絶滅危惧種 「本マグロ」横行する虚偽申告や密漁で価格高騰も


石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]

***

我々日本人は、世界の約8割の本マグロを食する。日本人が今の勢いで食べ続けると、本マグロは寿司屋や食卓から消えてしまうかもしれない。

本マグロとは、「太平洋クロマグロ」のこと。マグロの中でも最高級品で、大間(青森県)のクロマグロが有名。にぎり寿司や刺身として楽しまれている。

本マグロは、密漁や乱獲によって個体数が大きく減少。1961年をピークに、トンベースで今では当時の10分の1にまで減った。2014年、国際機関から絶滅危惧種の指定を受けた。

日本はこれまで、産卵前の小型魚を保護することによって資源回復をさせようとして、30kg未満の本マグロの漁獲量を2002〜04年平均の半分にするとの制限を受け入れてきた。

だが来年、本マグロの流通量が減る恐れが出ている。実は今年、日本では、漁獲量を2002〜04年平均の半分にするとの制限が守られなかった。漁獲高の虚偽申告や密漁が横行し、漁獲量の上限を333.5tも超過した。そのため水産庁は、その超過分だけ、来年の漁獲量の上限を引き下げることを決定した。

【参考】東京都の大半が「原発ゴミの最終処分場」の候補地だ

先月から今月上旬にかけて、食用資源である本マグロの個体数を守るための国際会議が韓国で開かれた。日本、韓国、中国などアジア諸国、米国やメキシコなど10ヵ国が参加した。

資源回復目標として、資源量を2034年までに13万トン程度に回復させる目標を決めた。漁獲枠の拡大については、資源調査で確率が60%を下回れば現在の漁獲枠を削減する一方、確率が775%程度を超えれば枠を増やすことが大筋で認められた。

本マグロ消費大国の日本とすれば、漁獲量が将来拡大する可能性のある提案を受け入れられたのは喜ばしいこと。

水産資源の保護を目指す主な民間団体は、今回の国際会議の結果をいちおう評価している。中には、規制をもっと厳しくするよう求める団体もある。実際に政策を進めていく上では、なんでもかんでも反対!反対!と叫ぶだけの人々は相手にせず、建設的な議論のできる専門家たちの知恵を借りることが大事だ。

環境保護団体のグリーンピースのように異常な偏向姿勢を見せてしまう団体もあれば、今回の例では米シンクタンクのピュー財団のように漁業者の生活面にも配慮したバランスある姿勢を見せる団体もある。

日本人は、今後当面、本マグロを食べる量を少々減らしていくべきかもしれない。資源回復が遅れれば、禁漁や漁獲枠削減によって値段が高騰する可能性も出てくる。

漁業規制当局である水産庁は、不当な漁獲を厳しく取り締まっていくべきだ。 国際合意で定められた漁獲量を守っていかなければ、日本人は、本マグロを食べ続けられなくなるかもしれない。

 

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.

石川和男

石川和男(いしかわ・かずお)NPO法人社会保障経済研究所・理事長。1965年、福岡県生まれ。東京大学工学部卒業。1989年、通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー政策、産業保安政策、産業金融政策、中小企業政策、消費者政策、物流・流通政策などに従事。2007年3月、経済産業省を退官。2008〜09年、内閣官房・国家公務員制度改革本部、東京財団上席研究員、政策研究大学院大学客員教授、政府の規制改革会議、行政刷新会議WGなどの委員を歴任。