<ビビりではなく演技?>「アメトーーク」の「ビビり芸人」は本当はビビりではない可能性


高橋維新[弁護士]

***

2015年7月2日放映の「アメトーーク」(テレビ朝日)のテーマは、「ビビり-1グランプリ」であった。

ビビりの芸人がビビるリアクションの模様をバカにして楽しむという企画である。これは、筆者の二分法に基づけば「何かをバカにする回」に当たるため、おもしろかった。

しかしながら、新鮮味があるわけではない。誰かがビビる様を楽しむというコンセプトの企画で、真っ先に思い付くのは、日本テレビ「ガキの使いやあらへんで」(以下、ガキ)のヘイポー(斉藤敏豪氏)である。

知らない人のために説明しておくと、ヘイポーというのは「ガキ」のスタッフ(制作会社のディレクター)であり、極度のビビりのくせにスケベで虚言癖があり、自分より弱いと判断した者にはとことん態度がでかくなるコントキャラクターのような人間である。

これが現実にいるから困るのだが、とにかくビビる様は常軌を逸しており、ガキではよく暗い中で独りぼっちにさせられる。

ヘイポーを何度も相手にすることで培われた「ビビらせ」のノウハウを同番組のレギュラーメンバーに応用したのが、「笑ってはいけない」のラストを飾る「怖がってはいけない」である。

ただ、ヘイポーをビビらせる企画も「怖がってはいけない」も回数を重ねすぎているため、少なくとも筆者は飽きている。そういう意味でもこの種類の笑いに新鮮味はない。

話を少し変えるが、「怖がってはいけない」を見ていると、田中は他の4人よりもビビりであることが分かるが、あとの4人は「普通」である。ビビる様を笑うという企画が成立しているのは、ギミックに工夫が凝らされているからである。

「普通」の人でもビビってしまうような仕掛けがきちんと用意されているからである。となれば、大事なのはむしろ人選よりもギミックの方なのである。

今回の「アメトーーク」に出てきた5人の芸人も、ビビりという触れ込みではあったが、仕掛けの方をちゃんとできるのであれば出場者をビビりに限定する必要はない。

前述の通り、ビビりの人でなくてもギミックさえちゃんとしていればおもしろいリアクションが撮れるので、実力で出演者を選んだ方がやりやすいと思われる。極端なことを言えば、こういうのに全く動じない芸人でも、ビビるリアクション(=演技)ができる人間ならいいのである。

今回も、前列に千原ジュニア・宮川大輔・フジモンこと藤本敏史(FUJIWARA)という奇跡的な実力派が揃っていたが、ここまで奇跡的だと、このうち何人かは本当はビビりじゃないような気もする。ただ単にお笑いの実力だけを買われたキャスティングだった可能性はある。

3人より実力に劣る後列の2人は、マジのビビりの可能性が高いと思われるが、村上健志(フルーツポンチ)も少しリアクションのわざとらしさが目立ったので、やっぱりマジのビビりではない可能性がある。

番組の最後では、同じく「ビビり」らしい宮迫博之(雨上がり決死隊)にも番組が用意したギミックが牙を剥いていた。ただ宮迫は、ビビり芸人の5人がビビっている段階では、高笑いしながら動じずに5人を苛めていたので、やっぱりビビりが演技の可能性がある(宮迫であれば、演技力には申し分がない)。

MCの宮迫とビビり芸人たちが同じ土俵に立ってつぶし合うことで、また違った面白さが生まれていたので、そこは良いのだが、それをやるのであれば宮迫はもっとビビるリアクションを前からしていないとダメだった。

5人を苛めていた時は平気そうだった宮迫が急にビビりのリアクションをしていたため、わざとらしさが鼻についたのである。

あとは、ビビり芸人をバカにする回なので、ともすれば可哀想になって笑えなくなってしまうのが難しいところである。そこは演者とスタッフのバランス感覚が必要なのだが、宮迫は少しSっ気が出過ぎていたので、ビビり芸人たちが若干可哀想だった。

芸人同士の付き合いならあれぐらいきつい感じでも笑っていられるのだろうが、一般人からすると少々引いてしまう。宮迫は、もう少し笑いを押さえた方が良かったと思う。

 

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.
高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。