マイナンバー賛成派が反対派になってしまう理由


保科省吾[コラムニスト]

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「便利なら良いじゃないか」と、筆者は当初マイナンバー制度には特に反対しておらず、むしろ賛成派だった。筆者とて、マイナンバーが、かつての住民基本台帳カードをソフトに言い換えたもので、「国民総背番号制」と揶揄されて嫌われた制度のなれの果てだということは知っている。もちろん、国家が国民の自由を縛りかねない制度であることも知っている。権力が必ず腐敗することも知っている。

それでも「便利さ」には負けてしまうのが人間だ。政治屋は信用できないが、行政は少しは信じられる。少なくとも悪用はしない(はず)、漏れないように最大限努力する(はず)と信じようとしていたからだ。もし信用できるのであれば、「いいじゃないの」と言うのが「便利さ」に負けてしまう筆者の考えであった。

ところがその考えは一瞬に変わった。その経緯はこうだ。

マイナンバーの個人カードができあがった知らせが来た。当然、封筒の中に入っているものと思い、開けてみればハガキ状のものが一枚。歩くと15分はかかる近くの役所まで取りに来てくれ、と書いてある。結構めんどくさい思いをして手続きをしたのに、クレジットカードなら郵送なのに、と少しむっとする。

実はデジタルで申請していた妻への知らせが先に来ていたのだが、本人確認のできる運転免許証などを持ってこいとも書いてある。ならば運転免許証をマイナンバーカードにすれば簡単だと思うが、持っていない人はたくさんいるからダメなのだろう。

役所に行くと、特設交付会場が設けられているようだが、まず場所を探すのにてまどう。ようやく見つかって受け取りカードを出すと、係の女性は「予約はありますか」と問う。心の中で「お前は歯医者か」毒づきながら「ないんですけど、どのくらい待ちますか」と返すと女性は「今日はすいているんですけどねえ、30分はかかります」というではないか。

その瞬間、筆者はマイナンバー制度反対論者に鞍替えしてしまったわけだ。

【参考】<施行から半年>ゾンビ法案「マイナンバー制度」で国が合法的ストーカーになる?

故あって、地方都市の役所の窓口で、面倒くさい戸籍謄本を取ったばかりだが、その時でさえ10分で発行された。これでは筆者の唯一のよりどころであった「便利さ」も当てにならない。30分といえば、東京都の最低賃金が1時間907円だから、切り捨てでも453円分、筆者の時間を奪っているのである。

しかも、この会場には多くの役所の職員が待機している。彼らにかかる人件費、マイナンバー制度を構築するための制度設計、文書通信費等経費・・・。これらにどれだけの税金が使われていることか。

その日は予定があり、30分も待つ余裕はなかったので、筆者は「もうマイナンバーカードは要りません」と女性職員に告げ、その場を去った。

用事を済ませてから、再び交付会場に向かった。ずっともらわないでいると筆者のカードは役所のしかるべき場所に返納されて、もらうには、さらにしかるべき膨大な苦労が必要になるであろうことに気づいたからである。

さっきの女性職員はまだいた。きっと今夜、仕事が終わった後に「一度、要らないって言ったクセにまた来たジジイがいるのよ」噂するだろう。彼女は筆者の顔を覚えているだろうが、筆者は全く初めての振りをして交付を頼んだ。

まず、色々持ってこなければならない書類を持ってきたかどうかをチェックリストに記入する。しかし、筆者は全部持ってきていない。ハガキに印鑑も押していない。・・・これは致命的だ。

「送ってきた書類をよく読め」といわれればそれまでだが、また出直しかと思い、おそるおそる全部ないことを告げると「今日は大丈夫ですよ。交付できます」という。

おそらく、ここで交付しておかないと事務作業が山のように増えてしまうと言う読みからであろう。出来るだけ交付すべしと言う方針なのだ。筆者のとなりのブースの女性は健康保険証しか持っておらず、他にもう1種類証明書を求められていたが「今日は銀行のキャッシュカードでも良いです」と言われていた。

できあがっているマイナンバーカードの写真と本人の顔を顔認証で照合する。続いて交付の個人ブースで説明を受ける。暗証番号を4種類登録してやっとカードが手元に来た。裏表両方に記載されている個人番号が隠せるようにマスクされた透明のホルダーもくれる。このホルダーを1億2000万枚印刷する利権を得たのはどこの会社なのだろう。

最後に、「これで、明日からコンビニでも住民票などが取れるようになります」と説明してくれた。そうなると、今度はコンビニのセキュリティが心配だ。

 

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メディアゴン 編集部

メディアゴン編集部(めでぃあごんへんしゅうぶ)2014年5月末日、東京生まれ。メディア批評・メディア評論に特化したメディア専門家によるメディアニュースサイト。キー局プロデューサー、ディレクター、イベントプロデューサー、放送作家、大学教授、評論家、ゲーム作家、弁護士・・・などなど、メディアの第一線で活躍する人材が活動中。