<TBS「週刊さんまとマツコ」>悩みなき萬斎娘・野村彩也子アナに悩み相談させるのは残念
ただの面白いおじさんでないことは、おそらく世の中の殆どの人が感づいているだろうが、明石家さんまはエンタテインメントに関しての天性のカンと、そのカンを最も効率よく動かすための脳を持つ。コンピュータに例えるなら世界トップレベルの「スーパーコンピュータ富岳」である。
その「富岳」がフル回転で回ったところを目撃できたのが、6月14日の『週刊さんまとマツコ』(TBS)である。どうやら番組は「二人がスタッフが提示する様々な企画をやってみる」のがコンセプトとも言えぬレヴェルのコンセプトであるようだ。この日の企画は『人生相談』である。
『タモリはんのところへ行ってこい』
まず、スタッフが出したフリップに対するさんまからのダメ出し。さんまはこういう何気なく、あまり考えもなしに、仕事をした実感が得たいが為の自己満足で、出してしまう道具やフリップに対して実に厳しい。
出したフリップは『悩み事を相談したい芸能人ランキング』で、女性は2位がタモリ、3位がマツコ。男性は1位がタモリ、4位がマツコ、7位にさんま。全体では、1位タモリ、2位マツコ、さんまは10位内の登場せず。それに対するさんまの答えが『タモリはんのところへ行ってこい』であった。まさしくさんまの暗黒面(ダークサイド)である。
[参考]『週刊さんまとマツコ』はなぜそっちへ行った?残念な理由
このフリップは番組全体企画のフリであるから、非常に大事なのだが、まずフリになっていないとのさんまからの厳重抗議が発せられたのである。笑いにおけるフリであるから、返しはボケという手もあるが、さんまはボケない。マツコがボケにしようと言葉をはさむが、さんまはノラない。マジで返したまま。それはつまり、さんまはこのフリップ自体が必要ないとも言っているのである。たしかにいらない、それより早く内容に入るのが大事だ。
「このシークエンスごと編集でカット」の決断があってよかったかもしれない。編集はディレクターから演者への心のこもった手紙である。さんまは自分が出た番組は全部見るからなおさら。このくだりが多く残っている編集を見てなにを感じたのだろうか。
『なかってもやってくれたらええねん』
そして本編。最初の悩みを持って登場したのが、狂言師・野村萬斎の娘であるTBSアナウンサーの野村彩也子。つくられた悩みであることがミエミエで気持ち悪いというのが率直な感想。スタッフが「父が偉大すぎて仕事・恋愛悩みだらけ」とサブタイトルにまとめてある。
さんまは昔から女子アナに厳しい。それは彼女たちが大学を出てほとんど苦労もなくテレビ界の真ん中に立っていられるからである。さんまほどテレビの真ん中に立つために努力を重ねてきた人はいない。あらゆる艱難辛苦を乗り越えて、やっと出られたテレビ。それに比べてポッと出の女子アナ。信じているのは八木亜希子アナくらいか。さんまは自負があるからなおのこと厳しいのは当たり前である。
ここは早く、具体的な話に持っていったほうがいいと判断したのだろう。野村アナが父親に男性の話ををすると渋い顔をすると言ったのを捉えて「渋い顔して、どう言うの?」と問う。チャンスだが野村アナは受けきれない。つくった悩みだから具体性には乏しい。諦めたさんまの口から漏れたのが『なかってもやってくれたらええねん』。優しい言い方であるが、芸人ならアウトだぞ、とさんまは言っているのだ。
『ちゃんとやってくれ』
情報番組やバラエティ番組をやりたい、と言う野村アナに狂言を使った天気予報をやらせる。野村アナは中途半端にできてしまう。これは最も残念な結果である。彼女のせいではなくやらせたスタッフのせいだが、寒いとか痛いに近い。娘IMALUの話や、何度か聞いたことのあるさんま・大竹しのぶの結婚生活秘話が悪目立ちしたことも残念。この部分が光明面(ライトサイド)として光輝くにはどうすればよかったのだろう
もうひとり芸人ゲストが登場するが、それに関しては「2つ用意したから2つやる」との考えは間違っているのではないかと述べておきたい。
【あわせて読みたい】