<「あなそれ」高視聴率化の理由>女は自分以外の不義には道徳的である
高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
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2018年のNHK大河ドラマが西郷隆盛だというので、関連図書が続々出版されている。筆者らの世代(60代)の西郷隆盛の権威と言えば小説家・海音寺潮五郎(明治34〜昭和52)氏だが、氏の膨大な著書のひとつ「史伝・西郷隆盛(文春文庫)」を、読んでいてつい、声をあげて笑ってしまった。
大奥や御三家、大藩など、おんなの園の風紀の乱れがいかに同輩に厳しく糾弾されたかについて書くにあったって、以下のような趣旨を記していたからだ。
「女は自分以外の不義に関してきわめて道徳的である」
今なら、炎上ものの発言であろう。しかし、コンプライアンスなどない時代は、こういうはっきりした物言いがあったから、物語や物事は面白いと言わざるを得ない。
【参考】<歴史ドラマではなく家族ドラマ?>大河ドラマ「真田丸」は「スター・ウォーズ」そっくりだ(https://mediagong.jp/?p=14459)
男とか、女はとか、ユダヤ人はとか、血液型はとかを、全体でまとめてその特質を判断したり表現するのは誤謬である。
大河ドラマであっても「男は合戦シーンが見たい」のだとか、「女は姫様の恋愛がみたい」のだとか、こういう雑ぱくな理論は成り立たないのだが、マーケティングの結果がそうなのだからと製作陣は自分のクリエイティビテイを箱の奥にしまってしまう。
しかし、と思う。
波瑠や東出昌大らが出演するドラマ『あなたのことはそれほど』(TBS)の視聴率は当初振るわなかったが、後半どろどろの不倫ドラマになったら視聴率は急上昇した。5月30日第7話の平均視聴率は最高を更新する12.4%になったのである。
海音寺氏にこのドラマに批評を書いて頂いたら、
「女は自分以外の不義に関してきわめて道徳的である」
と、おっしゃるかも知れない。不義の女も男も今はいろんなところで叩かれているから、
「女も男もは自分以外の不義に関してきわめて道徳的である」
のかも知れないけれど。
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