<企業タイアップ番組に零落?>「アメトーーク」の「ゴールドジム芸人」はなぜ「筋肉芸人」にしなかったのか


高橋維新[弁護士]

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2015年9月17日放映のテレビ朝日「アメトーーク」のテーマは、「ゴールドジム芸人」である。

この回の番宣を見たときにまず抱いた違和感が、「筋肉芸人」というタイトルではダメだったのか? ということである。なぜ、「ゴールドジム」なのか。「ゴールドジム」とは何なのか。

本放送を見たら分かったが、「ゴールドジム」とは、スポーツジムのチェーン店のことだった。つまり、私企業の名称である。「筋トレが好きなムキムキ芸人」という括りではなく、「ゴールドジムによく通っている芸人」という括りだったのである。

この段階で、もう雲行きは怪しくなる。ゴールドジムという私企業が噛んでいるということは、ゴールドジムの方が「うちを宣伝してくれ」と持ち込んだ企画かもしれない。そこまでいかずとも、ゴールドジムとは不可避的にタイアップする必要があるので、なかなかけなすことはできない。

利用者の顧客をバカにするのも、結果的にゴールドジムをバカにすることにつながるのでやりにくくなる。「何を褒める回」にならざるを得なくなるのである(http://mediagong.jp/?p=8317)。

他方で、マッチョというのは、筋肉を鍛えていることをよくバカにされるタイプの人種なのだが、筆者は、バカにされることにかなりの程度寛容であるという印象を持っている。なぜかは不明だが、「筋肉を鍛えている」という明確な強みから生まれる余裕から来る寛容さが根っこにあるような気がしている。

「コイツは俺のことをバカにしているけど、やろうと思えばいつでもボコボコにできるからいいか」というような話である。

何が言いたいかといえば、筋肉バカという最高の「バカにできる題材」を扱っているのに、ゴールドジムを褒めるという構造が組み込まれたことでどっちらけになってしまったということである。題材が最高だっただけに、惜しさも増す。

番組自体は笑いを足すためにガリガリの田中卓志(アンガールズ)をあてがい、彼のガリガリさとキモさで笑いを生み出すという演出をしていた。ただ、田中のキモさなら他のテーマでも見ることができるので、今回限りの強みは活きておらず、どうにもなっていなかったというのが正直なところである。

さて、各芸人を採点してみたい。5点満点である。

【品川祐】(品川庄司)3.0点

前評判通り雛段組の中では一番しゃべれていた。世間からは嫌われているようだが、実力は確かだと思うので、めげないでほしい。

ただし、全体の構成が総論に記した通りゴールドジムのヨイショに終始していたため、その中での頑張りには限界があるというものである。そのため点数としてはこの程度になる。

品川個人のパフォーマンスで気になったのは、カタカナ語が出てこなくなるクダリである。冒頭、ゴールドジム芸人達は「今日の収録のために糖質を制限しているから頭がうまく回らないんじゃないか」という発言をしていたが、後半に品川がしゃべる部分で「アサイー」という単語がなかなか出てこないというワンシーンがあった。

これだけならいいのだが、その後すぐに今度は「シェイク」という単語がなかなか出てこないという場面が放送されていた。何が問題かと言えば、「アサイー」のくだりがそこそこウケていただけに、「シェイク」のくだりは味をしめた品川がわざとやったのではないかと思えてしまったことである。

わざとだとしたら、わざとに見えないようにもう少し自然な演技力を身に着ける必要がある。わざとじゃなかったら、品川の素にそういう胡散臭さがあるということになるので、やっぱり演技をする必要がある

【藤森慎吾】(オリエンタルラジオ)2.6点

「ゴールドジムに通い始めたばかりでまだそんなに体ができていない」という独自のキャラ付があったのだが、活かしきれてはいなかった。品川の次にしゃべれていたが、有象無象の域を出ない。

【春日俊彰】(オードリー)2.0点

ポンコツっぷりを相方の若林にツッコんでもらえば笑いが生まれるのだが、若林がいないのでどうにもならない。ポンコツにさえなれないポンコツ未満のポンコツだった。ただの筋肉ダルマである。

【なかやまきんに君】2.2点

筋肉の分だけ春日より加点。

【ハチミツ二郎】(東京ダイナマイト)2.3点

太マッチョという名目だったが、脱いだ時の体が汚かった。

【浜谷健司】(ハマカーン)1.6点

有象無象。この出来では「THE MANZAI」をとっても伸び悩むのは必然だろう。

【宮地謙典】(ニブンノゴ!)1.8点

枯れ木も山の賑わい。

【レイザーラモンHG】(レイザーラモン)1.9点

例のレザーの衣装とグラサンを身に着けていないHGを筆者は初めて見たのだが、ただの爽やか筋肉だった。無論、褒めてはいない。

ハードゲイキャラ自体も飽きられているので、だからハードゲイに戻れということではないのだが、一つだけ確かなのは、今のままではどうにもならないということである。

【宮迫博之】(雨上がり決死隊)2.5点

もっと、前に出ていい。少し手抜きだった印象。

【蛍原徹】(雨上がり決死隊)0.7点

とくになし。

【田中卓志】(アンガールズ)3.1点

総論で記した通り、筋トレマシーンに翻弄されるガリガリのキモ男という立ち位置。ムキムキの連中との対比でズレを生み出して笑いを担っている。キモさからの笑いは十分に生み出せていたのでこの点数だが、アメトーークでは田中のキモさは散々笑いの題材にされているので、筆者はもう飽きている。

あと、田中も十分自分の役割は分かっているのだが、そのために却ってわざと動きや表情のキモさを自分で足しているのが鼻につく。もっと、自然にやってほしい。

それと、キモささ出しておけばいいのだと考えているのか、あまりしゃべらなくなっているのも気にかかる。話芸でも貢献できればもっと伸びるはずなのだが。

【KABA.ちゃん】1.3点

女性タレント枠。

従前はオネエキャラだったのだが、性別適合手術を受けることを公表したことも影響しているのか、今回は「女」が出過ぎていた。

オネエキャラのおもしろさはオネエキャラのみに許される図々しい行動の数々なのだが、「女」が出たためにマッチョたちに遠慮してしまい、控え目な振る舞いに終始していた。昔のKABA.ちゃんだったら、所構わず触るとか抱きつくとかキスするとかができていたはずである。そしてそれが、笑いを生み出していたはずである。

しかし、そういう図々しさを笑ってもらうというのは、完全に「体は男性で心は女性」というKABA.ちゃんのアイデンティティを嘲りの対象にすることに等しいので、自分のアイデンティティを優先するか、それともあくまでキャラクターを笑ってもらうか、どちらの道を選ぶは本人が決めるべきことである。

KABA.ちゃんは、性別適合手術を受ける道を選択したということなので、笑われるのをやめて自分のアイデンティティを堂々と表明していくのを選択したということだと思われる。それならそれでいい。

ただ、先述の通りそちらの道を選ぶとテレビタレントとしての強みやキャラクター性は全く失われてしまう。それも分かったうえでの選択だと思うので、相当の覚悟を持ってのことだろう。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。