、私的な後援会関係者を招待し、飲食饗応接待を行い、これを税金で賄うのは言語道断である。芸能人が多数出席するのも「その他各界の代表者等」の名目によるのだろうが、マスメディアに登場する人物に対する「買収工作」と言うほかない。
安倍内閣はトランプ大統領のご機嫌を取るために、役に立たない兵器、軍事装備品等を爆買いする。オスプレイ、F35、イージスアショアなど枚挙に暇がない。しかも、価格は売り手が設定する「言い値」である。
これらの無駄遣いをやめるだけで、社会保障や国民の福祉向上策が実現する。小中学校の給食費無料化も4200億円の予算で実現可能だという。日本財政の最大の問題は財政支出の利権化なのだ。
税金の私物化、国家の私物化なのだ。この現状に対して、主権者が怒らなければならない。主権者は悪政を放置してはならない。
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