「水素水ブーム」は楽して健康になりたいという需要?[茂木健一郎]


茂木健一郎[脳科学者]

***

先日、ツイッターのトレンドに「水素水ブーム」というのがあったから、そのまとめを読んでみたら、おもしろかった。私はもちろん懐疑派である。

あれは2、3年前からだろうか。周囲でも時々、「水素水というのがあってね」と目を輝かせて語る人を目撃するようになった。私は、話を聞いていて、「へえそうですか」と否定も肯定もせず、スルーしていた。

アルカリなんとかとか、プラズマなんとかとか、健康にいい、というブームが起こる度に、私は、「へえ、そうですか」と聞き流して、本気にしたこともないし、やったこともない。

なぜそうなのかと考えてみた。

ひとことで言えば、「生命は複雑である」ということにつきるのかもしれない。水素水にせよ、アルカリなんとかにせよ、プラズマなんとかにせよ、たとえ少々の効用があったとしても(ないケースが多いのだろうが)、それだけで、健康の問題が解決できるとはとても思えない。

【参考】メディア全盛の時代に考える「ほんとうに大切なことは記録できない」ということ[茂木健一郎]

生命という複雑で非線形なシステムに作用する時に、水素水とか、アルカリなんとかとか、プラズマなんとかというパラメータ設定が有効であると、直感的に思えない。むしろ、走ったり、眠ったりする方がよほど適切だと私には思える。

私の健康維持法は何か、と言えば、無理せず走る、ということにつきる。走ることの効用についてはすでに多くの研究があるが、その生体に対する作用は複雑かつ多様で、単一の効用で記述しきれるものではない。

水素水とか、アルカリなんとかとか、プラズマなんとかが、走ったり、あるいは眠って十分な休息をとる、ということ以上に生体にいいとは、とても思えない。だから、そのような「健康商品」について、私は絶対零度くらい、冷淡である。

繰り返し「健康商品ブーム」がおとずれるのは、人々の心の中にそのようなものを求める強い傾向があるからだろう。私は、そんなことより歩いたり走ったりすることをオススメするが、どうも、楽して健康になりたいという需要が世の中にはあるようだ。そんなの無理だと思う。

以上は、あくまでの「個人の感想」です。もしよろしければご参考までに。

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.

茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。