<ネタ垂れ流し?「ENGEIグランドスラム」>ナインティナインがいないところでネタを別撮りしても面白くないだけ


高橋維新[弁護士]

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2016年2月13日放映のENGEIグランドスラムについて。

今回も単なるネタの垂れ流し番組だったが、その点については過去の放映回に対する筆者の感想記事を参照いただきたい。
今回一つ追加で言いたいのは、司会のナイナイがいない場でネタを撮っている芸人が相当数いたということである。見ればすぐ分かるが、ナイナイと別撮りになっている芸人は、ネタ前やネタ終わりのナイナイのコメントのシーンがないうえに、司会席の方向が不自然なほど映らない。

まあ、スケジュールの都合なのだろうが、そうやって別撮りが増えるとナイナイとの絡みや芸人同士の絡みができなくなり、ネタの垂れ流し番組という側面がますます強くなってしまう。筆者としては避けてほしいところである。

全体的な感想はこれぐらいにして、あとは個々のネタの寸評を記していく。

1.トレンディエンジェル
トレンディエンジェルの漫才は、ハゲと絡めたダジャレみたいなボケが多く全体的にしょうもないのが問題である。今回もメインはその手のボケだったのは確かだが、他の種類のボケも混ざってきていたので改善の兆しはある。

2.ロバート
「小学生の版画にありそうな表情」を秋山と馬場が自分で再現するというネタである。筆者にはそもそも肝腎の「小学生の版画にありそうな表情」というものがピンと来なかったので、無感情で見てしまったが、スタジオの客にはウケていたので筆者が分からなかっただけだろうか。ただ、この観客も秋山の勢いと表情でなんとなく笑っただけの可能性はある。

あと、山本のツッコミがうるさいうえに大根である。もう少し落ち着いて、ちゃんと叱る芝居をしないといけない。

3.ナイツ
MCの岡村にハマったからか、「こう見えても」を「肛門見えても」と言うボケを押し過ぎである。
あとはいつものナイツだった。

4.ドランクドラゴン
ロバートに似ているのだが、塚地が扮する人物の強烈なキャラクター(ロン毛に口ひげで、道着を着込んでいる)で押してくるタイプのネタである。この手のキャラクターで押すコントの問題点は2つである。

第一に、風貌や声といったようなその人が持つ第一次的な情報からしてウケ狙い感が強くなり、こちらが興醒めしてしまう。
第二に、動きや表情や言い方のボケが主になってしまう。この手のボケは、大体やり尽くされていて何を見ても既視感が拭えないのである。人間、それも芸人ができる動きや表情や言い方には限界があるので、あまりパターンがないのである。

もう少しキャラクターのウケ狙い感を減退させる見た目にしたうえで、もっと言葉(の内容)のボケを増やしてほしい。

5.もりやすバンバンビガロ
客と絡むジャグンリグのネタ。ツカミの「お手玉をしているリンゴをお手玉の途中でかじっていく」というくだりはかじりすぎで少し汚かった。
メインは、客に輪投げ用の輪などを投げてもらって、それを一輪車を運転しながら自分の顔に通すというネタだったのだが、それを失敗することで笑いにつなげていた。ただ成功したら成功したで感動は生み出せるので、どっちに転んでもエンターテインメントにはなる。
失敗しても笑いにつながるのは、お笑いの舞台でこのネタをやっているからというのもあるが、それ以上に本人がヒョロガリノッポに甲高い声という強烈なフラを持っているからである。だから、失敗が滑稽になるのである。
すごくない手品をやって笑いをとるマギー司郎にも似ているが、マギー司郎にはここまでストレートなフラがないため、長い間「すごくない手品」をやって、自分がそういうことをやる人だというキャラクーを観客に植え付ける必要があったと推察する。そういう「下積み」を経ずに出会って1回目から客に笑ってもらえるのはやはりフラの為せる技である。

6.ハリセンボン
普段ツッコミの春菜が強烈なボケキャラを演じるコント。
こちらも裏返った声にお下げ髪という分かり易いキャラクターであり、問題点は全てドランクドラゴンと一緒である。あと、はるかはもっとツッコミの演技力を高めないといけない。

7.アンジャッシュ
家が燃えている男(児島)と同性愛に目覚める男(渡部)の掛け合いコント。
家が燃えているというのは、冒頭にナレーションで説明が入るだけなので、もっと自然なフリにしないと視聴者が「何かあるな」と勘繰ってハードルを上げてしまう。東京03のフリのように、自然な流れで児島の家が燃えているというのを視聴者に分かってもらう工夫が必要だろう。それと、自分の家が無事だと信じている児島がそれを前提とした発言をするたびにナレーションで「家が燃えています」と入り、これがツッコミの役割を果たしていたのだが、もっと言外の手段にした方がいいと思う。加えて、ずっと「家が燃えています」の一本調子だったため、もう少しパターンが欲しい(近隣住民の発言を流すとか、消防車のサイレンを鳴らすとかいったものが考えられる)。
あと、同性愛に目覚める男のくだりは全然家が燃えているという設定に絡んでこなかったので、コントが完全に前後半に分かれてしまっていた。アンジャッシュなら両者が複雑に絡み合ったもっと完成度の高いホンが作れるはずである。

8.ロッチ
矢部に全部言われたのでノーコメント。

9.バカリズム
陸上の100メートル層で2秒76という常識はずれのタイムを出してしまい、周囲から空気を読めと言うような扱いを受ける選手のコント。
その選手の記者会見という舞台設定になっており、謝罪会見よろしく途中で泣き出す一幕もあったのだが、何も悪いことをしていないのに理不尽に空気を読む(=多数派に合わせる)ことを要求される主人公が少し可哀想になってしまい、笑いを阻害した。ただ、個人差だろう。

