<コントは編集が命>「めちゃイケ」岡村オファーの編集は失敗か?


高橋維新[弁護士/コラムニスト]

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2017年10月14日放映のフジテレビ「めちゃ×2イケてるッ!」(以下、めちゃイケ)を見た。今回は岡村隆史オファーシリーズの新作2時間半スペシャルである。

オファー主は三浦大知という踊れる歌手(肩書をなんと言うべきかが難しいが、マイケル・ジャクソンをイメージすると分かりやすい)であり、過去のSMAPやEXILEの時と同じように岡村がダンサーとしてライブに混じるという内容である。

オファーシリーズは、全体に台本がある壮大なコント(めちゃイケが得意なドキュメンタリーコント)だと筆者は考えている。今回のようなダンス企画だと、岡村がオファーされるのはライブの「一部」への出演に過ぎないのだが、本番では他の部分にも乱入したり、やってはダメだと言われていることをやったりして目立ちまくるというのが毎回の流れである。

それに対してオファー主は怒るかと思いきや、喜んで岡村を褒め称え、一人岡村の無茶に憤慨していた矢部浩之(や中居正広)が梯子を外されるというのが典型的な流れである。今回も、大きくはその流れに沿っていた。

オファーシリーズでは、冒頭に矢部がオファー主を発表した段階で岡村がいったん断るものの、実際にオファー主に会った後に簡単に掌を返すのがお決まりの流れである。今回もこの通りの展開だったが、これも岡村のお調子者(与太郎)っぷりを笑うコントであり、台本通りの流れだと思う。

【参考】<「めちゃイケ」は末期症状?>「嘘熱大陸」企画は番組終焉への序章か

本番に向けての練習中にも、岡村がふざけて「やってはダメだ」と言われていることをやったり、それをやろうとしつこくオファー主に懇願したりといったミニコントが挟まるが、これも台本通りの流れだろう。こういうミニコントと岡村の練習模様を放映しつつ、最後には矢部がモニタリングしている本番の映像を流すのが典型的なオファーシリーズの流れである。これらも全て、台本があるのだろう。

流石に台詞の一字一句までは指定されていないと思うし、指定されていたとしても岡村や矢部が忠実にそれを守っているとまでは思わないが、「やってはダメだと言われていることほどやろうとしてしまうお調子者」という岡村のキャラクター(設定)、「それを一歩引いた視点で見て締めるところは締めようとするツッコミ役」という矢部及びオファー主のキャラクター(設定)は、台本で指定されているものだと思う。

オファーシリーズの笑いどころは本番での岡村の暴走っぷりと途中のミニコントにしか出てこないので、笑いが希薄になる(密度が低くなる)。だから、筆者はめちゃイケの企画の中ではそんなに好きではない。

むしろ、真面目にストイックに練習に取り組む岡村の模様をお送りする感動寄りのドキュメンタリーに仕上がってしまってうのがオファーシリーズの常である。ただ、それはもうある程度しょうがないことではないのかと諦めがついている。

しかし、今回はもともと少ない笑い所さえもそんなに笑える仕上がりになっていなかった。ひとえに、笑いどころの前提となるフリが全体的に雑だったのが原因である。

例えば、岡村はライブの最後で全然予定されていなかった「EXCITE」という楽曲(仮面ライダーエグゼイドの主題歌)にショッカー戦闘員のような格好で乱入していたのだが、「岡村が事前に出演を懇願していたものの断られていた」ということは楽曲の直前も直前にナレーションによる説明が簡単に入っただけだった。

「岡村が事前に出演を懇願していたけど断られていた」からこそ、乱入がズレになって笑いを生むのであるから、断られるクダリはこのズレを際立たせて視聴者に認識させるためのフリである。そのためこの「フリ」は、きちんと事前に丁寧にやっておく必要がある。ズレの直前にドーピングのような感じで入れ込むだけではダメだろう。更に言うなれば、フリとボケの間には時間差があった方が、伏線を思い出した視聴者の感動も大きくなるものである。

