<連続するマレーシアの旅客機事故は偶然?>航空機事故の75%を占める離着陸「魔の11分間」以外で起きている不思議

海外

藤沢隆[テレビ・プロデューサー/ディレクター

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最近発生した以下の3つの航空機の事件を見てください。

  1. 2014年3月8日・マレーシア航空 ボーイング777:行方不明(海上墜落?)
  2. 2014年7月17日・マレーシア航空 ボーイング777:ウクライナで撃墜?
  3. 2014年12月28日・エアアジア エアバスA320:海上墜落

すべてがマレーシアに関係する航空機事故です。ただし、「3」はインドネシア・エアアジアが所有し運航する航空機だそうで直接マレーシアの航空機とは言えません。しかし、マレーシアに本社を置くエアアジアのグループ会社であることからマレーシアでも3つめの惨事として深刻に受けとめられていると言います。
一国に関連する航空機の大事故が1年に3件も発生するなどということは過去に例がないと思いますが、その事故の状態が航空機事故としてはいずれも発生確率のとても低いものであることにも驚かされます。
航空業界にはクリティカル・イレブン・ミニッツという言葉があります。離陸3分、着陸8分の11分間がクリティカル(重大)であるという意味で、「魔の11分間」とも言われます。筆者もかつて「魔の11分間」を取り上げた特集番組を制作したことがありますが、航空機事故は圧倒的にこの「魔の11分間」に集中しています。
手元の資料ですが、2011年~2014年の死亡者が発生した重大な旅客機事故を見てみました。機長の異常行動により墜落したケースなどごく特殊な事例を除いた31件のうち、半数以上の18件が着陸時に起きた事故です。離陸時に起きた事故が5件ありますので、合計23件、航空機事故全体の75%ほどが「魔の11分間」に起きていることがこの資料からも読み取れます。
ところが、マレーシアに関連する3件の事故はそのすべてが「魔の11分間」以外の時間に起きています。どれも事故の起きる確率が低い巡航時に問題が起きていることになります。
とりわけ2014年3月8日にマレーシア航空・ボーイング777が消息を絶った事例はいまだに機体が発見されておらずとてもミステリアスです。ボーイング777は事故率が低い安全性に定評のある機体であり、マレーシア航空もそれまで安全な航空会社とされていました。
さらに、様々な技術が進化した現代に、旅客機がどこに墜ちたかわからないというのはとても不思議です。資料をあたってみましたが大型の航空機が行方不明になりその後も発見されなかった例はごくわずかしかありません。
1979年1月に成田を発ったヴァリグ・ブラジル航空のボーイング707-320F貨物機が太平洋上で行方不明になり、いまだに残骸すら発見されていません。
これより前の1972年10月には旅客45名を乗せたウルグアイ空軍機がアンデス山中に墜落した事例があります。消息不明の機体を発見できず捜索を打ち切った後、遭難後70日を過ぎて発見され16名が生還しました。人肉食や「生きてこそ(1993)」などの映画でも知られている事例です。
これ以外には2003年にアフリカのアンゴラで駐機していたボーイング727機が何者かに盗まれ、未だに行方不明という例がありますが、戦前ならともかく、ブラジル航空の行方不明からでも35年もたった今、大型の旅客機の機体が発見されないなどということはまずあり得ません。マレーシア機が消息を絶ってすでに300日を経過しています。大捜索にもかかわらずこの機体が発見されないのはまさに奇跡的な確率です。
「2」の例のような旅客機が軍用機あるいはミサイルによって撃墜されるという確率はどうでしょうか。戦後70年で13例ほどあるようですが、2000年代に入ってからは今回のマレーシア航空機以外に1例あるのみですから、旅客機の墜落原因としての確率は相当に低いものです。ちょっと気になるのは、他の1例もウクライナがらみであることです。大韓航空機撃墜事件もそうですが、最新2例を含めて戦後の旅客機撃墜13例のうち8例が旧ソ連あるいはロシア連邦内で起きていることも驚きです。
「3」の例ですが、今のところ高度およそ1万メートルで巡航中、悪天候に見舞われ、海上に墜落した可能性が報じられています。発見された状況から、空中分解ではなく、海上への不時着、あるいはそれに近い状態だったのではないかと言われています。
2011年~2014年の死亡者が発生した重大な旅客機事故31例のうち23件が離着陸時の「魔の11分間」に起き、残りの8件が巡航中に起きています。8件のうち3例は火災やエンジントラブル、計器故障などの機体異常が原因とされています。
巡航中に起きた事故で上空の悪天候が主原因とされている例は多くありません。激しい乱気流に見舞われて多くのケガ人が出たというニュースが時々ありますが、飛行機は2~300メートル一気に落ちても機体が壊れたりはしません。中に乗っている人がシートベルトをしていなかったりすると、天井に頭をぶつけたりしてケガをするのです。
今回のエアアジア機の場合、気温がマイナス数十度になる積乱雲に入り、機体やエンジンに氷がついて操縦不能になったということが考えられるそうですが、わざわざ積乱雲に突っ込むパイロットもいないでしょうし・・・。もしそうだとしたら、高度1万メートルの巡航状態で天候不良により墜落という確率的には相当珍しい事例と言えると思います。
どうしてこうも確率的にありえないようなことばかりがマレーシア関連の旅客機に続くのかほんとうに不思議です。
ところで、最近4年間31件の死亡者を伴う旅客機事故リストを見てびっくりしたことがあります。アジアの航空会社の事故が14件と圧倒的に多いことです。次いでロシア連邦の航空会社が8件あり、なんと31例中22例がアジア・ロシアの旅客機事故であることです。
手元の資料とは言え、ここまでの数字には単なる偶然ではない、なにか必然たる理由が潜んでいるのかも知れません。
 
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