10.オリエンタルラジオ
武勇伝をちょこっとやった後に、江南スタイルをモデルにしたと思しき歌を歌っていた。ただの歌謡曲だったというのはナイナイが散々言っていたが、その通りである。

11.千鳥
過去に見たことあるネタ。大悟が途中でアドリブを入れていたが、台本のある部分との溶接が悪いうえに、アドリブ部分は台本のある部分ほど台詞がすらすらと出てこないため、「アドリブがあまり利かない」という印象になってしまった。どうせ入れるなら台本の部分との違いが分からないように仕上げて欲しい。

12.すち子&真也
まあ、舞台演芸仕込みで非常にうまい。ただすっちーが矢部と同い年という事実に多少引いてしまった。

13.海原やすよ ともこ
前回のネタと違い、やすよもともこもボケつつツッコみつつというしゃべくり漫才になっていた。2人ともきちんと舌が回るので安心して見ていられるのだが、あまり内容のおもしろさが伴っていないので、まくし立てて誤魔化している感はある。

14.ハライチ
ハライチのいつものスタイル。何度も言っているが、澤部は、ノっている時に岩井が言った言葉は一言一句使わない方がいい。使ってしまうと、ウルトラマンの歌を作れと言われて歌詞にウルトラマンと入れてしまうのと同じようなしょうもなさが生まれてしまう。歌詞に「ウルトラマン」と入れるのは、ジャリ向けの仕事である。
逆に言うと、台本を作る段階で、岩井が言った言葉を使わないとノれないやつは極力除いた方がいい。

15.テンダラー
ツッコミの白川が45歳だというのを冒頭に紹介して、それが後半に活きてくる台本作りは見事である。きちんとおもしろいのに、売れる気配が一切ないのはなぜだろうか。

16.村上ショージ
この人の芸はよくスベリ芸と言われる。おびただしい数があるダジャレ風のギャグは確かにおもしろいものではないのだが、今回はそれを封印して、普通の漫談をしていた。後半には、漫談をしながら切り絵をやっていたが、結局絵ができないというボケも見せていた。
普通にやれば普通にできる、という印象である。

17.東京03
少し長めに時間をとってしっかりフリを作ってから、それを崩してその崩れをしつこいぐらいに転がすといういつもの東京03である。
今回のはおもしろかったのでいいのだが、崩したあとのボケは基本的にその崩れをひたすらイジるワンパターンな内容になるため、それが合わないと最後まで笑えないのが問題である。

18.友近
筆者の好みには合いません。

それしか言えません。

ただ一言だけ言わせてもらうと、これも強烈なキャラクターで押すコントであって、その意味ではロバートやドランクドラゴンのネタに似ている。しかし、秋山や塚地と違って非言語的なボケばかりで押してくるということがない。

19.ジャルジャル
筆者は、かなり好きである。よくこのネタを思い付いたと思う。
冒頭、10種類のポーズを一つずつ紹介していく部分はフリでしかなく、ここは静かに見ていればいいのだが、微妙に笑っている客がいるのが多少腹立たしかった。本人たちもあそこで笑ってもらおうとは思ってないだろうから、あそこで笑ってしまうとあのネタの笑いのレベルを貶めてしまう。

20.スピードワゴン
井戸田の「出た~」という怒鳴りのツッコミが少し、というよりだいぶ寒い。一世を風靡した「甘~い」に寄せているのだろうが、台本を作っているのだからその台詞が「出る」のは当たり前であって、何をそんなに大袈裟に驚いているのだろうかという感想になってしまう。
小沢の変人っぷりはもっとシニカルに静かに眺めて楽しむものである。井戸田があの感じで対応すると、「この人おもしろいでしょ」と押し付けられているようで、天邪鬼の筆者は少し辟易してしまう。

21.どぶろっく
一言でいうと、女教師に胸をいじらせてくださいとお願いする歌だが、男の欲望は胸をいじるだけで満たされるものではないはずなので、その点だけをずっと歌われてもピンと来ない。なまじあらびき団に出ていた頃のどぶろっくが、もっとストレートに「ヤラせてください」と歌うのを聞いていただけに、尚更である。
ゴールデン用にマイルドにしてしまったのだと思われるが、この手の下ネタは、突き抜けないとおもしろくない。このレベルでしかできないのなら、テレビでネタをやらなくてもいい。

22.品川庄司
まあ、全体的にしょうもなかったのはいいとして、このコンビは庄司がポンコツで品川が賢いというのが世間に知れ渡っているために、台本通り品川のボケに庄司がツッコんでも、見ているこちらはどんどん真顔になってしまうというもっと根本的な問題がある。

23.中川家
実話の部分が長くてテンポが若干悪かった。

24.爆笑問題
前回書いた通り。太田はアドリブでもあれくらいのボケはどんどん出せるので、漫才という形でやるならもっと台本を練らないといけない。いつまで経っても改善しないのは、練った台本が書けないか、手を抜いて練らずにやっているかのどちらかである。

25.西川のりお・上方よしお
最近の時事ネタがこれでもかと散りばめられていたが、結果全ての話題に対する言及が浅くなり、付け焼刃で勉強した印象が拭いきれなかった。すなわち、爺さんが無視して若作りしている感じがして痛々しかった。ベテランならベテランなりにショージ君なみの落ち着きを見せて欲しかった。
あと、のりおは本来もっと無茶苦茶をやる芸人なので、ネタ番組のために時事ネタを仕入れて台本を作るという真面目な部分はあまり見たくなかったというのが正直なところである。

 

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。