今述べた点が象徴的なところだが、とにかくフリが薄めでナレーションで済ませてしまう場面が多々あった。以下にいくつか他の具体例を書く。

* 三浦の事務所の先輩であるDA PUMPの登場が唐突である。

結果、ISSAの女癖の悪さをイジるのも唐突で、見ている方としては面食らう。コントのストーリーとして、なぜ岡村がDA PUMPに会いに行ったのかがオンエアを見ているだけでははっきり分からないのである。DA PUMPは最終的に岡村の悪ノリに乗っかる「ボケ役」なので、岡村が三浦に何かやっちゃダメなことを言われた後に、それを無理やり通すために「事務所の先輩の力を使う」という汚い手段に出た、というストーリーならば岡村の与太郎っぷりがよく出るから良かったのではなかろうか。

【参考】<キングオブコント2017>コント界も「保守」と「風」の戦い?

おそらく、岡村がDA PUMPに会いに行ったのは、「本番のライブでMVバージョンのダンスを岡村がやりたくなったから」であり、「そのために世界的なダンサーたちに協力を求める必要が生じたから」というストーリーなのだが、これも非常に分かりにくい。岡村が実際にMVを見て感動し、「これをやりたいな」と言い始める(そして、それを矢部や三浦が無理だからやめろとツッコむ)、みたいな映像をフリとして入れた方が良かっただろう。

* 岡村が当初予定になかった「Cry & Fight」という曲の無音ダンスを踊りたいと言い出すクダリもフリが薄く、ナレーションに頼りすぎである。

自分のパートの練習を終えて帰りかけた岡村が、「Cry & Fight」の練習を始めた三浦たちを見かけて、突然「これもかっこいいからやりたい」と言い出すというような映像が欲しい。

* 岡村が三浦から鍼灸治療院に呼び出されるクダリもナレーションで処理しすぎである。

ナレーターは「ついに岡村が秘密裡に進めていたことが三浦にバレたのではないか」というようなことをしゃべって視聴者の不安を煽るのだが、実際にはただの鍼灸院での施術を岡村に受けさせたかったというというストーリーである。しかしこのネタバラシもナレーションでやってしまうので、笑いも起きにくい。

きちんとやるなら、三浦から呼び出しを受けたの岡村の「マズい」というような表情を見せたうえで、実際には鍼灸院に呼ばれていただけだったということが分かって露骨に安堵するというところまでガッツリとコントとして見せる必要があろう。そこまで時間が取れないならそもそも不安を煽るナレーションやネタバラシのナレーションは不要である。

* ライブ直前に岡村がPURIというダンサーそっくりに扮装しており、ダンサーたちにはバカウケだったのだが、そこに至るまでにPURIがあまりフィーチャーされていたわけではないので、見ている方としてはただ単にヒゲをつけただけにしか見えなかった。

アレをやるならPURIをもう少しちゃんと紹介する映像や、岡村がヒゲをつけたらそっくりであるということを視聴者に分からせる映像をフリとして入れておくべきである。

このように全体的にフリが薄いから、岡村が内緒でダンスを教わっていた先生たちを三浦から隠すミニコントも感情移入がしにくかった。フリが薄いゆえになんで岡村があんなに必死に先生たちを隠そうとするのかが分かりにくいのである。

そのくせ散々フッていたダンシング・ヒーローのダンスはライブではやらないのである。岡村の味方になっていた三浦以外のダンサーが全員でこれを踊り始めることをずっと期待していたのだが、結局何もなく、肩透かしを食らった。

とにかく総評としては、演者は特に悪くないが編集が良くない。フリとボケの対応がチグハグで、ボケはあるのにフリがなかったり、フリがあるのにボケがなかったりの連続である。使うべきところの取捨選択が、きちんとできていない。

おそらく未公開の映像はたくさんあるので、撮っていないということではないと思われるが、そうだとすれば本編から切ってはいけない部分である。もちろん、撮っていないのかもしれないが、それであれば脚本が悪い。次回以降に未公開の映像が放映されていくと思うので、そこを見れば撮っているかどうかはある程度分かるだろう。

オファーシリーズ(というか、めちゃイケ)をずっとやってきた片岡氏もダンサーたちへのインタビュアーを務めていたので、今回の製作に直接関わっているとは思うが、編集は誰がやったのだろうか。昔のオファーシリーズならこの辺は丁寧にやっていた記憶があるのだが。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。