<2.5%誤差のある視聴率よりも正確?>統一地方選挙を「統計」でやったらどうなるだろう
高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
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いっそのこと、統計で選挙をやればいいのではないかと思う。4月12日の10知事選の平均投票率は47.14%と過去最低。初めて5割を下回った。
このていたらくなら、今「最強の学問」とか言われている統計を利用すればいい。筆者はこの統計という方法をどうもうさんくさいと思っていたから大学院にいってかじってみた。
そこから判断すると、統計で選挙をやるには以下のようにすればいい。
総務省(2014)の発表によれば、日本の有権者数は1億424万9187人。統計ではそのおよそ20%を調査すれば正しい結果がわかると言われているので選挙人名簿から無作為抽出で2085万人を選び出す。まあ、キリのいいように2000万人でよいだろう。
その2000万人を1000万人ずつの2群に分ける。一方のA群1000万人には、しかるべき報酬を払い、選挙期間中は有給休暇をあげ、誰に投票するかをずっと研究してもらう。その間、個人的な候補者との接触は一切禁止されるが、立候補者はA群の彼ら彼女らが質問することには、すべて答えなければならない。
投票日が来れば投票する。B群の1000万人には、ふつうに暮らしてもらえいい。ただ、投票日に任意の候補者に投票してもらうだけだ。統計学上はA群を実験群、B群を対照群というが、それ以上難しいことはどうでもいいだろう。
開票後A群1000万人の投票によって当選者が決まる。それが妥当なものかを検定するために利用されるのがB群1000万人である。検定を行ってA群1000万人の投票結果は「1%の水準で有意」などの結果が出る。
1%は間違っている可能性はあるけれど99%は正しいと言うことである。±2.5%の誤差があるテレビの視聴率調査などよりは、よほど確かである。「5%の水準で有意」というのもあるが、エンターテインメントではないのだから厳密にやってもらおう。
統計で選挙する利点はまだある。選挙する人が5分の1なのだから、選挙の費用も5分の1である。さらに、民意の反映という点でもランダムサンプリングという無作為の抽出を行っているのだから、若者が極端に行かない選挙などという偏りが生じていない分、正確なのではないか。筆者は裁判員制度には反対だが、こちらも、一般常識を反映しているのではないか。
でも、この統計による選挙方法は、国民の支持を得られないだろう。選挙には行かないのに選挙権がないのはダメだと、万人が思うからである。
AKB総選挙もある選挙方法の形である。しかし、投票権を得るにはCDを買って、つまり金で選挙権を手に入れなければならない。この方法は論外である。
筆者は競艇の熱烈なファンであるが、競艇も金で買う投票である。舟券の正式名称は勝舟投票券である。この投票は金が絡んでいるから暴動になるくらい真剣である。
レースのメンバーの違い(エンジン、技量、過去の成績)など、競艇記者は必死になって選手それぞれの違い、本当の選挙で言えば候補者の差異を取材して、新聞に載せる。赤い戦、青い戦、これほど熟読される新聞も他にないだろう。最高得票者を予想すれば、賞金が出る方法を選挙に導入したら投票率は上がるか。
おそらく、上がるであろうがダメだ。
雨が降ると競輪が中止になって行き場を失った競輪ファンが大挙して競艇場に流れて来る。競艇ファンは鉄板の車券、つまり固い本命の券を買う性質の人が多い。競艇は水の上でエンジンまかせに行われる勝負だから、何が起こるかわからない。
本命であっても5倍くらいのオッズをつけるのが普通である。ところが、競輪ファンが来て、本命買いをするとオッズが2倍になってしまうのである。選挙には詳しくない人が投票すると、違った結果が招かれる。
最後に、高校の生徒会長選挙。これは、基本的に在学生の全員が投票する。金も絡まない。ある意味、理想の選挙だ。筆者には次のような想い出がある。
大学紛争の余波が高校にも及んできた頃の話である。その頃は何でも廃止したり変えたりすることが革命だという気分が蔓延していた。筆者たちは論点として「制服廃止」を掲げ、候補者A君を擁立した。ところが対立候補が立たない。みんな選挙などというものにしらけていた。
生徒会の規則では無投票当選はなしで、信任投票を行う決まりである。信任されるラインは過半数の得票である。ところが開票すると大量の白票が投じられており過半数には遙かに届かない。2度目の選挙が行われることになった。
筆者たちは、同じことにならぬよう策を練った。仲間内から対立候補B君を擁立した。そして、選挙演説の会場でB君に、あることないこと織り交ぜて、激しいA君への人格攻撃を行ってもらった。これには会場からブーイングが起こる。
もくろみ通り、これで勝った。A君は消去法で生徒会長になり制服は廃止された。これは、若気の至りの馬鹿げた戦法である。それにしても選挙がエンターテインメントになったお陰で投票率は100%近くになったことは確かだ。
4月26日に再び、一般市長選・市議選、東京都の区長選・区議選、町村長選・町村議選の統一地方選挙が行われる。面白くなさそうだなあ、と思う人も多いだろうが探せば選挙におもしろさは見いだされるのである。
<お願い>統計による選挙の方法について、「これでは統計になっていない」という指摘がある統計学者の先生方、是非、ご教示下さい。
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