民進党は政党交付金も正当に分離分割せよ -植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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民進党から立憲民主党への移籍者が急増している。当然のことである。民進党の大塚耕平代表が12月17日、三重県津市の講演で、

「『あいつと一緒になるのがイヤだ』とか、また衆院の中で議論が行われているんです。もう勘弁してほしい。」

と述べたと伝えられているが、問題の本質をまったく理解していない。

私は民進党の分離・分割を提唱し続けてきた。その理由は、民進党内に基本政策が真逆の勢力が同居しているからである。そもそも政党とは、基本政策を共有する者の集まりである。国会で多数議席を確保し、政権を樹立する。そして、その基本政策を実現する。そのための存在だ。

背後にあるのは国民主権だ。主権者国民に選択権がある。主権者国民の意思を現実政治に反映するために政党が存在する。政党は基本政策方針を明示して、この方針に賛同する主権者国民の支持を得る。政党の根幹は基本政策方針なのである。

私たちの目の前には、国民の未来を左右する重大な問題が横たわっている。憲法・戦争、原発、消費税の問題はまず重要だろう。さらに、TPPや基地の問題がある。

民進党内に、これらの基本テーマに対する正反する二つの政治勢力が同居しているのだ。戦争法制賛成・原発推進・消費税増税推進の勢力と戦争法制反対・原発廃止・消費税増税中止の勢力が同居している。これは、主権者国民に対する冒涜である。基本政策において真逆の二つの勢力を保持しながら、主権者国民に支持を呼び掛けるのは、あまりにも不誠実である。

この事実が9月に実施された民進党代表選で明らかになった。私は、この時点で民進党を円満に分離・分割することが二人の代表選候補者の責任ある行動だと訴えた。しかし、この時点では二人の立候補者は動かなかった。

その後、代表に就任した前原誠司氏は希望への合流を提唱した。民進党全体で希望の党に合流することを表明しながら、裏側で、意見の異なる者を排除することに同意していた。そして、希望の党への合流を強行した際に、排除された人々が集団で離党する事態を招いた。このことについて、前原氏は「想定内」と述べた。

前原氏の行動は政治家以前の人間としての信頼の問題である。立場を利用して同志に対して背信行為を示して何の疑問も感じない。そのような人物であることが明らかになった。前原氏の政治生命は完全に終わったと言ってよいだろう。

しかし、この軽挙妄動により民進党が結果として分離・分割の第一歩を記したことの意味は極めて大きい。旧民主党、現民進党内に二つの政党が同居し、民進党が正体不明の「あいまい政党=鵺(ぬえ)」であることが、主権者国民の政治選択を妨害してきた。

安倍政治に賛同する者がいても当然だ。しかし、それが当然であることは、逆に安倍政治に賛同しない者がいても当然であることを意味する。安倍政治が示す基本政策方針に賛同する者がいる一方で、安倍政治の基本政策方針に反対する者がいる。

大事なことは、主権者国民の前に、明確な選択肢を提示することなのだ。民進党が上記の主要政策課題に対する基本方針の相違により分離・分割しつつあることは望ましいことであるし、同時に当然のことである。遅ればせながら、ようやく事態は正常化する方向に動き始めた。

戦争法制賛成・憲法改定賛成、原発推進、消費税増税推進の勢力と戦争法制反対・憲法改定阻止、原発廃止、消費税増税中止の勢力が同居していることがおかしかった。前者の勢力は自公との差異がない。だから、積極的な存在理由がない。

そのことが、現在の政党支持率に表れている。民進党も希望の党も支持率は1%程度しかないのだ。民進党の分離・分割が実現していないのは参院である。参院は2019年夏に通常選挙を迎える。自公補完勢力の民進党、希望の党は次の参院選でほとんど当選者を出すことができないだろう。

したがって、多くの者が民進党から立憲民主党に移籍することになる。このことは明白だ。問題は、その際に、民進党に残存する政党交付金残高を適正に分割することだ。

このお金の拠出者は主権者国民である。国民が政治活動資金を提供している。民進党が分離・分割されるべきことは上記の理由から当然のことである。その場合、政党交付金残高は議員数で按分して分離・分割するべきなのだ。

現在の民進党執行部は自公補完勢力が務めている。彼らは、反自公勢力のメンバーが自発的に民進党を離れることによって政党交付金をすべてかすめ取ることを目指しているのだと思われる。このお金をかすめ取って、自公補完勢力の新党の活動費に充てることを目論んでいる。おそらく、希望と民進党、さらに無所属議員が合流して新党を作るだろう。

あわよくば、野党第一党の地位を狙うのだと思われる。極めて狡猾なやり口である。しかし、主権者はこの勢力に力を与えてはならない。主権者は安倍政治路線と反安倍政治路線の二つの選択肢から選択すればよいのだ。

だから、安倍自公補完勢力をまったく必要としていない。主権者国民が拠出する政党交付金を不当に強奪しようとする勢力が力を持ってよいはずがない。この勢力は消えゆく存在であると言ってよいだろう。

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。