<プロデューサーとの「まつりごと」>佐久間宣行・アイドルプロデュース企画の期待への方向性

エンタメ・芸能

宮室信洋(メディア評論家)

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元テレビ東京で、現在はフリーの佐久間宣行プロデューサー主催の女性アイドルオーディションが開催される。ドキュメンタリーYouTube動画と連動する当企画のポテンシャルを考察したい。

佐久間Pが、女性アイドルグループプロデュース動画をYouTubeにアップロードし始めた。これは、テレビ東京で放送されていた『青春高校3年C組』(テレビ東京系列)の『青春高校3年C組女子アイドル部』の主要メンバー5人からの、佐久間Pへのプロデュースの申し出から始まる。しかし、現状のアイドル界の厳しさと、メンバーに対する物足りなさゆえに、佐久間Pは『青春高校3年C組』の5人含めて、大規模なアイドルオーディションを主催すると7月1日に発表した。

オーディション開催は、新たなメンバーを募ることにより、新しい可能性にかける意味があるだろう。また協力者の振付師・竹中夏海氏は、一貫して『青春高校』の5人、日比野芽奈、大曲李佳、前川歌音、齋藤有紗、西村瑠香に対し、彼女らの立場に立った優しい意見を主張していた。竹中氏は、大事な岐路にある、大学生の年齢にあたる彼女らを考慮する佐久間Pの優しさを踏まえつつ、オーディションによって 「本当にやりたいのか自分の気持をふるいにかけられる」と評価する。『青春高校3年C組』の5人の物語も重要だが、オーディションによって、個人として向き合える機会もまた確かに重要だろう。

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佐久間Pは、5人を「真面目な普通の子たち」と評する。佐久間Pから窺えるサブカル志向からすると、佐久間Pの番組『ゴッドタン』(テレビ東京系列)にも出演したことがあるBiSの系譜であるBiSHのようなアイドルグループを実現したい考えもあるかもしれない。『青春高校女子アイドル部』メンバーは、もともと秋元康プロデューサー系グループでもあり、正統派路線ともいえる。『青春高校3年C組女子アイドル部』のメンバーをどれほど一新するのか、『青春高校3年C組』の物語は接続するのか、オーディション開催の未知が、どう転がることになるのかが大きな注目ポイントだろう。

さて、オーディション開催といえば、もう1つの重要な論点は、グループの人数となるだろう。個性的なメンバーがどのように『青春高校3年C組』メンバーと折り合いがつくか、『青春高校3年C組』メンバーの物語がどうなるのかは、懸念材料となる。一方で、秋元康P的大所帯グループを志向するならば、話はかなり変わってくるだろう。大所帯グループのメリットは、秋元康グループ的な握手会などのイベントが有効な点。コロナ禍などのさまざまな理由で、AKB48グループの握手会や総選挙は停止状態だが、コロナ禍も緩和状態の今、秋元P以外が大規模な仕掛けをするのは面白いだろう。

大規模オーディション開催の時点である程度の大仕掛けへの舵切りであり、どこまでの大仕掛け企画となるかは分からない。もともと、AKB48の成功は、ハロー!プロジェクトが有していたネット上のファンの熱量をとり入れた点にあったと思われる。佐久間Pの企画は、「アイドルドキュメンタリーに関するファンの熱量」だけでなく、「佐久間Pドキュメンタリーに関するファンの熱量」という、参加地点がもう1段階深まった疑似参加物語となっている。アイドルとの祭りだけでなく、プロデューサーとの「まつりごと」なのだ。サブカル志向と思われる佐久間Pが、どこまでの大仕掛けをするかには疑問もあるが、いずれにせよ、オーディション開催という未知に賭けた佐久間Pのアイドルプロデュースに期待したい。

 

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