[江川達也]<コネ社会で生きてる人が無能に見える>「少年ジャンプ」連載クビ切りの競争地獄を勝ち抜いて見えてくるもの


江川達也[漫画家]

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昔、「少年ジャンプ」(集英社)で連載していたことがある。

「少年ジャンプ」は、一年に4回新連載が3本始まるという方針があった(今は知らない)。それは、一年に4回連載が3本終わることを意味している。

 20本の連載中の3本なので、会社で言うと15%の社員のクビが3ヶ月に1回切られ、同じだけの新入社員が会社に入る感じだろうか。クビを切られる基準は人気投票である。雑誌についている人気投票で毎週順位が1位から20位まで決まる。

10位以内にいれば、ほっと出来るが、15位以下だと、心は千々に乱れる。クビの危険水域だ。

連載が始まった新人が3ヶ月もたないで、連載終了になって、漫画界から消えていったりする。連載陣にとって、面白い新連載が始まらないことが有り難い。読者にとっては、面白い新連載は嬉しいが、連載陣には辛いのだ。

筆者が描いていた頃の「少年ジャンプ」は、部数がどんどん伸びていた頃だった。なぜか、人気の新連載がどんどん始まって、「少年ジャンプ」全体が面白くなっていったからなのだ。

 同じレベルで面白い漫画を描いていると、それ以上に人気のある連載が始まってしまうと、一位順位を落とす。そう、面白い漫画が始まるだけで順位が一位下がるのだ。

面白い漫画が20本始まってしまったら、同じように描いていたら、終わってしまうのである。クビになってしまうのだ。

部数が伸びまくっている時の「少年ジャンプ」でのサバイバルは本当にキツかった。だが、有用なデータがとれた。まあ、データをとるために「少年ジャンプ」で連載しようとしていた部分もあるので、とても有り難かった。

しかし、自由競争は本当にしんどいものだ。何度も15位以下の危険水域をうろついたことがある。その中での分析と努力がその後、恐ろしく役に立った。

人気があるものが価値があるかといえば、筆者にとってはあまり価値はない。筆者はマイナーな人間なので、世間の人気はくだらないと思っている。だが、自由競争を体験しなければ、見えて来ないものもあると思って競争社会に身を投じてみた。データがとれたので、そこからは、抜けた。

だが、後遺症が残った。

「コネ社会で生きてる人が、無能に見える」

という後遺症が。

(Facebookから転載)

 

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江川達也

江川達也(えがわ・たつや)漫画家。1961年、愛知県生まれ。愛知教育大学教育学部卒業。 アシスタントの傍ら描いた習作『Don't Give Up』が『コミックモーニング』編集部の目に止まり、1984年、「BE FREE!」(『モーニング』)でデビュー。その後『まじかる☆タルるートくん』を始めとする少年誌向けのギャグ漫画や、『東京大学物語』『GOLDEN BOY』などの青年誌向けのストーリー漫画まで幅広い分野で執筆し、作品がアニメ化されるなど、立て続けにヒット作を生み出す。