<めちゃイケ「ガリザップ」企画>番組改善が本気なら中途半端な迷いは捨てよ


高橋維新[弁護士]

***

2015年11月7日放映のフジテレビ「めちゃ×2イケてるッ!(めちゃイケ)」の企画は、以前も放映したことがある「ガリザップ」の2回目である。

以前も筆者はボロクソに書いたことはあるが(http://mediagong.jp/?p=9744)、今回も性懲りもなく「ガリザップ」である。「ガリザップ」の問題点を以下に、簡潔にまとめる。

  • 基本的には飲食店の紹介とゲストの告知を行うだけの陳腐なバラエティである。
  • おもしろいのはガリタの食いっぷりだが、視聴者はもう飽きている。
  • ひたすら食べるという苦行はリアクション芸につながり得るが、矢部もゲストもそういう芸をやらない。

今回は、俳優・鈴木亮平をゲストに迎えての「ガリザップ」であり、彼も主演映画の告知を抱えていたので、根本的な問題は解決していない。ただ今回は前回の放送と比較すると(そしてそれ以前の「ガリタ食堂」と比較しても)幾分改善が見られ、上記の問題点の排除が意識されていた印象を受けた。

まず、視聴者が飽きているガリタの食いっぷりそれ自体はあまりフィーチャーされていなかった。確実におもしろい場合のみに前に出てきた印象である。

次に、ナイナイ矢部が一定のリアクション芸をしていた。1店目で見せた目を見開いての呆けた表情や、その後の「飲めましぇ~ん」や「キビシー」といった先輩芸人のギャグなどである。役者の鈴木は流石に何もやっていなかったが、芸人・矢部が従前の「ガリタ食堂」「ガリザップ」よりは芸人としての仕事をしていたのである。

そして、全体的には「ライザップのパロディコント」という側面が意識して押し出されていた。このコントの主役は、インストラクター役のナイナイ岡村である。

岡村は、従前の「ガリタ食堂」や「ガリザップ」では基本的にロケに随行しているだけで、手持ち無沙汰感がどうにも拭えなかったのだが、今回はこのインストラクターというコントキャラクターを演じていたのである。

このコントの核となるのは、本来顧客を痩せさせるために付き添ってくれるインストラクターという存在が、同じような指導・助言を通して顧客を太らせようとしているというズレであり、これがボケになっている。岡村は、本家ライザップのトレーナーのように、「太る」という目標に反する行動をとった矢部や鈴木を厳しく咎め、辛そうにしていれば叱咤激励する。

本来テレビ的な設定でしかない「太る」という目標に厳しく一途に取り組んでいるというズレが笑いを生むのである。要は、笑いの主軸を、ガリタの食いっぷりから岡村主役のコントに移した格好である。

この他にも、鈴木と似ていると評判の飯尾和樹(ずん)を鈴木の代役として立てたり、「さんまのまんま」のキャラクターのまんまちゃんや加藤の知り合いの飲食店店主と絡むコントも行われていた。

これらの試み自体は評価するが、結果としては全体的に中途半端である。

まず視聴者には本家ライザップのインストラクターがどのような言動をしていて、どの程度厳しいかがあまり伝わっていないので、岡村がそれをなぞった言動をとっても正直ピンと来ない。言い換えれば、本家ライザップがどのようなことをやっているかというフリが足りないということである。以前の放送でライザップのインストラクターがどのような言動をしているかという部分は放映されたこともあったが、ほとんど印象に残っていないので、それだけでは足りない。

ボケも、中途半端である。「めちゃイケ」では「真面目な表情で無茶苦茶なことをやらせようとしてくる人」のコントはよくあるのだが、岡村はコントキャラクターとしての見た目も中途半端であるし、矢部や鈴木への叱咤激励も密度が低い。

もっと声を出して、もっと身体的にもガッツリと2人に絡んでいかないと、「真面目なインストラクターが特に意味もなく人の限界を超えて物を喰わせようとしている」というコントのズレが際立たない。そもそも、岡村一人では密度が足りないので、インストラクター役に加藤や濱口もつけてやった方が分かりやすくなったのではないかと思う(インストラクター役としてはガリタもいるのだが、素人なので食っているだけであって、コントに加担してはくれない)。

ちょうど「フジテレビ温泉」「突然熱湯コマーシャル」「フジテレビ警察」のような構図である。そうなると岡村の衣装やメイクも、これらのコントのように分かりやすく目立つボケキャラ風にしてやった方が、ムチャクチャさが浮き上がってくるというものである。

矢部のリアクション芸も、単体で見ても全体的に中途半端なのだが、肝心のインストラクター役の動きや絡みも上記のように中途半端なので、余計に際立ってこない。矢部が苦しんでいる中でインストラクター役がムチャクチャな要求をしてくれば、矢部のリアクションももっと輝いたはずである。

無論、実際の飲食店の店舗を利用してのロケになるため、岡村に加えて加藤や濱口まで用意して無茶苦茶をやらせるのが(お店のスペースやキャパシティ的な意味で)難しい場合もあろう。それを撮影するとなると尚更である。だとすれば、スタジオのような広い場所で物を食わせるというのも一つの選択肢になってくる。

ただこういう形で分かりやすくしても、肝腎の「ムチャクチャな要求」の内容が「物を喰わせる」という地味な画にしかならない。突然熱湯コマーシャルの熱湯風呂のようなビジュアルのインパクトがないため、岡村・加藤・濱口にムチャクチャをさせてもあまり映えない可能性があるのである。

実際にどうかは撮ってみないと何とも言えないが、そこまでやって微妙だったら、「ガリザップ」という素材それ自体がその程度のものだということでしかないので、「ガリザップ」をやめるしかない。

なお、「ガリザップ」の合間に岡村がE村Pというスタッフに扮して矢部と絡むコントも放映されていた。岡村のE村Pはそれだけで十分な面白味があったが、視聴者にはE村Pの事前情報が伝わっていないので、あまりハネなかった。

これも、フリが足りないので、内輪ネタと言われてもしょうがない出来でしかなかったということである。二度目をやるなら、事前に本物のE村Pを見せてほしいところである。

 

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.
高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。