<デーブ・スペクターが「サンジャポ」で本音>芸能界の汚い裏側を見せてしまったジャニーズ事務所とテレビ局の愚


高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

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「ショウほど素敵な商売はない」(There’s No Business Like Show Business.)

なぜかというと、それは「ショウは夢を売る商売」だからだ。

「ショウマン=芸能人」は夢を売ることの出来る唯一無二の商売なのに、今回の SMAP解散騒動は、その芸能界の暗部をまたしても垣間見せてしまったという意味で罪は深い。自分たちが所属するショウと言う分野に与えてしまった悪影響はとてつもなく大きい。

今の日本で芸能界と言えば、それはテレビの世界のことである。舞台やコンサート、興行など、他にも芸能界と呼ばれれば所はあるが、そのほとんどは衰えたとは言えテレビである。ショウを目指す人物はテレビで名を売って、一人前のショウマンになる。その道筋しかないと言っても過言ではない。

テレビという大舞台に進出するには芸能プロダクションに所属することが不可欠である。弱小プロダクションからたたき上げる方法もあるが、テレビ局に影響力のある大手プロダクションに身柄を預ける方が近道なのは誰でも分かることだろう。

1月24日(日)「サンデー・ジャポン」(TBS)レギュラーコメンテーターのデーブ・スペクターがSMAPの解散騒動及び生放送の謝罪会見についての次のように発言した。

「言っていいですか? 世間的に違和感があると思いますよ。でも(報道しているのは)全部スポーツ新聞や週刊誌だけなんですよ。日常的に(SMAPを)使っているからテレビ局がいちばんパイプあるのに、一切独自取材してないんですよ。そういった意見っていうか声がたくさんあるのに、なんか違和感あるんですよね」

「これだけデカい芸能ニュースなのに、スポーツ新聞は別に直接関係ないんですよ。テレビ局いちばん関係あるのに、『自分たちでこう調べました』が一切ないんですよ」

「日本の芸能界と事務所、テレビのあり方がすごく浮き彫りになっちゃった」

よく言った、デーブ・スペクター。しかも、筆者も30年来のつきあいのあるデーブの性格を考えると、至極抑制の効いた、よく考えられた、常識人としての発言である。しかも、インパクトのある発言だ。

なぜインパクトがあるのか。その理由は簡単だ。誰もが思っているのに誰もが何かを気にしてテレビでは言わなかった意見を言ったからである。

報道や情報の番組では通常、事前取材と称して、コメンテーターがどんな発言をするかを聞いておく。「レイプの被害者のほうにも、隙があるんですよ」と言った「不規則発言」を予防するためである。もちろん、番組の流れを阻害しないように、公平中立を保つようにと言った目的もある。

しかし、生放送ではこれを防ぎきれない。本当に言いたいことは、打ち合わせでは言わない、と言う方法をとることが出来るからだ。

「報道ステーション」での古舘伊知郎氏と古賀茂明氏のバトルは記憶に新しい。あれは、古館氏がメイン司会者としての仕切りのメンツを潰されたことに起因するバトルだ。

デーブの発言は打ち合わせにない「不規則発言」だったのか。「サンデー・ジャポン「という番組の立ち位置を考えると、影響の少ないガイジンであるデーブに言わせよう、という規定の方針だったようにも考えられる。

政治家に聞きにくいことは外国人記者クラブで聞いてもらおうという姑息な考えと似ている。だが、番組を見る限りこれは、「不規則発言」であったように思う。テレビ芸能界に精通している、テリー伊藤も太田光も西川史子も絶句した。

「不規則発言」を打ち消す役割としては日本一力量を持っている田中裕二も二の句が継げない。

もう一度、デーブ・スペクターの発言を引用する。

「言っていいですか? 世間的に違和感があると思いますよ。でも(報道しているのは)全部スポーツ新聞や週刊誌だけなんですよ。日常的に(SMAPを)使っているからテレビ局がいちばんパイプあるのに、一切独自取材してないんですよ。そういった意見っていうか声がたくさんあるのに、なんか違和感あるんですよね」

スポーツ新聞はすべて「よかったよかった丸く収まった」と、ジャニーズ事務所側によった論調である。

そして、日本のテレビ局には芸能ジャーナリズムと言った健全なモノは存在しない。きちんと宣伝情報の取材に来てくれるワイドショーにはおつきあいで特ダネを流す。ふだんあまり、芸能情報を扱わない番組にはやりたいときでも取材許可が出ない。

ギブ・アンド・テイクの世界である。さらに芸能プロダクションの都合の悪い面を取材するにしては今の芸能プロダクションは力を持ちすぎた。

芸能スキャンダルやゴシップは下卑ているので扱わないほうが良いという考え方の人もテレビ局には多い。でもその人たちも、芸能スキャンダルが時に視聴率を稼ぐことは知っているので大きな声にならない。

テレビ局は報道、情報、ドラマ、バラエティと利害が相反する部署を同時に運営している矛盾を抱えている。ドラマ、バラエティは出演者のスキャンダルは報じて欲しくないが、宣伝はして欲しい。

情報部門は宣伝でもいいから有名出演者にも出て欲しいので及び腰になる。報道は犯罪を構成しない場合、芸能スキャンダル自体を価値のないものと思っている。テレビ局に大きな影響力を持っている広告代理店はスポンサーの顔色だけを窺っている。

冒頭の「ショウほど素敵な商売はない」に戻れば、ドラマは面白かった、バラエティは腹の底から笑えた、だけでよいのではないかと考える。芸能人は厳しく律して決して裏側や人生を切り売りする商売をやってはならない。

なにしろ、夢を見せられるほうとしては「夢に見せたくない裏側があることは知りたくもない」のだ。

 

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