「とんねるずのスポーツ王は俺だ!」は録画してCMを飛ばしながら見るぐらいでちょうどいい


高橋維新[弁護士]

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2016年1月2日放映のテレビ朝日「とんねるずのスポーツ王は俺だ!」は年始の風物詩になりつつある大型特番だ。とんねるずが、色々なスポーツ選手を集めて、「ガチ」(という触れ込み)のスポーツ対決を行う企画である。

今回は、5時間スペシャルであり、錦織圭とチリッチを迎えての「テニス対決」、ハリルJAPANやなでしこJAPANの選手を集めての「キックベース対決」、侍JAPANの選手との「リアル野球BAN対決」、石川遼・松山英樹ほかを交えての「ゴルフ対決」の4本立だ。

この番組は、人気番組と言っていいと思うが、はたして何がおもしろいのだろうか。

プロのスポーツと、お笑いとは、当然ながら種類の異なるエンターテインメントである。プロのスポーツは、鑑賞型のエンターテインメントとして見た場合、「エキサイティング」(興奮)や「ムービング」(感動)に主軸を置いたものになる。

当然そこでは真剣勝負が志向され、プロの選手が織りなす高い技術やハイクオリティなプレーを見る側は望んでいることになる。そして、これはお笑いのエンターテインメントとは基本的に真逆の方向を向いている。

笑いは、ズレから生まれる。「ホームランを打つ!」と言って内野フライに倒れてこそ、「ホールインワンを決める!」とぶち上げた後にダフってこそ生まれるのが「笑い」である。もちろん、真剣なスポーツでも生まれることもあるが、その場合は「マジの失敗」が起きているということになる。それは、偶然の産物である。

偶然に依存した笑いは、作り手としては不安になるので、笑いに重きを置く場合は当然「わざと失敗する」ということが志向される。この「故意の失敗」を事前に台本まで考えたうえで撮影すればコントになるが、それは真剣勝負とは全く対局の位置にある世界である。

他方で、「故意の失敗」を偶然起きたように装って撮る手法もある。それだと真剣勝負に「見える」映像の中で笑いを生み出すことになるが、それは普通「ヤラセ」といって忌避される手段である。

さてこの番組は、スポーツ選手が出てくる点を捉えれば「真剣勝負」のエンターテインメントとしても作れるし、芸人・とんねるずに重きを置けば「笑い」のエンターテインメントとしても作れる。そして、どちらかといえば、真剣勝負の方に重きが置かれている。

真剣勝負の中で数々生まれるプロのスーパープレイ(今回の放送だと、錦織のエア・ケイであるとか、遠藤の正確なキックとか、中田翔のホームランだとか、石川や松山のホールインワンに近いショットだとか)に感動するのがこの番組の主要な見どころである。

お笑いや、お笑い寄りの演出は、皆無ではないが、あくまでオプションに過ぎない。とんねるずの2人は時折おもしろいことを言う。石橋に顕著だが、大口を叩いておいて実際には大したことができないというパターンも間々みられる。スポーツ選手にもお笑い寄りの演出に協力しているのではないかと思われる行動もあった。例えば、とんねるずとの勝負を興行として成り立たせるために、力をセーブしているのではないかと思われるようなプレーである。

また一番「おもしろい動き」をして然るべきとんねるずも、言動自体には前述の通りお笑い寄りのものが見られるが、勝負自体には真剣に望んでおり、わざと空振りするというような行動は見られない。

筆者は芸人である以上もう少し笑いを入れていいと思っているが、この点からしてもこの番組がプロスポーツ選手のスーパープレーを楽しむ「エキサイティング」「ムービング」なエンターテインメントを志向していることは明らかである。

すなわちこの番組は、エンターテインメントの種類としては、プロスポーツそのものと同じということである。違うのは、生のプロスポーツと比べると、見るべき・楽しむべき場所がギュッと編集・凝縮されているということであろう。

この手の番組では、そもそもスタッフによって編集がされ、スーパープレーの部分だけが切り貼りされるうえに、スーパープレーを生むべき状況が事前にスタッフの手によって作り出される。ゴルフ対決でホールインワンのみを狙ってひたすら球を打ち続ける対決などはその典型例である。そのため、視聴者は美味しいところだけをつまみ食いできるのである。また、スーパープレーそのものについても、「生」では到底できないクオリティでの解説を施すことも可能である。

そういう意味では、美味しいところだけ編集で取り出した「スポーツニュース」にも似ているし、特番の時期に濫発される「スポーツ選手に色々なチャレンジをさせる番組」にも似ている。

そして、後者の特徴として、やたらと煽りやCM跨ぎの演出が多く、テンポが悪いということが挙げられる。この番組も例外ではなく、やたらCMを挟むため、録画したものを、CMを飛ばしながら見るぐらいでちょうどいい。

スポーツ全般が好きで色々なスポーツ業界にコネクションを持っている石橋がいるからこそ実現するキャスティングもあるだろう。普段からスポーツ選手との絡みが多いとんねるずだからこそ、選手たちの自然な言動が引き出される部分もあるだろう。

ただエンターテインメントとしては、まだまだ「凝集」が足りない。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。