<「ドラゴンクエスト10」は失敗ではない>ドラクエ10を「失敗」と言うならソーシャルゲームの大多数も「失敗」だ


八坂 亮[ゲームクリエイター]

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9月に行われた「SCEJA Press Conference 2014」にて、ドラゴンクエスト(以下、ドラクエ)シリーズ最新作『ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城』が発表された。対応機種はPlayStation3 とPlayStation4の2機種。ソニーコンピュータエンタテインメント(以下、SCE)のゲーム機でドラゴンクエストが遊べるのは外伝を含めて実に約10年ぶりの出来事となる。

ドラクエといえば、新作が発表されればニュースとして取り上げられる程、他の追随を許さないビッグ・タイトルだ。今作も外伝にも関わらず数多くの記事が新聞やニュースサイトを賑わしていたが、とある記事に次のように書かれていて一瞬我が目を疑った。

「任天堂ハードで発売された『ドラゴンクエスト10』の失敗も背景にあり、ソニーのゲーム機に復帰した物と考えられる」

この分析「本当にそうだろうか?」とゲーム業界に携わる人間としては違和感を覚えた。

恐らく、過去のドラクエシリーズの売上本数と比較した上でドラクエ10を「失敗」と結論付けた物と思われるが、いささか短絡的ではないだろうか。ゲームの良し悪しを売上だけで語る事には抵抗があるが、収益面でもドラクエ10は成功していると言って差し支えないと筆者は考えている。

確かに、前作ドラクエ9が全世界で500万本を超える売上本数を記録した事と比較すると、2014年4月時点で100万本を突破したと言われるドラクエ10は数字上の見劣りは否めない。ただし、ここで考えなければならない事はドラクエ10がオンラインゲームであり、従来のシリーズとは収益を発生させる方法が全く違う事である。

まず、1つは月額課金制である事だ。ドラクエ10を遊び続けるには月に1000円を払い続ける必要があり、これによって毎月収益が発生している。また、ドラクエ10を常に遊び続けているプレイヤー数は30万人と言われており、これが事実だとすれば単純計算で月に3億円の収益を得ている事になる(勿論、ゲームを維持する為の出費も相当あるので正確な数字はこの通りではないはずだが、ひとまずそこは置いておく)。

加えて、ドラクエ10はゲームを開始する為にパッケージを購入する必要があり、従来通りパッケージ販売による収益も発生している。販売本数では過去作に及んでいない事は事実だが、「パッケージ販売+月額課金制」という構造で毎月大きな収益を発生させている。このように、そもそも過去作とドラクエ10は別のビジネスモデルであり、売上本数の比較で「失敗」と結論づける事はできないはずだ。

ゲームの内容に目を向けても、サービス開始から2年弱休む事なくパワーアップを続けており、プレイヤーの賑わいも衰えていない。過去作と遜色のない収益を生み出すのも時間の問題ではないだろうか。

ちなみに、このような考え方はスマートフォンのソーシャルゲームのビジネスモデルにも通ずるところがある。ドラクエ10のレベルで「失敗」と言われるならば、ソーシャルゲームの大多数も「失敗」であるはずだ。「パッケージゲームの終焉」「ソーシャルゲームの時代」と謳い続けてきたメディアがこうも短絡的に「失敗」と結論づけている事には大きな疑問を感じる。

ゲーム業界の盛り上がりを考えれば、『ドラクエ』も『ソーシャルゲーム』も紙面で取り扱ってくれる事は喜ばしい事であるが、誤った情報を伝えれば、単にゲームの印象を傷つけるだけになってしまう。筆者も含め、ゲームを語る人間も一定の知識を身につけ、レベルアップしていかねばならないと強く感じる。

 

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八坂亮

八坂亮(やさか・りょう) ゲームクリエイター 1986年、大分県生まれ。大手ゲームメイカーにて、家庭用のゲームソフト開発を行う傍ら、『らくがきラボ』名義でスマホ向けゲームも開発にも従事。一人でも多く人に「ゲームが楽しい」と感じてもらえるよう日々精力的に活動中。