<持たざる者こそ最先端に強い>タイの空港の入国審査場には23台のデジタルサイネージ


岩崎未都里[ブロガー]

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以前、「山手線デジタルサイネージ」導入に関する話題を書きましたが、今回はアジアのデジタルサイネージに関して考えてみようと思います。

デジタルサイネージ進展国では「中間」の発展を飛ばし、いきなり最先端技術へとスキップする傾向があることはご存知でしょう。例えば、家の固定電話の定着を飛ばして、いきなり携帯電話の普及が高まったり、家庭用パソコンを飛ばして、一気にスマートフォンが日本以上に普及してしまう・・・。アジアのデジタル進展国では、そのような事例は少なくありません。

アジアのデジタルサイネージ進展国では、デジタルサイネージが日本のような先進国以上に普及をしています。

この現象の最大の理由は、先進国では、既存の完成されたインフラが弊害となっているのに対し、インフラの整備が進んでないアジア地域では、どういうものであれ「ゼロから」作る必要があるため、最先端技術をためらいなく導入できるからであると筆者は考えています。

いわば「持たざる者が強い」という論理です。

例えば、タイでは、日本ではようやく導入された「新型山手線のデジタルサイネージ」くらいのことが、バンコクのBTS(新交通システム)では既にあたりまえになっています。電車だけでなく、バンコクの街の中は、右を見ても左を見ても画面だらけ。駅のホームや電車のなかもデジタル・ディスプレイだらけで避けても目に入ってくるくらいの状態です。

バンコクのBTSは、専用の高架線を無人走行する新交通システムであるため、その近未来的な車両にはデジタルサイネージ画面が当たり前のように付いています。日本のJRが既存車両の更新や中吊り広告の業者に気を使ってか、直ぐに普及できないのを尻目に、デジタルサイネージ進展国ではいきなり全車両がデジタルサイネージです。

街ゆく人々はこれまでのイメージと全く変わらないアジアな光景なのに、そのギャップが少々不思議になります。

しかも、デジタルサイネージとして広告を映し出す「ただの映像装置ではない」という部分もポイントです。駅構内に設置された液晶に映し出されたボタンを押すと、レシート大のクーポンが出てきて、それをそのまま店舗で利用できるといった仕掛けを持つものさえあります。

また、バンコクの窓口、スワンナプーム国際空港では、すべての旅行客が必ず通過しなければならない場所、すなわち「入国審査場」に、23台のデジタルサイネージが設置されています。通常、書類やパスポートのチェックなどで、30分程度の順番待ちはどの国でもあたりまえ。ここにデジタルサイネージがあれば、かなり広告効果の高いプロモーションが可能です。鋭い着眼点です。

他にもショッピングモールや、ビルの壁面など、人目につく空きスペースには次々と画面が増殖しいます。聞くところによれば、香港・上海もバンコクと同じような状況であるそうです。

それに対し、ヨーロッパでは、都市の景観を守る規制が強く、なかなか普及できないのが実情。そのため、プロジェクターマッピングなど、既存の建築を生かした方法が主流です。

日本では都心部のビルや駅構内に、ランダムに広告を表示させるような大型のデジタルサイネージをかなり見にするようになりました。しかし、バンコクのように、利用者へのより積極的なサービスを提供する装置までにはなっていません。あくまでも「動画広告表示装置」が主流です。

もちろん、スーパーマーケットの商品脇にデジタルサイネージが設置され、タッチパネルでレシピが見られる等のサービスをしているお店もありますが、まだまだ特殊な事例です。もちろん、お店によって装置も違えば、使い方も異なっているので、買い物する「中高年の奥様方」には、まだまだ難しい存在です。

今後、東京オリンピック開催の2020年へ向け、来年2015年の山手線デジタルサイネージ化を足がかりに、これからの5年をかけて、より柔軟なサービスへと、その内容を進化させてゆくはずです。既に出来上がってしまっている東京という都市で、どうやって作り込み、組み込んでゆくのか? には色々と課題は多そうですが、今後の展開に期待したいですね。

そう考えると、「持たざる者は強い」と改めて思わされます。

 

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岩崎未都里

岩崎未都里(いわさき・みどり) 11歳より芸能事務所所属。多摩美術大学美術学部映像学科卒。学芸員。英国留学やバックパッカーの経験を通して、32カ国を渡り歩く。その間、パニック障害を完治させた。SJS症候群により九死に一生を得て、現在は闘病しながら あらためて医療心理学を学んでいる。