<民主党の自民圧勝阻止は低次元>小学2年生でも分かる?自民党が圧勝報道される理由

政治経済

藤本貴之[東洋大学 准教授・博士(学術)]
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小学校2年生になる筆者の娘は、某社の「小学生新聞」とっている。子供向けとは馬鹿にするなかれ、各新聞社は「将来の読者の青田買い」のつもりか、安価ながらかなり本格的に読み応えのある新聞になっている。
もちろん、簡単ながらも、時事ネタ、すなわち現在でいえば「衆議院解散・総選挙」などについてもしっかりと書かれている。
そんな小2の娘は、理解は難しいながらも、現在が選挙期間中であり、政治家を選ぶ時期であることは知っている。また、なんとなくではあろうが、政治家がグループ(政党)を形成し、そのグループごとに「優勢・劣勢」があることも分かっている。小学校の「お友達グループ」でも同じようなことはあるだろう。
そして、「投票で一番人気のあったグループが有利になる」ということと、そのグループから人気投票で「総理大臣」が選ばれる、ということは分かっているようだ。こちらも、小学校の「役割り分担」でも同じようなことをしているかもしれない。
さて、政治をそれほど熱心に語るわけではないごく一般的な筆者の家庭でも、人並みにこのシーズには「選挙の話」をしたり、ネットで情報をみたりする。最近であれば、「自民党、圧勝」「自民圧勝」といった言葉をやたらと目にする。
そんな中、我が娘は、スマホやブラウザを眺める親の隙間から顔をのぞかせて、「これ、なんて読むの?」とか聞いてくることが多い。当然、やたら目につく「自民圧勝」をさして、「読み方と意味」を聞いてきた。
そこは素直に、

「自民党というグループが、今度の選挙ですごく人気があって、有利らしい」

と答えた。すると、小2の娘は、次のように反応した。

「相手のグループの人たち、何しちゃんたんだろうね?!」

この言葉を聞いて、ハッとした。今、盛んに「自民圧勝に危機!」を煽る野党の論調が散見され、それを話題にしているメディアも多い。「自民党が圧勝すること」があたかも悪いことのように積極的に映している場合もある。もちろん、どんな政党・団体であろうと、一党独裁的な風潮は健全ではないとは筆者も思う。
しかし、だ。
小2の娘が直感的に感じたことは、一言で言ってしまえば、「野党が不人気すぎるから、自民党が人気なんでしょ?」ということだ。そもそも論として、自民党が圧勝とされる理由は冷静に考えれば、小2の娘が感じたことの通りだ。「何かしちゃった」のだ。
一時の「疑似二大政党制」で民主党が自民党の対立軸に置かれたことで、「民主党以外の対立軸」が見えづらくなったこと。そして、その民主党が、政権与党時代も含めて、印象深すぎる甚大な失策や失態で、圧倒的な「不人気」を獲得してしまったからに過ぎない。
つまり、自民党が強いのではなく、「野党の代表・民主党」の圧倒的なオウンゴール(自殺点)が原因なのだ。もっと言えば、「消去法で自民党に投票」なのではなく、「積極法で民主党を否定」しているようにも思える。
そう考えると、民主党の「自民党圧勝を阻止しよう」という主張はあまりにも低次元で空しい。単に「自民党が嫌われる以上に、民主党が圧倒的に嫌われている」だけなのだから。
もちろん、それを扱うメディアの問題点もある。野党は民主党だけではない。この点がなかなかメディアを介して我々一般的な有権者の元には届きづらい。自民党の対立軸としての役割を全うできていないにも関わらず、やむを得ず対立軸になっている民主党よりも、注目すべき争点は、中小の政党や候補たちの中に多数ある。そちらを論じ、報ずる方がはるかに有意義だし、何よりも魅力的で面白い。
もちろん「やっていますよ!」と反論はあるかもしれないが、やはり、届いて来ていないのは事実だ。
いづれにせよ、なぜ自民党圧勝が報道されるのか? それは単に、民主党が圧倒的に嫌われているからだ。これは小学校2年生でも分かることなのだ。自民圧勝への危惧よりも、嫌われすぎている民主党が「自民党の対立軸」になってしまっている現状の方にこそ危機感を持つべきではないだろうか。
どの政党や候補者を支持するにせよ、この事実だけはどうしても知っておいて欲しいものだ。
 
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