少子化時代のリアル?NHKドラマ『プリンセスメゾン』


齋藤祐子[神奈川県内公立劇場勤務]

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単身世帯がひそやかに増え続け、やがては全世帯の半数に迫るのではないか、という日本の未来を予言するのも何だか。

まだ若い女子が一生住み続ける家を探して、マンション購入のために一生懸命になる。ドラマ「プリンセスメゾン」(NHK BS)が何だか不思議で目が離せずにいる。

 それにしてもこのドラマの主だった登場人物たちは、世代に関係なく全員が一人暮らしだ。

単身女性でもマンションを買える、というマンション販売の企画で登場する先輩女性(女性一人でマンションを買った先輩のお宅拝見というモニター企画で登場する)の60代くらいのキャリア漫画家(庭付きの低層マンション在住)や、バリキャリの独身の星と呼ばれるビジネスウーマン(武蔵小杉の豪華マンション在住)はいいとして、マンションを販売するショールームの男性の中堅担当者(高橋一生)もまたビジネスウーマンと同じ武蔵小杉の豪華マンションに一人暮らし。

主人公の若い女子、沼ちゃんは居酒屋で7年も地道に働き携帯電話も持っておらず、雨漏りするぼろアパートに友人を呼んだこともないちょっと風変わりな女の子。当然独身。

その主人公をひそかに応援する30代の曲者派遣社員の理子さん(マンション販売ショールーム勤務)、お気楽派遣社員できらきら系のマリエ(同 同僚)、マリエに好意を持つ同じショールームで働く頼りない若手男性社員と、皆が皆、独身である。

それぞれの等身大の悩みと向き合いつつ、主人公のマンション購入を、やきもきはらはらしながら応援している。オールロケできれいな絵だが、恋愛はじめたいした事件も起こらない、どことなく浮世離れしたこんなドラマが今どきのリアルなのだろうか。

 それにしてもこの主人公、知り合った人たちの一言から少しづつ自分の生活を心地よい豊かなものに変えていこうとする、その初々しさ、ちょっとした小さな工夫が愛らしい。理子ならずとも、なんだか応援したくなるし、手を差し伸べてみたくなる一生懸命さだ。

マンションのショールームのキッチンに飾られていたトマトの缶詰を買ってきて簡単なトマトソースに挑戦したり、きらきら系女子のマリエの部屋にあった洗濯ネットの収納(かわいい小物入れにはいっている)を見習って洗濯ネットをちょっとした収納小物にしまったり。

まじめに一生懸命居酒屋で働くだけで、自分の部屋のカーテンの丈が寸足らずなのも気にしない女子力の低さだから、なんというか伸びしろに期待できる。どうやら両親を早くになくし、天涯孤独でありながら一人で真面目に暮らしている様子なのだが・・・。

【参考】ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の裏切られた設定に期待

そもそも若い女性がマンションを買おうというのは、この頃でこそ「あり」になったがそれでもやはり重い選択だろう。結婚するかも知れないし、親元にいれば給料の大部分は可処分所得だ。

男だって背負うのに躊躇する千万単位の借金を、女の身で、期間限定の派遣社員の身で一生払うのかと考えればきりがない。それでも、まじめに自分の城のためにこつこつと働き、なによりその前に、自分がここでこんな暮らしをしたい、それを守りたいとイメージする。

その過程で私って自分の人生には何が欲しくて、何が必要なのかしらと、もう一度問い始める。そうであるなら、目の前の妻子のためだったり、一人前の男なら持って当然と、あまり深く考えもせず家を買う男よりは、家を買うまでの葛藤は女性の場合ドラマになるということかもしれない。

 はたして主人公はマンションを購入するのだろうか。なんとか手の届くマンションを買う、なんていうありきたりの展開ではなく、新しい人間関係の広がりがある意外な展開を期待したい。

そうでなくとも、少子化で家は余る。きらきらしたマンションを手にいれそこで内向きに自分の好きなものに囲まれるという展開よりも、新しい時代に共感されるなにかがほしい。

人と人とのつながりやぬくもり、高度経済成長や近代化の過程でなくしてきた何か。そんなものをこの浮世離れした癒し系のドラマの後半に期待してみたい。

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齋藤祐子

齋藤祐子(さいとう・ゆうこ) 1984年、筑波大学卒。現在、文化施設に勤務。文化政策や現代美術、落語等の分野に関心が深い。