セクハラ問題に見る「報道の自己規制」

社会・メディア

上出義樹[フリーランス記者/上智大学メディア・ジャーナリズム研究所研究スタッフ]

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 <財務省が福田前次官のセクハラ行為を認定しメディアも一気に幕引きの様相>
福田淳一前財務次官によるセクハラ問題は、本人否定のまま財務省が4月27日、前次官のテレビ朝日記者へのセクハラ行為を認定。同省の「調査打ち切り」を受けるように、大手メディアは一気に幕引きの様相を強めている。 

<取材源秘匿などジャーナリズムの原則に立った検証の気配なし>
今回のセクハラ事件の核心は、被害者が取材源秘匿の責務を負うメディア企業の社員であるという特異性である。そこで拙稿でも何度か、メディア全体の重大問題として、ジャーナリズムの原則に沿う検証を報道各社に促してきた。

【参考】女性記者セクハラ問題の報道検証の「肝」はコレだ!

しかし、当のテレビ朝日を含め検証の気配など全くなく、逆に各社の紙面から見えてきたのは、決定的な関係悪化は避けたい主要な取材源の財務省や安倍晋三政権への手心や気遣いである

<「親安倍」で知られるテレビ朝日会長に管理職が「忖度」との指摘も>

元朝日新聞記者の河谷史夫氏は、テレビ朝日が女性記者の願いに反して自局でセハラ事件を報じなかった背景に注目。電子評論誌「メディアウオッチ100」(4月23日号)で、同社の早河洋会長が「安倍首相と折あるごとに会食している『親安倍マスコミ人』」であることに言及し、「管理職の誰かが『忖度』したとも考えらえる」と重要な指摘をしている。

<今回のセクハラ問題で浮かび上がった「報道の自己規制」>

政治権力との根深い癒着、検察や大企業などからの直接間接の圧力により、記事やニュースをボツにしたり、手心を加えたりする行為を私は、「報道の自己規制」と呼んでいる。
権力に弱い日本のマスメディアの負の体質の核心だが、今回のセクハラ報道は、この「報道の自己規制」が如実に体現された事例とも言える。

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