<プロボノ活動って何?>日本のホワイトカラーの生産性の低さを見直す契機に


齋藤祐子[神奈川県内公立劇場勤務]

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「プロボノ活動」という言葉をご存知だろうか。

プロボノ活動とは、会社員などの社会人が、マーケティングやデザイン、プログラミング、はたまた業務分析や経理など、各分野の専門知識やスキルを生かし、複数名の職能の異なる人たちがチームを組んで、NPOなどの公共セクターをサポートするというボランティア活動のことだ。

こういった活動が登場した当初は、社会貢献などの意識の高い20〜30代が中心に行われていた活動であったが、最近では、徐々に40〜50代以上にもその参加が増えつつあると言われている。

大企業での職務経験をもとに、年齢や職業経験から、業務全体の冷静なる進行管理を担うケースが多いが、彼らがよく口にするのは、

「しがらみがないので、思ったよりもとても楽しい(し、やりがいもある)」

という感想。今までとは異なるセクターでの活動であり、扱う内容も、それまでの人生でかかわりのないジャンルが多い。「大人の社会科見学」的な要素もあり、また「違う業界でも自分のスキルが通じるのか?」という適度な緊張感が人気の理由だろう。

受け入れ側NPOでも、マネジメントやデザインなどをはじめ、専門分野の知識やスキルを持った人材はなかなかいないことは多いため、コンサルタントやエキスパートが無料で業務分析やらデザインをして課題解決にかかわってくれるのはありがたく、内部の派閥を超えて協力してくれるケースが多いのだという。

一方で、サポートする側は、自分の本来の職場では出しがちな「こだわり」や業績がらみの「駆け引き」は抑えて、本当にその組織に必要なことについて率直に意見交換することができる。その場で組んだチームにはしがらみもないので、お互い気を使いあいながらも適度な緊張感と礼節をもってやりとりをしているのだ。

このように、プロボノ活動では、組織にありがちな、パワーバランスや業績アピールなどという「ゆがみ」は起きにくい。相手先もNPOという公共セクターであり、なんらかの社会の課題解決型の組織であることも幸いしているだろう。「貧困家庭の子供を助けたい」などの「ミッション」が最初にある組織も、普通の企業人・社会人からしてみれば新鮮と言えるだろう。

一方で、現実社会を見てみれば、組織が大きくなると、仕事の実力だけではなく派閥や所属間のパワーバランスをいかに調整し泳いでいけるかという能力が出世のためには不可欠になっている。

「大企業で学ぶのは仕事の基礎と、その所属間の調整の仕方だけだ」

とうそぶく人さえいる。組織が古くなったり大きくなればなるほど、組織内にできた派閥や所属間の調整作業が、本来の業務を超えて大きくなってしまうのだ。このあたりは多くの組織人が痛感することではないだろうか。

「あそこに花を持たせて」

「いやいやそれでは、どこそこのメンツが立たない」

などの会話が増え、本当に必要な業務よりもそちらの比重が増え、その業務に邁進する社員が出世するようになったら、そろそろその組織は大企業病になっている、といえるのではないか。

「面白い仕事ができるかどうか」ではなく、「どうしたら出世できるか」に価値を置く社員が増えてくるのも、この手の組織の特徴だろう。そうなった組織を見回してみると、本来業務がじんわりと競争力を失い、ブランドが失墜している、ということもありがちなのではないか。

日本のホワイトカラーの生産性の低さが、こんなところから発生するとしたら、自社の将来性をはかる案外いい指標になるのかもしれない。

 

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齋藤祐子

齋藤祐子(さいとう・ゆうこ) 1984年、筑波大学卒。現在、文化施設に勤務。文化政策や現代美術、落語等の分野に関心が深い。