<『フジテレビはなぜ凋落したのか』著者が指摘>テレビがスクープをとれない原因は蔓延する「横並びで安心する空気」


吉野嘉高[筑紫女学園大学・教授/元フジテレビ・プロデューサー]

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乙武氏、宮崎議員、ベッキー・・・。

世間が騒いでいる「不倫ネタ」に食傷気味ではありませんか?

答えがYESだとしても、スクープを連発している文春などの週刊誌の勢いには脱帽せざるを得ません。一方、新聞、テレビは本来自分たちがスッパ抜くべき甘利明経済再生担当相の「口利き疑惑」なども「文春砲」にやられてしまい、すっかり報道機関としての面目丸つぶれです。

新聞とテレビは、週刊誌の記事に言及しながら「後追い報道」するのがもはやルーティン化していますが、取材力のなさを露呈しているようでカッコわるいです。

ここで「なんで週刊誌にしかスクープが取れないの?」という疑問が湧いてきます。

「記者クラブ」が元凶だという意見があります。ジャーナリストの青木理氏はこう述べています。

最近、週刊誌が元気で、新聞から特ダネがでないのは、記者クラブの弊害の一つではないかと思うんですね。これから経営が苦しくなっていく中で、記者クラブ制度や若い記者はサツ回りから始まるという有り様を考えるべきだろうなと。廃止すべきとは言わないが、抜本的に改革しないとマスコミ不信が強くなってしまうと思います(『BLO「【詳報】岸井氏、鳥越氏らが『日本のメディアの苦境』を海外メディアに訴え~田原氏からは異論も」『BLOGOS』2016.3.24より)

なるほど、一理あります。

筆者も「サツ回り」という記者としての通過儀礼をフジテレビの社会部記者時代にやりました。これをやると報道機関では「記者としての基本」が身についたと評価されます。「サツ回り」は政治部や外信部など花形取材部門への登竜門なのです。

何をやるのかというと、「夜討ち朝駆け」の取材です。たとえば「ホンボシ」(警察関係者の隠語で「真犯人」の意味。記者も使う言葉)をリーク情報から割り出し、スクープとして他社より早く記事にすることを狙います。

スクープといってもこの類のものは、夜回りで捜査員から得た情報を警察幹部に確認して「お墨付き」をもらって報道しているだけです。所詮、記者は捜査機関の掌で踊らされているのに過ぎません。

読者や視聴者なんてそっちのけ。閉じた小さな世界の中でグルグル回りながら速さを競うゲームのようなものです。

このような取材活動では「権力の監視」といったジャーナリズム精神は育まれませんし、甘利大臣のような権力者の不祥事を暴くための取材手法も身に付きません。

ですから、記者クラブ員として承認されるための「洗脳プログラム」みたいな「サツ回り」を報道機関の基礎トレーニングにするのはやめる、それを支えるシステムとしての記者クラブを抜本的に改革する。

今、権力にモノ申さず、横並びで安心する「空気」が新聞、テレビを覆いつつあります。特にテレビです。下手に政治家に楯突いたら、社内で冷や飯を食わされるかもしれないという「空気」に委縮している社員も多いはずです。こんな環境でスクープ狙えますか?

ここは報道機関の「幹部」の出番です。自分たちは「権力の番犬」だから吠えたっていいという編集方針を改めてきちんと現場に伝えるべきでしょう。

要はジャーナリズムの原点に戻ること。そうしないとスクープへの道のりは遠いでしょう。

 

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吉野嘉高

吉野嘉高(よしの・よしたか)広島県生まれ。1986年フジテレビ入社。情報番組、ニュース番組のディレクター、プロデューサーを歴任。2009年、フジテレビを退社。現在、筑紫女学園大学現代社会学部教授。著書に「フジテレビはなぜ凋落したのか」(新潮社)など。