<潜在待機児童数171〜326万人>厚労省の試算5万人とはケタ違い?


石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]

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3月23日の東京新聞朝刊によると、塩崎恭久厚生労働相は厚生労働省が待機児童数に含めていない子どもが数多くいるとみられる問題について「(待機児童の)数字の公表の仕方は今後考えていきたい」と、見直しを検討する考えを示したとのこと。

  • 「待機児童」とは何か?―― 政府は、「保育所の入所申込みをしたが、未だ入所できていない児童」と答える。
  • 「待機児童」は何人いるか?―― 政府は「平成27年4月現在で待機児童数は2.3万人」と答える。

総務省の調査では、平成26年10月現在で就学前児童(0~5歳児)は625.8万人。この人数規模に比べて2.3万人というのは、たった0.37%でしかなく、いかにも少な過ぎる。それなのになぜ、待機児童問題が大きな政治的課題になっているのか?

待機児童の定義があまりにも狭いからだ。待機児童は何かと問われたら、多くの人は「幼稚園や保育所に入れていない就学前児童」と答えるだろう。

しかし、政府がこれまで保育行政の対象にしてきた「待機児童」とは、「保育所の入所申込みをしたが、未だ入所できていない児童」でしかなく、それ以外の多くの「保育所の入所申込みに至っていない児童」は含まれていない。

そこで、「保育所の入所申込みをしたが、未だ入所できていない児童」だけでなく、「何らかの保育サービスを必要とする待機児童」(=潜在的待機児童)を数えてみたい。

厚労省の調査によると、保育サービスを受けている児童数として、平成27年4月現在で保育所等利用児童数は233.1万人、平成27年3月現在で認可外保育施設入所児童数は20.2万人、平成27年3月現在で事業所内保育施設入所児童数は7.4万人。
文部科学省の調査によると、平成26年度現在で幼稚園児数は155.7万人。

以上の数値について、就学前児童数から保育サービスを受けている児童数及び幼稚園児数を単純に差し引くと、下記の式より227.2万人となる。

就学前児童数-(保育所利用児童数+認可外保育施設入所児童数+事業所内保育施設入所児童数+幼稚園児)

= 625.8-(233.1+20.2+7.4+155.7)
= 209.4〔万人〕

この209.4万人のうち、保育サービスを必要としない児童もいるので、それを差し引くための試算をしてみる。

児童のいる世帯の平均児童数は平成25年現在で1.70人なので、上記の209.4万人を抱える母親の数は123.2万人。
メディケア生命保険の調査によれば、「未就学児のママの81.6%が何かしらの仕事に就いている状態を希望している」ので、100.5万人(=123.2万人×81.6%)の母親が就業希望を持っていることになる。

この100.5万人の母親が1.70人の未就学児を抱えていると仮定すると、『潜在的待機児童』の数は170.9万人(=100.5万人×1.70)と算出される。

別の算出方法もある。

総務省の家族類型別一般世帯数に関する調査結果によると、保育サービスを必要としている可能性のある世帯を最大限で見積もると、平成22年現在で、「夫婦と子どもの世帯」の385.1万世帯、「男親と子どもの世帯」の1.4万世帯、「女親と子どもの世帯」の21.7万世帯を合わせた408.2万世帯となる。

上記のメディケア生命保険の調査を参考に、「未就学児のママ」の81.6%が就業希望を持っているとすれば、「夫婦と子どもの世帯」の385.1万世帯のうち314.2万世帯(=385.1世帯×81.6%)の母親に就業希望があることになる。これに「男親と子どもの世帯」の1.4万世帯と「女親と子どもの世帯」の21.7万世帯を加えると、337.3万世帯が保育サービスを必要としていることになる。

児童のいる世帯の平均児童数は平成25年現在で1.70人なので、337.3万世帯には573.4万人(=337.3万世帯×1.70)の児童がいることになる。

平成27年4月現在で保育所定員数は247.5万人なので、『潜在的待機児童』の数は325.9万人(=573.4万千人-247.5万人)と算出される。

以上のように、前提条件によって異なる結果が出るものの、私が試算するだけでも複数の方法を見つけてしまう。

最近になって厚労省は、「待機児童」に該当しないケースとして、入所可能な保育施設があるのに他の保育所を希望する「潜在待機児童」が、少なくとも約4.9万人(平成27年度)いることを明らかにした。

だが、上記の私の試算結果は、『潜在待機児童は171万〜326万人」に比べても桁違いに少ない。まだまだぜんぜん数え足りないのだ。

私は最大限の見積りをして計算した。そうないと、最終的な解決策の糸口は見えてこない。保育関連予算にも制約があることは理解できるが、全貌をさらけ出さないと、無知の絶望に襲われる。

原因不明な体調不良より、原因明確な病気の方が、対処方法があるし、気持ちもいくらかでも楽になる。厚労省は、改めて早急に公式見解を示されたい。

 
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石川和男

石川和男(いしかわ・かずお)NPO法人社会保障経済研究所・理事長。1965年、福岡県生まれ。東京大学工学部卒業。1989年、通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー政策、産業保安政策、産業金融政策、中小企業政策、消費者政策、物流・流通政策などに従事。2007年3月、経済産業省を退官。2008〜09年、内閣官房・国家公務員制度改革本部、東京財団上席研究員、政策研究大学院大学客員教授、政府の規制改革会議、行政刷新会議WGなどの委員を歴任。