<自分の人生や親の遺品の整理法?>最近流行りの「大人片づけ講座」に参加してみた


齋藤祐子[神奈川県内公立劇場勤務]

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ある金融機関で「最近とても人気があるんです」と勧められて「大人片づけ講座」というものに参加してきた。

収納アドバイザーの話なのかと思いきや、これが、今はまだ元気だがそろそろ身の周りの整理を・・・という「大人」世代と、親の介護が切実な「大人」世代に向けての「親の家の片づけ」と「子供世代が困らないための終活、片づけ」のための講座であった。

講師は片づけアドバイザーと行政書士の2人。親の突然の死で、あるはずだと思っていた家の権利書などの重要書類がどこにあるのかわからず慌てた話をはじめ、最近課税強化された相続税の話、相続税の納付期限は親の死から3カ月。

財産を整理し相続するには当人が生まれてから死ぬまでの戸籍謄本をすべて取り寄せる必要があるが、転勤族だったり海外赴任をしていると、これが案外時間がかかる、という話などだ。

そのほか、自分史を振り返る「エンディングノート」は、苦労した思い出や住んできた場所の思い出、その土地土地で楽しかったこと、すでに亡き係累との思い出を整理し、家族間の対話や理解が深まるとのこと。

住んできた場所を整理し記載すれば、本籍を移していないかなど、戸籍謄本をそろえて金融機関に提出する手続きの際にも役に立つし、係累の整理で相続人の確定もしやすいというわけだ。

自分に万一のことがあった時の葬儀のやり方を記載するだけではない。自分史と自分の財産の一覧の他、今飲んでいる薬などを記載することもできる。自然災害で自宅が損壊してもこのエンディングノートを持ち出せば、飲んでいた薬もわかり、預貯金の詳細も記載がある。たとえ津波で自宅が流されても、日常生活を継続するための手続きが、これ1冊でかなり助けられるということだ。

「我が家あるあるチェック」などの質問リストも面白い。10項目の質問(「鍋やフライパンが5個以上ある」、「段ボール箱や袋に入ったものがある」、「箱に入ったままのシーツやタオルがたくさんある」など)に答えてゆき、当てはまることが多い人ほど、家の広さに対して不要なモノが多すぎるということらしい。

不要なものを捨ててすっきり暮らす、というのは「お買物=消費がレジャー」になっている今の時代、誰にとっても悩みの種。この片づけにも順序があるらしく、最初に手を付けるべきは、「重要物品の片づけ」という。

不動産の権利書をはじめ、実印や預金証書、保険証券など、まずはこの手のものをノートに書きだし、ある場所をきちんと確かめる、という作業である。案外、あると思っていた場所にない場合が多いらしい。あたふたしても、万一のことが起きて自分が動けなかったり意識がなかったりする時に比べれば、まだまだ手の施しようがあるというわけだ。

これが片付いたら次はこれも意外だが、防災の観点から、避難経路上の不用品を片づけること。階段の踊り場や曲がり角に「買い物でもらった紙袋」をためていたり、玄関脇やトイレ、窓の近くにものを積んであったり床に直置きした箱があったり。転倒防止、避難経路をふさがない、という点からこれを徹底的になくすのが第2ステップ。

その次は高所に置いてあるものを片づけて・・・と片づけの優先順序を知ることになる。さらには、親の家を片づける際に「言ってはいけないNG言葉」をはじめ、片づける際にまずは準備すべきお道具類、粗大ごみやごみを置いて置ける場所を確保せよ、などなど、なるほどと思う話ばかりだった。

人間は生まれてくる前は母親の胎内に1年いる。それから考えれば、出産の準備は半年以上時間をかけられるということだ。だが、親の死も自分の死もそれに比べればきっと突然やってくるだろう。

葬儀だのお墓だのと、目の前のことに追いまくられて、手続きを完了させるべき期限までにばたばたと慌てまくるに違いない。そのためのエンディングノート、そのための「大人片づけ」ということだ。

会場を見回せば、60代後半から80代の人たちが大半。とはいえ、親の家を片づけはじめ、自分の人生の残り時間を考えてこれからすべきことを本気で考えてみるには筆者もいいお年頃に違いない。そのためのエンディングノート、そのための大人片づけということか。

この手の講座に人気があるのは、話を聞いてみれば実用的で、今すぐ始めたほうがいいと誰もが感じるからだろう。片づけアドバイザーや行政書士も、高齢化社会で需要の多い花形職業なのだな、としみじみ感じたセミナーであった。

 

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齋藤祐子

齋藤祐子(さいとう・ゆうこ) 1984年、筑波大学卒。現在、文化施設に勤務。文化政策や現代美術、落語等の分野に関心が深い。