<関西電力が電気料金を再値上げ>大阪の消費者団体は電気料金値下げに本気ではない?


石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]

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大阪の消費者団体は、大阪の消費者を代表しているのか? 大阪の消費者団体は、電気料金の値上げを本気で阻止しようとはしていないでのはないか?

今月1月21日、経済産業省は電気料金審査専門小委員会を開催し、関西電力の料金再値上げ申請に関する審査を開始した。関電は、原子力発電所の停止による火力発電焚き増しに伴う燃料費増加などを理由として、2013年5月に規制部門9.75%、自由化部門17.26%の値上げを実施した。

この値上げは、人件費や修繕費の削減と、高浜原発3・4号機と大飯原発3・4号機の再稼働を前提としていた(資料)。だが、原子力規制委員会による規制基準適合性に係る審査が未だ完了しておらず、依然として原子力発電再開の時期は見通せていない。

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今回の申請は、2015年4月から規制部門10.23%、自由化部門13.93%の値上げ。これは、前回値上げ認可時の前提としていた原発稼動が実現していないことによる火力発電焚き増しに伴う燃料費増加などの分を、現行料金水準で吸収し切れないことに因る。

人件費や修繕費など燃料費以外の主要な費用については、前回値上げ認可の際に厳しく査定されたので、これら費用の圧縮は一部例外を除いて無理筋。人件費や修繕費をこれ以上減らすと、平常時はおろか災害など緊急時への迅速な対処に係る士気が低下しかねない。

更に、財務基盤が更に毀損すると、燃料調達や設備の保守・保全に必要な資金調達も困難になる。このままでは、電力の安全・安定供給に支障を及ぼす恐れがあると危惧しているのは、筆者だけではないだろう。

今月1月20日の経産省・小委員会では、大阪の消費者団体(全大阪消費者団体連絡会)と事業者団体(大阪商工会議所)がそれぞれ資料を提出した。これらをよく見ると、原発再稼働に関する姿勢に大きな違いがあることがわかる。

全大阪消団連は、原発再稼働に否定的な見解を示しているわけではないが、原発再稼働を求めてもいない。これは実に不可解だ。前回の値上げも今回の再値上げ申請も、「原発が稼動していないことによる火力燃料費増加」に因るもので、かつ、こうした燃料費増加分は人件費や修繕費など燃料費以外の費用の圧縮では到底賄い切れるものではないと既にわかっているはずなのに、原発再稼働を求めていないからだ。

また、今回の再値上げ申請について、経営陣の責任は非常に重いとして見解を質そうとしているが、これは甚だおかしなことだ。前回の値上げも、今回の再値上げ申請も、関電の経営責任の問題ではなく、政府が原発再稼働を容認していないからだ。こうした制度的なことも理解せずに関電を攻め立てるのは、理解不足なのか勉強不足なのか、どちらにしても敵を間違っている。

大商は、火力燃料費増加を電力会社の努力だけで賄うのは困難であることに理解を示した上で、値上げ幅の圧縮、省エネ投資への支援、速やかな原発再稼働を求め、更に、原発再稼働後は速やかに料金を引き下げることを求めている。これは、とても現実的な言いぶりだ。

消費者団体と事業者団体では立場が異なるので、それぞれの要望に違いがあることも不思議ではない。しかし、消費者も事業者も、電力の需要家であることに違いはなく、電気料金値上げは回避したいことは共通であるはず。そういう点からしても、大商の要望は的確である一方で、全大阪消団連の要望は「無いモノねだり」だ。

日本には、電気料金の値上げ抑制と将来の値下げ実現のために原発再稼動を求める消費者団体は存在しないのか? 消費者は原発再稼働に反対している! と思い込んでいるのは、当の消費者団体だけなのではないか?

日本に数多存在する消費者団体に必要なことは、原発停止によって電力コストが上昇し、それを抑制又は削減するには、原発再稼働以外に早道はないことを理解することと、それを理解しているということを表明することである。

計算の合わないことを叫ぶべきではない。

 

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石川和男

石川和男(いしかわ・かずお)NPO法人社会保障経済研究所・理事長。1965年、福岡県生まれ。東京大学工学部卒業。1989年、通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー政策、産業保安政策、産業金融政策、中小企業政策、消費者政策、物流・流通政策などに従事。2007年3月、経済産業省を退官。2008〜09年、内閣官房・国家公務員制度改革本部、東京財団上席研究員、政策研究大学院大学客員教授、政府の規制改革会議、行政刷新会議WGなどの委員を歴任。