「ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ」終わった番組の特番をすぐにやってはいけない


高橋維新[弁護士/コラムニスト]

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2018年11月24日放映の「ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ」を見た。

今年3月をもって終了した「とんねるずのみなさんのおかげでした」の人気コーナー「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」を切り取った特番である。

この番組の事前情報が出回ってから、ネットでは木梨が出ないことが話題になっていた。ただ、とんねるずには、広告塔、あるいは番組の企画を局内で通す時の「看板」以上の意味はないので、出る出ないは筆者にとってはどっちでもいい。主役はあくまでモノマネを披露する演者たちである。

しかし、結論から言うと、今回披露されたモノマネたちに全盛期の「細かすぎて」のパワーはなかった。おもしろいモノマネはいくつかあった(個人的には優勝した「たつろう」の1ネタ目とご婦人シリーズが好きであった)が、誇張なしに出てくるネタ出てくるネタ全部に声を出して笑えた往年の「細かすぎて」のことを考えると、寂寥感の方が勝った。

とはいえこの状態はいまに始まったことではない。「みなさん」がまだ放映していた頃から、「晩年」の「細かすぎて」はすでに全盛期のパワーを失っていた。全盛期の「細かすぎて」は爆笑できるモノマネと笑えるモノマネが半々ぐらい(=笑えないモノマネがない)という高いクオリティを誇っていたが、晩年は笑えるモノマネが3割ぐらいで、爆笑できるモノマネは全体の中の2,3個、残りは笑えないというレベルにまでクオリティが落ちていたのである。

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元々このコーナーは、文字通り「細かすぎて笑えないモノマネ」を落とし穴で物理的に闇に葬るスベリ芸的なコーナーとしてスタートしたものだと思う。ところが回を重ねるごとにそれ自体が独立でおもしろいモノマネがどんどん増えていった。
爆笑できるモノマネを1個だけ持っていても、他に取り柄のない芸人は通常であればテレビに出られないのであるが、そういう芸人を大量に集めて尺を埋め尽くすことで、彼らが1個だけ持っている爆笑ネタに陽の目を見させた(この番組作りの発想は、同じフジテレビの「爆笑レッドカーペット」や「決めてほしい話」にも見られる)。

無論こういう番組を作るには、オーディションという形で膨大な量のネタを見るという労力をかけなければいけない。それは、売れてない芸人たちの端にも棒にもかからないネタ(基本的には、そういうネタしかないから売れていないのである)の中から僅かな砂金を見つけ出すという気の遠くなる作業である。この番組のスタッフは、このドブさらいの労を惜しむことはなかった。だからこそ、おもしろい映像作品ができていたのである。

この手のインダストリアスな労を避けていてはいいモノ作りはできない。

モノマネそれ自体におもしろい物が増えていく中で当初はスベリ芸に対する無言のツッコミ役として設置されていた落とし穴は、単にモノマネの終わりを分かりやすく区切るための装置へと役割を変えていった。

モノマネは、基本的に締まりが悪い笑いのとり方であって、ウケるものであってもどことなくグチャっとしてしまうので、次のクダリへつないでいくことが難しい。しかし、落とし穴でモノマネが終わった演者を見えなくしてしまえば、この締まりの悪さも一緒に闇に葬ってはっきりとした区切りをつけることができるため、次のネタへのバトンが渡しやすくなるのである。

特に「細かすぎて」のように短めのネタをテンポよく見せていく映像展開においては、ネタとネタの間に分かりやすい区切りをつけることは非常に重要である。落とし穴というギミックは、図らずもこの番組のコンセプトとがっちり噛み合ったのである。

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以上のとおり、この番組の主役はあくまで「それ自体がおもしろい短めのモノマネ」である。モノマネは、似ていればおもしろいという物でもない。笑えるシーンを切り取ってみたり、対象の特徴を誇張してみたり、声だけでなく挙動や見た目まで似せてみたりと、何かしらの一工夫が必要である。そしてそこまでやっても実際にウケるかどうかは、現実にお客さんに披露してみるまで分からない。

だから、爆笑できるモノマネのネタができるという現象は、本当に誇張なしに奇跡のような出来事である。この番組の出場者たちが(一部の例外を除いて)そういうモノマネをそれぞれ数えるほどしか持っていないのも無理からぬことである。「砂金」は「砂金」なだけあってそう簡単にどこにでも転がっていない貴重品なのである。

ゆえに、この番組がおもしろくなくなっていったのは、ドブに眠っていた砂金を掘り起こしすぎて枯渇させてしまったからだと思う。筆者は、鉱脈がその力を回復するまで、3年は休山にして欲しいと言ったはずである。
にもかかわらず、今回は最後のOAから1年も経たないうちの放映である(「みなさん」が終了してから8ヶ月、「みなさん」の中で最後にOAされた「細かすぎて」(2017年12月21日放映)から11ヶ月か経っていない)。

完全回復していない鉱脈を掘り起こしても、大したものは出てこない。これじゃあ慌てて売り買いを繰り返して元手をすり減らしていくばかりのヘボ相場師と一緒なので、もっと辛抱をしないといけない。

もう一度言うが、次をやるなら3年(欲を言うと、5年)はインターバルを置いてほしい。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。