自公補完勢力合流し統一会派「鵺(ぬえ)」結成せよ -植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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政界再編の裏側にいるCIAの意思を明確に把握しておくことが必要だ。昨2017年10月の衆院総選挙を契機に民進党の分離・分割がようやく一歩進んだ。本来は9月の民進党代表選で、民進党内に二つの政党が同居していることが明確になったのだから、この時点で民進党の分離・分割に進むべきだった。

私はかねてよりこのことを主張してきた。情勢が変化したのは、民進党代表に就任した前原誠司氏が民進党の希望の党への合流を強行したことだった。この合流が、「安倍政治を終焉させること」の一点に目的を絞り、安倍政治と対峙するすべての勢力との大同団結を目指すものであったなら意味があっただろう。安倍政治を終焉させることに成功した可能性が高い。

しかし、前原誠司氏と小池百合子氏が目指した者は、これとはまったく異なるものだった。戦争法制を容認し、憲法改定を推進する第二自公勢力を創設するものだったのである。民進党議員及び総選挙立候補予定者に対して、「全員合流」と言いながら、戦争法制反対、憲法改悪阻止のメンバーを排除することを念頭に入れていたと言えるのであり、前原氏の行動は背徳以外の何者でもなかった。

小池百合子氏の側は、当初から、戦争法制、憲法改定のハードルを設定しており、民進党の丸ごとの合流を前提としていなかったと考えられる。この意味では、小池百合子氏の側は当初の方針通りに動いたものであった。

しかし、新党での公認申請書には、政策についての誓約が記載されており、その内容は、この新勢力が安倍政治を終焉させるための大同団結実現を目的とするものではないことを明確に示していた。この経緯があり、遅ればせながら民進党の分離・分割が始動したのである。分離・分割の基軸は「政策」である。

そもそも政党は、政見と政策を一致する者の集合であるから、政見と政策が真逆の者が同居していることに最大の矛盾がある。不幸の原因は矛盾にあると言われる。民進党が旧民主党の時代より、一貫して凋落の道を歩んできたのは、この政党に二つの相反する勢力が同居を続けてきたからなのである。

2009年に政権交代の偉業を成就した当時の民主党は、日本政治の根幹を革新する明確な方針を明示していた。米国が支配する日本、官僚が支配する日本、大資本が支配する日本を根底から刷新する方針を明示した。

辺野古米軍基地建設を中止させる、官僚の天下りを根絶する、企業団体献金を全面禁止する、という明確な方針を明示した新政権であった。この基本方針が日本の既得権勢力を震撼させたことは言うまでもない。日本を支配してきた米国・官僚機構・大資本の三者は、この米官業による日本支配の構造を根底から覆される危険に直面したのである。

その結果として、この米官業トライアングルは、死に物狂いの猛反撃を展開した。目的のためには手段を問わない卑劣で悪質な手法をも含めて、猛反撃を展開したのである。政権交代を主導した小沢一郎氏と鳩山由紀夫氏に対する人物破壊工作はこの文脈上に位置付けられる事象であった。

そして、鳩山政権の破壊に最大の貢献をしたのが、民主党内に潜んでいた既得権勢力のメンバーであった。私は、この勢力の中核を悪徳10人衆と表現してきた。彼らは革新勢力ではなく、「隠れ既得権勢力」に属する者たちだったのである。

2010年6月に鳩山政権が崩壊した。このとき、権力を強奪したのが菅直人氏である。米国は2010年1月の段階で、日本の外交窓口を鳩山-小沢ラインから菅-岡田ラインに切り替えることを決定している。この米国の決定に沿って、政権の主軸が鳩山-小沢ラインから菅-岡田ラインに切り替えられた。

裏の本尊は米国であり、米国の対日工作活動の主軸を担っているのがCIAである。その後の民主党は既得権勢力が支配権を有してきた。

そして、菅政権を継承した野田佳彦首相は、既得権勢力に対峙する勢力が純化して離脱した小沢新党=国民の生活が第一=未来の党の資金源を断つために2012年12月の衆院総選挙に突き進んだのである。そして、この選挙によって、野田佳彦氏は安倍晋三自民党に大政を奉還した。

日本の既得権勢力である米官業のトライアングル。その頂点に立つのが米国の支配者である。彼らの座右の銘は「2009年政変を二度と招かぬこと」である。本当の革新勢力による政権が樹立されれば、既得権勢力による日本支配の構造が破壊されてしまう。このリスクを二度と冒してはならない。

そのために、何よりも重要なことは、野党第一党を「隠れ自公勢力」=「自公補完勢力」にしておくことなのである。「隠れ自公勢力」とは「野党の顔をした与党」=「ゆ党」である。別名を「鵺(ぬえ)」という。日本支配者の米国が目指すのは、自公と第二自公による二大政党体制である。

小池百合子氏と前原誠司氏が目指した新党がまさにこれである。日本政治を自公と第二自公による二大政党体制に移行させてしまえば、既得権勢力による日本支配は安泰になる。これが成功しかけたところで大崩壊してしまった。民進党の分離・分割というパンドラの箱が開いてしまったのである。

民進党が分離・分割し、自公対峙勢力が純化して登場し、この勢力が反自公勢力の結集を実現すると、2009年の悪夢が再来する。「安倍政治を許さない!」主権者の層は厚く、反自公勢力が結集して総選挙を戦えば、次の選挙で政権交代が実現しておかしくない。

そのもっとも危険な第一歩が踏み出されてしまった。これを阻止するために、元の「鵺(ぬえ)」の状態に引き戻そうとする悪あがきが展開されている。しかし、立憲民主党の基本スタンスは明確で、「鵺」の再生は難しいだろう。

希望と民進党が合流しても、この勢力が自公の補完勢力であることは誰の目にもはっきりしてしまったから、主権者の支持を集める可能性は皆無といってよいだろう。せめて、政党交付金残高を公正に立憲民主党に配分するまともさだけは示してもらいたいものだ。

次の選挙に向けては、立憲民主、共産、自由、社民が完全な共闘体制を構築して進むべきだ。立憲民主党の態度が不明確だが、枝野氏が「草の根からの変革」を提唱するなら、主権者がこの方向を主導することになる。自公補完勢力は院内で「鵺」という名の統一会派を創設するのがよいと思う。

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。