<NHK朝ドラマが好調な秘訣は「制作局交代制>地方局がもっと番組を作ることがテレビを面白くする

社会・メディア

影山貴彦[同志社女子大学 教授/元・毎日放送 プロデューサー]

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NHK朝の連続テレビ小説「マッサン」が始まって一週間。

面白い。ドラマに限らず、どんなテレビ番組も「3回観てから」評することを心がけているものだが、もう既に初回からぐいっと心を掴まれた。ドラマの魅力の詳細については、別の機会に譲るとして、今、NHK朝ドラの好調が目を引く。

その理由について、難しいことを言えばいくらでも言えそうだが、シンプルなことを短く記したい。ご存知の読者も多いかと思うが、NHKの朝ドラマは、半年ごとに、NHK東京放送局(AK)とNHK大阪放送局(BK)が交代で制作している。

今回の「マッサン」は大阪放送局、好調のうちに終えた前回の「花子とアン」は東京放送局の制作である。

この東京と大阪の「制作局交代制」が今、とてもうまくいっていると思うのだ。もちろんこの制度はずっと昔からそうである。けれど、かつては民放もそうしたケースがよく見られた。

たとえば、私たちが愛して止まなかった深夜番組「11PM(1965〜1990)」は、月、水、金が東京の日本テレビ、火、木が大阪の読売テレビの制作であった。制作局の個性も反映して、とても楽しめた。そういうスタイルが今少なくなっている。

確かにNHKと民放を同列には語れまい。民放はそれぞれ系列局であっても同じ会社ではないからだ。しかし、私は今のテレビが面白くなくなっている理由のひとつが、東京キー局が圧倒的多数の番組を制作していることにあると思うのだ。

経済の一極集中とそれは無縁ではなかろう。

だが、経済とメディアを同じように捉えるのはあまりに寂しい。 大阪、名古屋、北海道、福岡、さらに他のエリアの局の放送マンたちの中に素晴らしい才能を持つ人々が数多くいる。 にもかかわらず、ごくわずかな制作機会しか与えられないのはあまりに寂しい。

テレビ局、特に民放各局が東京以外の系列局の手による制作番組を目に見えて増やすことが、放送全体の活性化になると確信している。必ずできるはずである。 言葉だけの「地方の時代」にしないためにも、ぜひ実現してほしい。

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