継続させる秘訣は「常に今、ここ」に没入すること – 茂木健一郎


茂木健一郎[脳科学者]

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創造することには、長い努力の継続が不可欠である。

その際に「自分が継続している」ということ自体に注意を向けると、「まだ長い、こんなにやったのに」と意気消沈してしまう。だから、継続自体には注意を向けないことが正しい。

時間というのは不思議なもので、始めて1時間の1分も、1ヶ月取り組んでからの1分も、1年努力してからの1分も同じ「1分」である。だから、「こんなにやったのに、まだこんなにある」という振り返りは、「1分」自体の本質には影響を与えない。

たとえば、あるプロジェクトを終えるのに500時間かかるとする。もう100時間やったのに、まだ400時間あると思ってしまうとげんなりする。そうではなくて、常に、目の前の「今、ここ」にだけ没入していれば良いのである。

【参考】もったいぶった大人ほど「創造性」から遠い

「今、ここ」に没入することは、言うまでもなく心理学者・チクセントミハイ(1934〜)の言う「フロー」の状態である。1時間目のフローも、100時間目のフローも、1000時間目のフローも変わらない。ただ、今ここに自分を没入させて、振り返らなければ良いのだ。

フルマラソンなどのランニングも同じことで、もう10キロ走った、あと20キロなどと振り返ると辛くなってしまう。そうではなくて、常に、「今、ここ」に没入した状態で走っていれば、いつの間にか距離が積み上げられていく。

勉強も同じだろう。「まだこんなに勉強しなくちゃ」「もうこんなにやったのに」と思うと、嫌になってしまう。

そうではなくて、常に「今、ここ」に没入することだけを考える。すると不思議なことにたくさんの積み上げをいつの間にか達成することができるのだ。

 

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。