<熊本地震よりもTPP審議?>安倍首相に学ぶ「質問をはぐらかす方法」


保科省吾[コラムニスト]

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この、非常時に何を「茶番」をやっているのか、と怒りさえ湧いてきた。

「茶番」とは、底の見えすいた、下手な芝居のことである。芝居というのはフィクション・ドラマということである。そういう意味では4月17日の衆院TPP特別委員会で行われた以下に紹介する質疑を「茶番」と呼ぶのは、真剣に芝居をやっている役者さんたちに失礼かも知れない。

朝9時過ぎ、質問に立ったのは元外務官僚で比例九州ブロック・民進党の緒方林太郎衆院議員。答えるのは安倍晋三首相である。

緒方議員は、衆院TPP特別委員会で、「TPPの審議を行うより先にやることがあるのではないか」という趣旨で質問する。質問の最中に、九州の地震速報が出る。(以下、質疑内容はNHKの国会中継より)

<緒方>「今朝行われた国会対策委員長会議で、我々は今、TPPの審議を行うべきではなく(中略)総理には(現場で震災対策の)陣頭指揮を執って欲しいと、心から考えています。仮に国会審議を行うにしても、災害対策予算委員会会議を行うべきで、TPP審議は落ち着いてやるべきです。国会対策委員長会議では、TPP審議をやらせて欲しいと総理から強い要望があった。今日は扱うテーマが違うのではないか。安倍首相は、なぜ、このタイミングで、TPPの審議の審議をしたいとの強い意向を持っているのか。国民、被災者に説明して欲しい」

この質問はもっと長いもので、それ自体が回りくどいが、聞きたいことは、

  1. 安倍首相は、いま、TPPの審議をしたいと強く思っているのか。
  2. ナゼ、このタイミングでTPP審議をしようと思っているのか。

この2点である。短く答えられそうな質問だが安倍首相は見事に答えをはぐらかす。

<安倍>「この度の地震により、現時点で、42名の方がお亡くなりになり、1000名を超える方々が負傷されるなど、極めで甚大な被害が発生しています。亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、被災された方々いたいし、心よりお見舞いを申し上げたいと思います。発災以来、自衛隊、警察、消防の方が、医療部隊の方が、昼夜を分かたず、救命活動に従事しておられます。しかしながら、行方不明の方々がいらっしゃいます」

通常なら、「そんなことはニュースで知っている」とヤジが飛んでくるあろう。しかし、この状況でヤジを飛ばすのは不謹慎とのそしりを受けかねない。それがイメージダウンだということは国会議員の皆さんもよく知っているようで、ヤジはない。

<安倍>「(中略)避難所等で不安な時を過ごしておられる方がいらっしゃいます。水や食料や、医療の提供を始め、生活物資の支援をするための被災者生活支援チームを結成したところでございます」

もちろんこれは重要なことだ。だが、本来の質問の答えはなっていない。

<安倍>「さて、本日の委員会でございますが、委員会は議会にお任せしています。TPPの協定、及び、関連法案につきましては我々も重要だと考えたのです。どのような案件をどのように議論していくかは国会にお決め頂き、政府として説明責任を果たして生きたいと思います」

安倍首相の答弁から、質問の回答として分かったことはなんとも少ない。

「安倍首相は、いま、TPPの審議をしたいと強く思っているのか」という質問については、「国会が決めた三権分立にしたがっている」という回答。

「ナゼ、このタイミングでTPP審議をしようと思っているのか」については、「TPPの審議も同時並行でやらせて欲しい」と言うこと、そして「国会を停滞させてはならない」と言うことのようであった。

国会での質問は事前通告され、それを官僚が作文するのが通例である。この仕組みを知ると、国会でのやりとりに「茶番」を感じる人は多いはずだ。この仕組みも何とかすべきだろう。ところで、今回の国会中継を見て学んだことは、「質問をはぐらかす技法」だろう。このテクニックは一言でまとめることができる。

「最初にYES、NOを答えない」

 

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メディアゴン 編集部

メディアゴン編集部(めでぃあごんへんしゅうぶ)2014年5月末日、東京生まれ。メディア批評・メディア評論に特化したメディア専門家によるメディアニュースサイト。キー局プロデューサー、ディレクター、イベントプロデューサー、放送作家、大学教授、評論家、ゲーム作家、弁護士・・・などなど、メディアの第一線で活躍する人材が活動中。