<リオ五輪サッカー>ナイジェリアに学ぶ『タフ』さ[茂木健一郎]


 

茂木健一郎[脳科学者]

***

リオ五輪のサッカーで、日本と対戦したナイジェリアのタフな強さが印象的だった。早めに現地入りして調整していた日本に対して、ナイジェリアはなかなか飛行機に乗れずに、試合開始の数時間前にようやく現地入りして、勝ったという。

スポーツでは、もちろん、万全な調整をするのが望ましいが、現実にはそうも行かない場合もある。タフさとは、どんな状況でもパフォーマンスを上げる、そのようなノイズへの強さのことである。

前回の東京オリンピック(1964年)の時、レスリングチームはタフさを育むために夜も明かりをつけてラジオをかけて眠った、と聞いている。本番の喧騒に負けずに集中するには、それくらいの負荷が良いのかもしれない。

有森裕子さん(バルセロナ五輪・マラソン銀メダリスト)にうかがった話だが、小出義雄さん(陸上指導者)は、予想のできない練習メニューをしばしば課した。たとえば30キロ走をした後で、1万メートルのタイムトライアルをやるなどの練習をしたという。有森さんはそれについていった。

【参考】<コレジャナイ>東京五輪公式アニメグッズの絶望的なダサさ

普通に考えれば、タイムトライアルは十分に休息した状態でやるのがいい。しかし、オリンピックの本番では、何があるかわからない。体調が悪いかもしれないし、悪天候かもしれない。そんなときでも力を発揮するには、どんな状況でもベストを尽くすという練習をしておいた方がいい。

勉強も、静かな部屋でやっているだけではダメで、家族がいてノイズだらけの居間で集中できるくらいではないと、タフさが足りない。本番に強くなるためには、少々の雑音に負けずに集中できる力を、普段からつけておいた方がいい。

結局、人生はノイズだらけである。思い切り、条件よく集中できることなど、まずはない。どんなに邪魔が入っても、思うに任せなくてもベストエフォートを尽くすしかない。そのようなことを、今回のナイジェリアチームのタフさから、改めて学ぶことができたように思う。

 (本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.

茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。